『まずはこれ食べて』
2023年6月14日
私は料理が得意ではないにもかかわらず、食べ物が出てくる小説が好きです。
そして、私にも作れそうなものは、本を読んだ後に作っています。
今日ご紹介する本も、読んだ直後に目玉焼きを作ってご飯にのせて醤油をたらし、
サラダのドレッシングも本のレシピ通りに作って食べました。
いずれもとても簡単に作れましたし、もちろん美味しかったです。
今日の本はこちら。
『まずはこれ食べて』
原田ひ香
双葉文庫
そもそも、この本は読む前からお腹が空きました。
だって、表紙が半熟の目玉焼きがご飯にのったイラストで、
その横に「まずはこれ食べて」と手書きで書かれているんですもの。
本を目にした瞬間、「うん、食べる」と本に向かって返事をしたくなりました。(笑)
原田ひ香さんは、ドラマ化もされた『三千円の使いかた』でおなじみの作家さんです。
私も原田さんの作品は好きでよく読んでいます。
食にまつわる本ですと、『口福のレシピ』がお気に入りです。
◎『口福のレシピ』の紹介は コチラ
『まずはこれ食べて』も食にまつわる本で、
2019年に発売され、今年4月に文庫化されました。
舞台はとあるベンチャー企業です。
社員は皆忙しく働き、生活も不規則になっています。
そのため、食事はおろそかになり、社内も散らかったままです。
何より会社の空気が殺伐としていて、決していい環境とは言えません。
そこで、社長は家政婦を雇い、掃除と食事を作ってもらうことにします。
やってきたのは「みのり」という50代の女性です。
愛想は良くないものの、仕事は完璧で、
彼女の作るご飯はどれも美味しく、食べると心がほっとするのでした。
物語は連作短編集になっていまして、
章ごとに様々な社員が登場し、彼らが抱えているものが明らかになっていきます。
皆、みのりから「まずはこれ食べて」と言われ、
みのりの作った料理を食べながら、自分の本当の気持ちに気付きます。
その、心がほどける感じがいいんですよ。
読んでいる私の心までがじんわりとしました。
人ってなかなか自分の気持ちに正直になれなかったりしますからね。
誰かのせいにしたり、本音から逃げてしまったりして。
誰だって完璧じゃないし、嫌なところもあるものですが、
登場人物たちのダメな部分もとてもリアルなんです。
だから身近に感じられましたし、彼らの心が軽くなるのがより心にしみました。
物語はこんな感じで、社員たちを順番に救って終わるのかなと思いきや、
後半、お〜っと、そうきたか!とびっくりする展開が待っていました。
詳しくは、本を読んでお確かめ頂きたいのですが、
えーっと、途中で作者が変わりましたか?というくらいの変化でした。
そんな驚きも味わいつつ、本のページをめくってみてください。
まあ、いずれにしても、お腹が空く小説であることに変わりはありません。
疲れていたり、イライラしたりしているときって、
自分の扱いもぞんざいになってしまいがちじゃないですか?
食事もテキトーになって、肌も荒れて、さらに不快感が増して・・・
なんてことは私も時々あります。
でも、疲れているときこそ、ちゃんと心と体が喜ぶものを食べようと、
この本を読んで思いました。
最近、仕事でストレスを抱えているという方は、まずはこれ読んで。