『コメンテーター』
2023年7月5日
私は子どもの頃から本が好きでしたが、
大人になってさらに読書熱が高まったのは、
奥田英朗さんの伊良部(いらぶ)シリーズに出合ったことがきっかけでした。
精神科医の伊良部一郎が登場する累計290万部を誇る大ヒットシリーズで、
映画化もされた『イン・ザ・プール』に、
直木賞を受賞した『空中ブランコ』、
そして、『町長選挙』の3冊が出ています。
すでに完結したものと思っていたら、
今年の5月に17年ぶりに伊良部シリーズの最新刊が発売されました。わーい!
タイトルは、『コメンテーター』(文藝春秋)です。
今日は7月の第一水曜日ですので、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本でもあります。
まずは、野口さんのコメントをご紹介しますね。
伊良部先生 おかえりなさーい!と叫んだ国民は、
おそらく私だけではないと思います。
ね!田島さん!
17年という歳月を経ても、相変わらずの面白さでした〜。
どこからか、伊良部先生の「ぐふふ」という笑い声が聞こえてきそうで、
声を上げて笑ってしまう、数少ない小説です。
悩んでいる時間があったら、これ!読んでみてください!
それでは、田島さん、お願いします!
「伊良部 フッカーツ!!」(実況風に)
野口さん、熱いコメントありがとうございます。
確かに最新刊も涙が出るほど笑いました。
ですからカフェや電車などで読む際は注意が必要です。(笑)
さて、伊良部先生をご存じない方もいると思いますのでご紹介しますと、
伊良部先生は、ある総合病院の神経科の精神科医です。
かなり癖強めな中年の医師で、ワガママでとにかくやりたい放題のため、
周りからはまるで5歳児のようだと言われています。
その伊良部のもとをなぜか患者さんが訪れます。
そして、当然のように伊良部に不信感を抱きます。
でも、気付いた時には信じているのです。
というのも、色々好き勝手言っているように見えて、
「たしかにそうかも」と思わせるところがあるのですよ、伊良部先生には。
私は奥田さんの作品が好きで、ほぼ全て読んでいるのですが、
何が好きかというと、人物の描き方が公平なところです。誰も特別扱いをしません。
伊良部シリーズの伊良部自身にもそういうところがあります。
誰に対しても同じように接しています。まあ、癖は強めですが。(笑)
最新刊もこれまでと同じように、
患者さんごとにお話が変わっていく連作短編集となっています。
それぞれの物語の主人公は患者さんです。
表題作の「コメンテーター」は、
コロナ禍にテレビのワイドショーのコメンテーターとして
伊良部が出演することになる、というお話です。
予想通り好き勝手コメントしていきます。(笑)
他には、オンライン授業ばかり受けていたことで、
人とうまくコミュニケーションが取れなくなった大学生のお話など、
最新刊は、まさに今の時代を描いています。
この何年か、人知れず悩みを抱えていたり、心の不調を感じたりした方もいるのでは。
モヤモヤしたり、窮屈だなと思ったり。
あらゆる方面に気をつかって、疲れがたまっている方もいるかもしれません。
でも、伊良部はそんなの関係なく、やりたい放題です。そのなんと痛快なことか!
笑いながら本のページをめくっているだけで、私自身の心も軽くなっていくようでした。
しかもちょっと泣いたし。
最近なんか色々モヤモヤするという方は、
ぜひ伊良部先生に会いに行ってみてください。
きっと元気になれますよ〜!
『コメンテーター』は、これまでのシリーズを読んでいなくても楽しめます。
でも、読んだ後はきっと他の作品も読みたくなると思いますが。
私は、あらためて過去の作品を読み返したのですが、
やはり私は伊良部シリーズが好きだと実感しました。ほんと面白かった!
あと、過去の作品に出てきた人が今回再び出てきたのも嬉しかったな。
今日ご紹介した奥田英朗さんの『コメンテーター』は、
富山県内の明文堂書店全店の「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてください。
◎明文堂書店のサイトは コチラ
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