『星を編む』
2023年12月20日
ヨリミチトソラの毎週水曜18時32分頃からは、
このブログとの連動コーナー「ゆきれぽ」をお届けしています。
本の紹介を中心に、時々アートも取り上げています。
また、今年2月からは明文堂書店とのコラボがスタートしました。
富山県内の明文堂書店全店にヨリミチトソラ「ゆきれぽ」コーナーができ、
毎月第1週は、明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんの
おすすめ本を紹介しています。
記念すべきコラボ1冊目は、今年の本屋大賞受賞作である
凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』(講談社)でした。
この本は去年発売されたのですが、
本屋大賞以外にも様々な賞を受賞するなど、かなり話題になりました。
◎『汝、星のごとく』の私の本紹介は コチラ
『汝、星のごとく』は、瀬戸内の島で出会った高校生男女の物語です。
共に満たされぬ思いを抱えながら生きてきた二人は強く惹かれ合います。
しかし、大人になるにつれて、すれ違うことも増えていき…。
この後どうなるかは、ぜひ本を読んで頂きたいのですが、
物語は、男女それぞれの視点で交互に描かれています。
ですから平等に彼らの本音に触れられます。
とにかく勢いのある作品で、私は駆け抜けるように読み、
読んだ後もしばらく心に居座り続けた作品でした。
そんな『汝、星のごとく』の続編が、先月発売されました。
『星を編む』(講談社)
本音を言うと、続編が出ると知った時、
すでに完結しているのにどういうこと?と思ったのですが、
続編を読んで納得しました。『星を編む』までで、一つの物語だと。
続編も素晴らしかったです!
***
続編の『星を編む』には、3つのお話が収録されています。
まずは、主人公の二人の高校生を支える教師の物語です。
この先生は、前作ではアシスト賞をあげたいくらいの活躍を見せています。
でも、彼がどんな人なのかは具体的には描かれていませんでした。
彼は一人で娘を育てているのですが、
なぜそうなったのか、はっきりとは明かされておらず、
私たち読者は、多分こうなんだろうなと予想するしかありませんでした。
しかし、今回、そんな彼の秘められた過去が明らかになります。
その事実を知ったとき、この続編を読んで良かったと思いました。
次は、二人の編集者たちの物語です。
前作で主人公の男性は、漫画の原作者・作家になるのですが、
2番目のお話は、彼を担当した二人の編集者の仕事ぶりが描かれます。
私はこのお仕事小説が一番好きです。
一冊の本を出すために力を注ぐ編集者たちの思いに胸が熱くなりました。
色々なものと闘っている彼らを見て、私も負けずに頑張ろうと思えました。
そして、最後は、前作の後日談です。
前作の終わりから先の出来事が綴られています。それも何年にもわたって。
登場人物たちがどんな人生を送っていったのかが丁寧に描かれています。
という3つのお話が収録されているのですが、
様々な愛の物語は、どれも大変面白かったです。
正直なことを言うと、続編の『星を編む』は、
前作のオマケという感じかな?と思いながら読み始めたのですが、
全然オマケなんかではありませんでした。
続編を読んで、印象ががらりと変わった登場人物もいましたし。
この作品には、噂の対象になりがちな人ばかり出てきます。
未婚で子どもを育てる男性や、不倫をする人など。
実際、彼らの噂話を聞いたら、
できることならあまり関わりを持たないほうが良さそうだなと思い、
よく知らないくせに、思い込みで悪口を言ってしまう人も少なくないかもしれません。
真実など知ろうともせずに。
私たちはなんて上っ面な世界で生きているんだろう、と思いました。
そんな噂の対象になりがちな彼らは、
何を選び、誰を選び、どこで、誰と、どのように生きていくのか。
この本では、それぞれの人生が丁寧に描かれていきます。
どの人の人生も興味深く、私自身かなり刺激を受けました。
そして、あらためて、すごい作品だなと思えました。
いやあ良かった!
ということで、『汝、星のごとく』を読んだ方は、
『星を編む』もぜひ読んでくださいね。
そして、まだの方は、2冊続けて読んでみてください。
これからこの世界をゼロから知ることができる方が羨ましい!
最近は、感覚のアップデートが大事とよく言われますが、
どうしていいかわからない方は、これら2冊を読んでみてください。
読み終えた時には、世界の見え方が変わっているのを感じられるはずです。
さて、来週のヨリミチトソラ内のゆきれぽでは、
この一年読んだ中で特に良かった本を発表します。
私だけでなく、明文堂書店の野口さんにも発表していただきます。
どうぞお楽しみに!
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