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『正直観光案内』

2023年9月27日

もうすぐ10月です。
ようやく過ごしやすくなりましたので、
そろそろ秋のお出かけ計画を立てようかなと
思っている方もいらっしゃるでしょうか。

国内を旅するなら、どこに行ってみたいですか。
また、旅をする際、あなたは何を参考にしますか。

旅のガイドブックや旅情報が載ったサイト、口コミ、友人知人の話のほか、
最近はSNSで旅の情報をチェックする方も多いかもしれませんね。

そして、なるべく人気のスポットや、口コミ評価の高い場所に行きたい、
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
そうではなく、独自の視点で旅を楽しむ人のスタイルを参考にするのも面白いのでは。

今日ご紹介する本はこちら。

『ニッポン47都道府県 正直観光案内』
宮田珠己(みやた・たまき)
幻冬舎文庫

この本に載っている著者プロフィールによると、
宮田さんは、旅と石ころと変な生き物を愛し、
いかに仕事をサボって楽しく過ごすかを追求している作家兼エッセイストです。

これまで旅やレジャーに関するエッセイを中心に、
ユルくて、ちょっと変わった本を色々と書いていらっしゃいます。

『ニッポン47都道府県 正直観光案内』は、
全国各地を旅してきた宮田さんによる観光案内です。
タイトルの通り、宮田さんが正直にいいと思ったところが紹介されています。

宮田さんによると、観光とは、すごいもの、奇妙なものを見ることだと言います。

実際、宮田さんは、日本各地の奇妙なものをよく見つけています。
ですから、この本はよくある観光ガイドとはまるで異なります。
誰もがその県に行ったらまずはそこに行くよね!
という有名観光スポットも外されています。

例えば、おとなり石川県と言ったら「忍者寺」だそうです。
兼六園でも金沢城でも二十一世紀美術館でもなく。
忍者寺さえ見れば、あとは各々行きたいところに行けばいいそうです。(笑)

また、都道府県をひとことで言い表しているのですが、
奈良は「カサカサしている」
高知は「知らんぜよ」
和歌山にいたっては「遠い」です。

和歌山が「遠い」というのはわかる!
私も日本国内は色々なところに出かけましたが、
和歌山には行ったことがありません。
まさに感覚として「遠い」のです。

そして、富山はと言うと、「スペクタクル」です。
宮田さんは、富山は観光についていえば、
日本屈指の実力を誇るとべた褒めです。(笑)

そんな宮田さんの富山でのオススメスポットは…
これはぜひ本を読んでお確かめください。

ちなみに、私は県内の観光スポットには、だいぶ行っていますが、
ここには行っていませんでした。
行こうと思ったことはあるのですが、タイミングが合わなくて。
でも、いつか行ってみたい。

この本を読んでいると、宮田さんの好みや人柄も見えてきます。
宮田さんは、興味のあることにはとことん熱いのですが、
そうじゃない場合は、どんなに有名な場所であろうが興味を抱きません。
この本は、そんな正直すぎる宮田さんによる観光案内です。

宮田さんの目を通して見る日本は、
変なものだらけの、だいぶ楽しいところに見えました。
行ってみたいところに付箋を貼っていったら付箋だらけになってしまい、
いったい全て回ろうと思ったら何年かかるんだ、
という状態になりました。(笑)

でも、この本を読んだだけでも世界が広がったように思います。

ちなみに、クセ強めの宮田さんセレクトの旅案内はかなりマニアックなのでは?
と思う方もいるかもれませんが、この本のスタンスは、
「マニアでなくても、専門知識がなくても楽しめる観光スポットのなかから、
正直にいいと思う場所だけを厳選し、都道府県別に紹介する」ことです。

ですから気軽な気持ちで読んでみてくださいね!

この本を読んだ後に旅計画を立てたら、
きっといつもとは違った旅のプランが出来上がるはず。

ちなみに、宮田さんは他にもたくさんのユル〜いエッセイを出しています。
また、小説も大変面白かったです。

小説『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』は、
亡き父が書いたデタラメ旅行記に出てくる王国を探すよう、
王様に命じられた男性の物語です。
そもそもデタラメな内容なのに、どうやってその王国を探すのよ?
と思いながら、主人公の男性は旅に出るのですが、
東洋奇譚をもとに描かれたこの旅物語は、
他では決して味わえないかなり楽しい旅でした。

さて、そんな宮田さんの講演会が、
今週末の土曜日、9月30日14時から富山市立図書館で行われます。

宮田珠己さん講演会「本の迷路をずんずん歩く」です。

当日は、宮田さんおすすめの本をテーマ別にご紹介いただきます。
そして、お話の聞き手を私、田島がつとめます。

宮田さんと一緒に、本の迷路をずんずん歩いていきます。(笑)

宮田さんが選ぶ本は、きっとあなたの世界を広げてくれるはずです。
私もとても楽しみです!

この講演会は、無料で高校生以上の方ならどなたでもご参加いただけますが、
先着順ですのでお早めに富山市立図書館本館2階ロビーにお越しください。
開場は13時30分です。

◎詳しくは コチラ

なお、明文堂書店 富山新庄経堂店では、
ゆきれぽコーナーの横に、宮田さんの本がずらっと並んでいますので、
ぜひ気になった本を読んでみてください。

それでは、土曜日、富山市立図書館でお待ちしています!

yukikotajima 11:29 am

『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』

2023年9月20日

今日は、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でおなじみの
ブレイディみかこさんの小説をご紹介します。

『ぼくイエ』は、イギリスに住むブレイディさんの
当時中学生の息子さんについて書かれた本で、
いじめ、喧嘩、差別のある中学に入学した息子さんが、
それぞれの問題について真剣に向き合い
お母さんと一緒に何が正しいのか悩み、考えていくというノンフィクションです。

私ももちろん読んでいます。
そして、この本をきっかけにブレイディさんのファンになり、
これまでも様々な本を読みました。

ブレイディさんの本は、ただ受け身で文字を追っていくだけではなく、
自分の頭で考えながら読んでいくスタイルなので、毎回たくさんの刺激を受けます。
ひとことで言うなら、読んだ人ををアップデートさせてくれる感じです。
今回の本も読んだらきっとアップデートできるはず!

『リスペクト R・E・S・P・E・C・T』
ブレイディみかこ
筑摩書房

今回は、ノンフィクションではなく、
2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件がモデルの小説です。

この事件は、ロンドン・オリンピックの2年後、
町の再開発のためにホームレス・シェルターを追い出されたシングルマザーたちが、
空き家のまま放置されていた公営住宅を占拠して、
自分たちでシェルターを作って生活を始めたというものです。

再開発でお洒落で小ぎれいな町に生まれ変わるのはいいことのように思いますが、
住宅の価格や家賃が高騰することで、もともと住んでいた人たちが
住めなくなってしまうという問題も起きてしまいます。

この「都市の高級化」を「ジェントリフィケーション」と言うのですが、
シングルマザーたちは、この問題に向き合っていくことになります。

主人公は、10代で子どもを産んでホームレスになり、
シェルターに住むようになった二十歳の母親ジェイドです。
理不尽な理由で住宅の退去を迫られた彼女は、
このままでは住む場所が無くなってしまう!と
仲間のシングルマザーたちと一緒に立ち上がります。

「あたしたちが求めているのは少しばかりのリスペクトなのです」と。

理不尽なことに対して、あきらめたり人のせいにしたりするのは簡単です。
でも、それでは状況は変わりません。
ジェイドたちシングルマザーは、誰も頼れないのなら、
自分たち自身でやってやる!と行動をおこします。

もちろん、応援してくれる人ばかりではないし、酷い仕打ちにあうことだってあります。

それでも分かってくれる人もいるのです。
例えば、ゴシック・パンク風の初老の女性は、見た目は怖いけど、
彼女たちをがっちり支える、頼れる存在ですし。

また、公営住宅を占拠したなんていうと過激なイメージがありますが、
彼女たちの運動は人々の心を動かし、
占拠地では様々な助け合いがうまれるほどに平和的だったのです。

彼女たちがどのように運動をおこし、人々の心をどうつかんでいったのかは、
ぜひこの本を読んでお確かめください。

ところで、真面目過ぎる私は、ジェイドたちの運動はすごいと思うのだけど、
実際は不法占拠なわけで、大丈夫なのかな…と思いながら読んでいたのですが、
この物語には、同じように感じている日本人女性も出てきます。
シナコというロンドン在住の新聞記者です。

このシナコの視点が入ることで、どこか遠い場所の話ではないと気付かされ、
物語の世界がぐっと近づきます。

そして、このシナコもジェイドたちと関わりを持つことで、
自分自身の考えが変わっていきます。
この変化はまさに私自身の変化のようでもありました。

あなたはこの本を読むことで、どんなことを感じるでしょうか。
ぜひジェイドたちシングルマザーたちの言葉に耳を傾けてみてください。

今回も読んで良かったです。
やはりブレイディさんの本は好きだわ!

そうそう、音楽好きなブレイディさんの作品には様々な音楽が出てくるのですが、
今回もたくさんの曲が出てきまして、せっかくなら聞きながら読みたいなあと思ったら、
なんとSpotifyに小説に登場する曲のプレイリストがありました。
ぜひ本を読みながら音楽も聞いてみてくださいね♪
より作品世界に没入できますよー。

yukikotajima 11:21 am

『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』

2023年9月13日

今週末は3連休ですね。
連休最終日18日の月曜は、国民の祝日の「敬老の日」です。

いまだに敬老の日と聞くと、9月15日を思い出す方もいるかもしれませんが、
9月の第3月曜日になったのは2003年からですから
変わってから、もう20年も経っています。

2003年の平均寿命は、男性が78.36年、女性が85.33年でした。
最新の2022年は、男性が 81.05年、女性は87.09年と、
20年前に比べると平均寿命は延びています。

人生100年時代とも言われていますが、
あなたは、どんなおじいちゃん、おばあちゃんになりたいですか?

できれば何歳になっても元気に暮らしたいものですが、
そのために、どんなことをしたらいいのでしょうか。

例えば、実際に100歳を超えても元気な方の生き方から学んでみるのはいかが?

今日ご紹介する本は、今年ずっと話題になっている一冊です。

『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』
石井哲代(いしい・てつよ) 中国新聞社
文藝春秋


「哲代おばあちゃん」というのは、
広島県尾道市の山あいの町で畑仕事をしながら一人暮らしをしている
石井哲代(いしい・てつよ) さんのことで、
広島で大人気のおばあちゃんなんですって。

哲代おばあちゃんは、もともとは小学校の先生で、
子どもはおらず、20年前にご主人が亡くなってからは一人暮らしをしているそうです。

本のタイトルには「102歳」とありますが、現在は103歳です。
アニメ映画にもなった漫画『この世界の片隅に』の「すず」さんより
5歳年上なんですって!

この本は、「中国新聞」の連載記事をまとめたもので、
哲代おばあちゃんの日記を中心に、
「健康で長生きするための八つの習慣」や「長生きレシピ」などが載っています。

話し言葉そのままの文章ですので、
本を読むというより、まるでお喋りを聞いているかのようです。
文章からチャーミングな人柄や優しい笑顔が見えてきて、
読んだ後は、私も頑張るか!と元気になれます。

そもそも哲代おばあちゃんが、とても元気なのです。
哲代おばあちゃんは、若い頃からずっと
「さびない鍬(くわ)でありたい」思ってきたそうです。
体も頭も気持ちも、使い続けていればさびないと言います。

一方、できないことは人に助けてもらったり、
自分のテンポを大事にしたりして、無理をしないようしているそうです。

哲代おばあちゃんは一人で暮らしていますが、ひとりぼっちではありません。
親戚や近所の方など、周りの方たちから愛されています。

例えば、近所の子どもたちが学校に行くのを
哲代おばあちゃんは、毎朝、家の外で見送っていたそうなのですが、
ある日、寝坊してしまったのだとか。
すると、子どもたちが心配して玄関のチャイムを鳴らしてきたのですって。
そして、おばあちゃんの姿を確認して、ほっとして学校に行ったそうで、
哲代おばあちゃんは「どっちが見守りしていたのかわからない」
と日記に書いているのですが、心温まるいいエピソードだなと思いました。

哲代おばあちゃんの日記には、
その時に感じた素直な気持ちが感じたままの言葉で綴られています。
特に嬉しいことがあった日は、
読んでいる私まで思わず笑ってしまうほどにハイテンションです。
ちなみに、哲代おばあちゃんは、喜びの表現はあえて大きくしているそうですよ。

気付けば、すっかり私も哲代おばあちゃんのファンの一人になっていました。
ほんと、読んで元気になりました!

哲代おばあちゃん、ありがとうございました。
これからもずっとお元気でいてくださいね。
私もこの先、体も頭も気持ちも錆びないように、ちゃんと使い続けていこうと思います。

敬老の日を前に、あなたもぜひ哲代おばあちゃんの声に耳を傾けてみては。

yukikotajima 11:59 am