『未知生さん』
2023年10月4日
突然ですが、私・田島悠紀子って、どんな印象でしょう?
・しっかりしている
・おっちょこちょい
・落ち着いている
・落ち着きがない
・こわい
・優しい
これらは今までに私が人から言われた言葉です。
人によって私の印象はまるで異なります。
きっと「私が会った人の数だけいろんな田島が存在する」のだと思います。
これは、今日紹介する本の登場人物の言葉です。
今日の本はこちら。
『未知生(みちお)さん』
片島麦子(かたしま・むぎこ)
双葉社
今日は10月の第1水曜日ですので、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。
先日、野口さんから「いい本があるのよ!」と熱くこの本を勧められました。
タイトルの『未知生(みちお)さん』は、人の名前です。
彼は、息子が事故に遭いそうなのをかばって、
41歳という若さで突然この世を去ってしまいます。
『未知生さん』は、彼の葬儀に参列した
高校時代の同級生や元カノ、会社員時代の同期、上司、そして家族など
生前、彼に関わりのあった人たちの語りで構成された連作短編集です。
それぞれが未知生にどんな印象を抱いていたのか、
どんなことが想い出に残っているのか、振り返りながら、
同時に自分自身についても見つめ直していきます。
例えば、高校時代の同級生は、
お葬式で喪主である奥さんが繰り返し「彼はいい人だった」と言っていたことや、
息子をかばって亡くなったことに対して、
なんか未知生っぽくないんだよなあと思います。
会社員時代の同期は、未知生のことが苦手というか嫌いでした。
というのも、マイペースな彼に調子を狂わされてばかりだったからです。
例えば、猫を飼っているから泊りがけの出張はできないという未知生に対し、
それはおかしいだろうと思っています。
一方、上司の女性は、未知生に対して別の印象を抱きます。
彼女の目を通すと、未知生はちょっと素敵な男性に見えます。
でも、元カノの目を通すとヒドイ男に変わります。
だって、彼女に対して「化粧をしているほうがかわいいね」と言っちゃうのですよ。
こんな感じで、未知生に生前関わりのあった人たちが、
それぞれに未知生との思い出を振り返っていきます。
そして、彼らの話から未知生という人間が浮かび上がってきます。
ちなみに、みんなが共通して抱いていた未知生の印象は、
協調性がなくてマイペースだけど、裏表も悪気もない、人畜無害な、いい人です。
このつかみどころが無いところを嫌だなと感じる人もいれば、
それが彼の良さなのかもしれないと思う人もいます。
いずれにしても彼らは、未知生との思い出を振り返ることで
自分自身と向き合っていくことにもなります。
『未知夫さん』は、フィクションだけど、リアルな感触のあるお話でした。
さて、あなた自身はこの本を読むことで、
未知生にどんな印象を抱き、何を感じるでしょうか。
ぜひ本のページをめくって確かめてみてください。
最後に、明文堂書店 富山新庄経堂店 野口さんのコメントをご紹介します。
「とにかく未知生さん、とてもいいんです!
いつもぼ〜っとしているようで、放つ言葉が、何気に真実を突いていたり、
さらに衝撃の展開もあり、読み終えるころには
未知生さん、サイコーの一言でした」
そうそう、衝撃の展開には私もびっくりしました。
そこも含めて、とても良いお話でした。
今日ご紹介した『未知生さん』は、
富山県内の明文堂書店全店の「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてください。
◎明文堂書店のサイトは コチラ
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