ブログトップページはコチラ

『東大に名探偵はいない』

2023年2月22日

東大と聞くとどんなイメージですか?

「頭がいい」「勉強ができる」などでしょうか。
最近は、クイズ番組で活躍している印象も強いかもしれませんね。

実は、作家さんにも東大出身者が多いのです。

今日ご紹介する本は、東大の卒業生と現役東大生による
「東大ミステリ」アンソロジーです。

『東大に名探偵はいない』

株式会社KADOKAWAから1月27日に発売されました。

今注目の東大卒のミステリ作家5人と現役東大生1人による
「東大」をテーマに書いたミステリが6篇収録されています。

顔触れがとても豪華〜。

例えば、『元彼の遺言状』『競争の番人』が2期連続で月9ドラマ化された
新川帆立(しんかわ・ほたて)さん、
『#真相をお話しします』が2023年本屋大賞にノミネートされている
結城真一郎(ゆうき・しんいちろう)さんなどです。

他には、市川憂人(いちかわ・ゆうと)さん、
伊与原新(いよはら・しん)さん、
辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)さん、
現役大学生の 浅野皓生(あさの・こうせい)さんもいらっしゃいます。

なお、お話は東大に入学した年の順に収録されています。

東大出身者が書く東大のミステリっていったいどんなお話?
と興味津々で読みましたが、それぞれに楽しめました。

いくつかピックアップすると、
新川帆立さんの作品は「東大生のウンコを見たいか?」です。
東大ウンコミステリです。(お食事中の方、ごめんなさい!)
タイトルだけ見ると、ふざけているの?と思ってしまいそうですが、
内容はいたって真面目です。しかも面白いです。

結城真一郎さんの作品は、「いちおう東大です」
この作品には、東大出身者の本音が詰まってました。

タイトルは、合コンで女子たちから「みんなはどういう関係?」
と聞かれた際の答えなのですが、
この合コンのやり取りが、まさにありがちな流れで、
読んでいてニヤニヤしちゃいました。

ちなみに、東大生が言われて嬉しい言葉は、
「全然東大っぽくないよね」だそうです。(笑)

他にも東大生の本音が感じられたのは、辻堂ゆめさんの「片面の恋」です。
私はこのお話が一番好きです。

学園祭の模擬店の準備中に、クラスの女子に恋をしていた
とある男子の気持ちが急激に冷めてしまい、
それを客観的に見ていた女子がその理由を探るという物語です。

その主人公の女子は、東大に入る前は注目される側だったのに、
東大に入ったら自分よりすごい人がたくさんいて、自分が凡人であることに気付き、
実際、そんな立ち位置で学生生活を送っています。

私も過去に同じような挫折を味わったことがあるので、
彼女の気持ちがよくわかって、自分と重ねながら読んでしまいました。
まあ、私は東大卒ではありませんが。

「東大」と言うだけで、なんだか難しそうと思ってしまいそうですが、
『東大に名探偵はいない』は、この辻堂さんのお話をはじめ、
東大生の人間味が感じられた一冊でした。
みんな、それぞれに悩みを抱える人間なんだよなあと。
とは言え、個性的な方ももちろん多いようですが。(笑)

東大卒の方は、東大あるあるに共感しまくりでしょうし、
そうじゃない方も、東大生ってこんな感じなんだあ、
と東大生の心の中をのぞいている気分で楽しめると思います。
それから、ミステリアンソロジーですので、ミステリ好きの方もぜひ!

私はこの本を読んで、一度でいいから東大のキャンパスに行ってみたくなりました。
東大卒業生に見えたりしないかしら?って見えないか。(笑)

yukikotajima 12:16 pm

『いちからはじめる』

2023年2月15日

今日は2月15日。新年度まで約一ヶ月半ですね。

春から新しい環境での生活が始まる方がいる一方で、
特に変化はないという方もいることでしょう。

でも何も変わらない方も、心の中では
「春から何か変えたい。新しいことを始めたい」
と思っていたりしませんか?

そんな方は、まずはこの本を読むことから始めてみてはいかがでしょう。

『いちからはじめる/松浦弥太郎(小学館文庫)』

著者は、人気エッセイストで、元『暮しの手帖』編集長の松浦弥太郎さんです。

松浦さんによると、なりたい自分になる方法は「いちからはじめる」ことだそうで、
この本には、自分を変えるための51のヒントが載っています。

いくつか印象に残ったものをご紹介しますね。


✴︎自分のかかわることについて、つねに疑問をもとう

松浦さんは、なんのためにそれをするのか疑問をもち、
考えることが大事だとおっしゃいます。

これは、私もまさに同じことをしています。
それでも、考えが足りないこともあるのですが…。


✴︎どんな人とも、「はじめまして」の気持ちでいよう

かつて仲良くしていた人であっても
住む世界や価値観が変わることで、
以前と全く同じ関係ではいられないものです。
そこで、「はじめまして」の気持ちが大事になるそうです。

これなら、久しぶりに再会した友人に対して
がっかりすることも無くなりそうですね。(お互いに)


✴︎失敗に価値を見いだそう

松浦さんは、「失敗しないのは無駄」だとおっしゃいます。
失敗したことで見つかる答えもあると。
一方、人間関係の失敗に対しては謝ることが大事で、
松浦さんは一日に何回も謝っているそうです。

たしかにちゃんと謝れる人は信用できますよね。


他にも「ゼロ」からではなく「いち」からはじめる理由や、
「今すぐ」はじめる理由なども載っています。

何かをはじめたいと思っている方は、
まずはこの本を手に取ることから、はじめてみてはいかがでしょう。

また、はじめたいことが特に無い方も、
この本を読むことで仕事や人付き合いに関しての意識が変わると思います。

51のヒントの中から、あなたの心に響くものがきっと見つかるはず。

私ははじまりの季節を前に、この本に出合えて良かったです。
さっそく基本に戻って、いちからはじめようと思います。
いや、思うだけじゃなく、いちからはじめます!

そうそう、この本は文庫ですので「500円+税」とお求めやすいのも魅力的です。

yukikotajima 12:45 pm

『月の立つ林で』

2023年2月8日

ラジオを聞いて心が動かされることってありますよね。
私もリスナーとしてラジオを聞きますが、
その時の自分の心境に合った言葉や音楽に出合うことは、よくあります。

何度も聞いている曲なのに歌詞がより耳に残る日もありますし、
パーソナリティのひとことにハッとさせられることもあります。

今日ご紹介する小説は、まさにラジオを聞いている感覚で読めます。
そして、欲しかった言葉にきっと出合えると思います。

『月の立つ林で/青山美智子【ポプラ社】』

この作品は、4月12日に発表される本屋大賞にノミネートされています。
青山さんは3年連続のノミネートで、去年まで2年連続で本屋大賞第2位でした。

2位の作品はいずれも以前ラジオで紹介しています。
(※本のタイトルをクリックしていただくと、私の本紹介が読めます。)

『お探し物は図書室まで』

『赤と青とエスキース』

果たして今年は大賞受賞となるのか気になるところですが、
私の個人的な予想では大賞決定です!(笑)
だって、とてもいい作品だったのですもの。
読みながら何度もハッとさせられ、そしていい涙を流しました。

苛立ちやモヤモヤ、満たされぬ思いといった自分の中の負の感情に対して、
優しく寄り添い、そして心を楽にしてくれるような一冊でした。

また、間違っていることに対しても
きつく叱るのではなく、自分で気付くように促していくのが良いのです。

そんなナイスアシストをしているのは、ポッドキャストです。

『月の立つ林で』は、五章からなる連作短編集です。
それぞれの物語の主人公に共通しているのは、
同じポッドキャストを聞くリスナーであるということ。

全員が、タケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』を聞いています。

タケトリ・オキナは、毎日10分、月に関する豆知識や想いを語っており、
リスナーの皆さんは、彼の話を聞いて癒されたり、気付きを得たりしています。

ポッドキャスト『ツキない話』を聞くリスナーは、
元看護師、売れない芸人、二輪自動車整備士、女子高生、アクセサリー作家と様々です。

例えば、元看護師の女性は、長年勤めた病院を辞めて実家で何もせずに過ごしています。
心も体も疲れ果てていた彼女でしたが、あることをきっかけに心が少し楽になります。

また、二輪自動車整備士の男性は、大事な娘から結婚と妊娠の報告を受けます。
男性は、娘の結婚も妊娠も、娘の夫が頼りなさそうなことも、
妻が事前に全て知っていたことも面白くないと思っています。
そんな不満ばかりの男性でしたが、あることをきっかけに心に変化が生じます。

どの登場人物もそれぞれに思い通りの人生を送れているわけではありません。
でも、彼らはポッドキャストの配信や、様々な人との関わりの中で、
心が楽になったり、大切なことに気付いたりしていきます。
そして時には見知らぬ人に救われることも。

この物語は連作短編集でゆるやかに繋がりながら物語が進んでいくのですが、
この繋がり方が良いのですよ、とっても。

誰かに愚痴を言いたくなったり、
落ち込んで慰めてもらいたくなったりしたときは、
この本を開こうと思ったくらい、私にとって大切な一冊となりました。

ラジオをお聞きのリスナーの皆さんも
ポッドキャストを聞くリスナーの気分で楽しめると思います。

yukikotajima 12:16 pm

『汝、星のごとく』

2023年2月1日

毎週水曜18時30分ごろから放送している
「ゆきれぽ(『ヨリミチトソラ』内コーナー)」では、
このブログとの連動で、私がおすすめする本やアートの話題をお届けしています。

今月から毎月第一週の「ゆきれぽ」は、明文堂書店とのコラボで、
書店員さんのおすすめ本をご紹介していくことになりました。

さらに、富山県内の明文堂書店全店ゆきれぽコーナーが設置されます。

さっそく今日の午前中、明文堂書店 富山新庄経堂店に行って、
ゆきれぽコーナーを見つけてきました。

リスナーの皆さんもぜひお近くの明文堂書店で見つけてみてくださいね♪

◎明文堂書店のサイトは コチラ

さて、コラボ一回目の今日は、小説を心から愛する
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのおすすめ本です。

『汝、星のごとく/凪良ゆう【講談社】』

先日発表された直木賞の候補になった他、
今年の本屋大賞にもノミネートされた話題作です。

凪良ゆうさんと言いますと、
2020年に本屋大賞を受賞した『流浪の月』が話題となりました。
こちらは実写映画化もされ、去年5月に公開されました。

この映画公開のあとの去年夏に発売されたのが『汝、星のごとく』です。

発売されるやいなや注目を浴びていました。映画も好評でしたしね。
私も読みたいと思いながらもタイミングを逃したままになっていたのですが、
野口さんから大プッシュされたのを機にようやく読めました。

物語の舞台は、瀬戸内の島です。
コンビニも無く、島での娯楽は住人たちの噂話というような小さな島です。
主人公は、2人の高校生です。
一人は島で生まれ育った女子高校生の暁海(あきみ)です。
もう一人は彼女の通う高校に転校してきた櫂(かい)という男子です。
櫂は恋人を追って島にやってきた母親と共に引っ越してきたのでした。

それぞれ親に振り回され、満たされぬ思いを抱えていたこともあり、
二人の距離は縮まり、惹かれ合うようになります。
しかし、成長するにつれ、すれ違いも増えていき…
このあとの二人のことはぜひ本を読んでお確かめください。

物語は、暁海と櫂、それぞれの視点で交互に描かれていきます。
ですから読んでいる私はお互いの本心がわかります。
でも、当事者の二人はわからないのです。
それがもどかしくて、二人に相手の本心を教えてあげたい!と何度思ったことか。
すっかりお節介おばさんと化していました。(笑)

また、この物語は二人の恋愛だけでなく、
そこを軸に彼らや周りの人たちの人生も丁寧に描かれていきます。
自分の人生をどう生きていけばいいのか。何を選べばいいのか。
皆、それぞれに悩み、考え、選んでいきます。

暁海と櫂の二人も決して器用ではありません。

本の中に「燃費の悪い生き方」という表現が出てくるのですが、
登場人物たちは、それぞれに燃費の悪い生き方をしています。

彼らが何を選び、どう生きていくのか。
本のページをめくりながら共に考えてみてください。
気付いたときには、自分自身の人生についても考えていると思います。

最後に、この本を大プッシュされている明文堂書店 野口さんから、
熱いコメントを頂きましたので、ご紹介します。

人の数だけ、生き方があり、選択肢がある。
何を選んでも、誰を選んでも、私の選択を大事にしたい。
イコール私の人生を大事にしたい。
恋愛小説という枠を超えた壮大な物語は、私にとって、
一番星のような作品です。
何度も口にしていますが、もう完全に惚れています。



本を愛する書店員さんが猛プッシュする作品です。まだお読みで無い方はぜひ。

それこそ、まずはたくさんある本の中から
『汝、星のごとく』を「選ぶ」ことから始めてみてはいかがでしょう。
読む前と後では、あなたの人生も変わるかも!?

ちなみに、明文堂書店 富山新庄経堂店には、凪良さんのサイン本があるそうですよ。
ただし、数に限りがありますので、お求めはお早めに。

yukikotajima 1:30 pm