『川のほとりに立つ者は』
2023年3月15日
およそ一ヶ月後の4月12日(水)に本屋大賞の大賞作品が発表されます。
どの作品が大賞を受賞するのか私も大変楽しみにしています。
◎本屋大賞の公式サイトは コチラ
ラジオではこれまでもいくつかノミネート作品を紹介してきましたが、
今日ご紹介する本もノミネート作品です。
『川のほとりに立つ者は/寺地(てらち)はるな【双葉社】』
寺地さんの作品は『カレーの時間』を去年ラジオでご紹介しました。
◎田島の本の紹介は コチラ
『カレーの時間』も大変いい本です。小説として面白いのはもちろん、
様々な世代の考えに触れることができた一冊でもありました。
『川のほとりに立つ者は』にも様々な人が出てきます。
関わる人が多いということは、合う人もいれば合わない人もいます。
時には配慮や想像力が足りなかったせいで
相手を傷つけたり怒らせたりしてしまうこともあります。
そんなつもりじゃ無かったの…ということは、きっと誰にでもあると思います。
この本の主人公の女性も、そんな失敗を繰り返してしまいます。それも悪気無く。
その度、私も彼女と同じことをしてしてしまいそうだとドキリとしました。
『川のほとりに立つ者は』は、ある一組の恋人の物語です。
女性サイド、男性サイドの物語が交互に描かれています。
まずは、女性サイドの清瀬(きよせ)の物語から始まります。
彼女はカフェで店長をしている29歳です。
恋人の松木(まつき)とは彼のある隠し事が原因で
すれ違ったまましばらく会っていません。
清瀬は職場でもストレスを抱えていて、
「今日もひどい一日だった」とよく思っています。
そんなある日、病院から松木が怪我をして意識が戻らないと連絡がきます。
いったい松木は何を隠していたのか。
また、松木はなぜ意識不明になるほどの大怪我をしたのか。
読者は清瀬と松木それぞれの物語を読みながら
お互いの本音や事実を知っていくことになります。
その中で清瀬は松木のことを何もわかっていなかったことに、
また、松木以外の人に対しても「何か理由があるのかも」
という想像力が足りなかったことに気付きます。
でも、清瀬だけでなく誰もが、自分のものさしで判断しがちじゃないかなと思います。
あなたにも悪気無く人を傷つけたり怒らせたりしてしまったことはあるのでは。
ほんの少し想像するだけで傷つけずに済んだかもしれないし、
ちゃんと話を聞いていれば大きな問題になっていなかったかもしれないのに。
「私だったらこの場合どうするだろう?」と考えながら読んだ一冊でした。
また、反省の連続でもありました。私もきっと悪気無く無神経な発言をしているなと。
そして、これからも何度も間違えていくのだと思います。
その度にこの本のことを思い出すんだろうな。
私は普通の感覚を持っている。私は正しい。おかしいのはまわり。
と思いがちな人にこそ読んで頂きたい一冊です。
あなたのその「普通」が揺らぐはず。