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田島が選ぶ2022年の本は…

2022年12月21日

今年は9月に15年半続いたgraceが終わり、
10月から新番組ヨリミチトソラが始まりました。

graceでは、毎年この時期に
私、田島が選ぶ本ランキングを発表してきましたが、
ヨリミチトソラでも発表します。

ですが、今年は順位を決めるのが難しかったのでランキング形式はやめて、
特に印象に残った3冊と、富山絡みの3冊のあわせて6冊をご紹介します。

ラジオでの紹介順に挙げますね。
※本のタイトルをクリックすると私のブログが読めます。


◎蝉谷めぐ実『おんなの女房』(KADOKAWA)

舞台は江戸時代後期の江戸。
主人公は役者の女房。
タイトルの「おんな」とは歌舞伎の「女形(おんながた)」のことです。
とにかく文章のリズムが心地よく、
あっという間に作品の世界に引き込まれ
本を読んでいるのを忘れてしまうほどに没頭した作品でした。
江戸時代の恋物語、最高!


◎町田そのこ『宙ごはん』(小学館)

タイトルの「宙(そら)」は主人公の女性の名前です。
もがきながらも前に進もうとする人たちの物語で、
読みながらずっと泣いていました。
登場人物たちのセリフが心に響いて、響いて。
温かないい本でした。
いつかドラマ化されるね、きっと。


◎窪美澄『夜に星を放つ』(文藝春秋)

この夏、直木賞を受賞された作品ですので、
お読みになった方も多いかもしれません。
かけがえのない人間関係を失った人たちの物語なのですが、
傷ついて終わり、ではないところがいいのです。
読んだ後は、私の心の中に輝く星が放たれたかのように、明るい気持ちになれました。


そういえば、この3冊はいずれも読みながら泣きました。
どの作品も悲しみや辛さを乗りこえて前に進んでいくという点が共通しているかも。
どれも本当に良い作品です。まだお読みでない方はぜひ。

***

かわっては、富山関連の小説を3冊ご紹介します。
今年は、富山に関連した本がたくさん出版された一年でもありました。


◎絲山秋子『まっとうな人生』(河出書房新社)

舞台は富山ですが、主人公は県外出身の女性です。
富山弁で言うところの「たびのひと」です。
富山のいいところも不思議なところも嫌なところも、
「たびのひと」の目線で綴られていきます。
その視点がいいのです。群馬出身の私は共感しまくりでした。

富山が大好きでこれまで何度も富山を訪れている
絲山さんの富山愛を感じる一冊です。


◎山内マリコ『一心同体だった』(光文社)

富山出身の作家、山内マリコさんの連作短編集です。
10歳から40歳までの様々な女性が出てくるのですが、
主人公の友人が次のお話の主人公といった具合に
女性たちの友情がバトンリレーのように繋がっていきます。
どの女性のお話も決して他人事とは思えず、
まるで過去の自分の日記を読んでいるような気分になりました。


◎椰月美智子 『きときと夫婦旅』(双葉社)

こちらは、急きょ富山を旅することになってしまった夫婦の物語です。
富山に住む友人の家に家出をした息子を連れ戻しに向かうものの、
すぐには帰りたくないと言われ、仕方なく富山で息子を待つことに。
しかし、この夫婦は倦怠期真っ只中!果たして、二人の旅の行方は?
富山の物語としても夫婦の物語としても楽しめた一冊でした。

***

ということで、6冊の本を選んでみましたが、他にも面白い本はまだまだあります。
実は、泣く泣く外した作品もまだまだあるのです。
このブログ「ゆきれぽ」には、これまでラジオで取り上げてきた本を
ご紹介していますので、良かったら本選びの参考にしてみてください。
そして、来年もたくさんの本を紹介していきますので、ぜひお付き合いください。

yukikotajima 4:00 pm

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』

2022年12月14日

今年も残り少なくなりました。
もう大掃除は始めていますか?

私はまず本の整理から始めてみたのですが、
なんと超有名本が未読のままであることに気付きました。
それはこちらの本です。

ブレイディみかこ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
(新潮社刊)

2019年に発売され、80万人が読んだ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の続編で、
去年の9月に発売されました。通称『ぼくイエ』ですね。
『ぼくイエ』は私ももちろん読みましたし、ラジオでもご紹介しました。

◎私の本の紹介は コチラ

ちなみに、ちょっと言い訳をすると(笑)、
『ぼくイエ2』が出た頃、私はラジオでブレイディさんの別の作品
『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ(文藝春秋)』
を紹介したばかりだったので、『ぼくイエ2』はもう少ししてから紹介しよう、
と思ったまますっかり忘れてしまったのでした。

◎私の本の紹介は コチラ

せっかくなので、前作の『ぼくイエ』を読み直してから
『ぼくイエ2』を読みました。

『ぼくイエ』は、イギリスに住むブレイディさんの
中学生の息子さんについて書かれたノンフィクションで、
「一生モノの課題図書」と言われています。

「元・底辺中学校」に入学した息子さんが
様々な問題に向き合いながら成長していく様子が綴られているのですが、
続編の『ぼくイエ2』でも、そういった問題に対して、
両親とともに悩み、考えながら成長していく様が描かれています。

続編では息子さんは13歳になっているのですが、
まだまだ幼い部分を残しつつも、
ふと放ったひとことが大人だったりしてドキリとさせられます。
前作を読んだときにも思ったのですが、この息子君は人に対して公平なのです。
言葉選びもセンスがありますし。

また、今回は息子さん以上に
お母さんであるブレイディさんの気持ちが印象に残りました。
「これで本当に良かったのか?」
「そんなつもりじゃなかったのに…」
と問題が生じる度に悩むブレイディさんに自分自身を重ね、
私だったらどうするかなと考えていました。

今やわからないことがあると、すぐにスマホで答えを探しがちですが、
あなたは「自分で考える」ことを放棄してませんか。

先日、ある会(↑氷見青年会議所のイベント)の司会の仕事をした際に
『Seasoning』でもおなじみの若新雄純さん
「感覚を鍛えることが大事」だとおっしゃっていまして、
まさに、これからの時代に大事なことだと思いました。

あなたも本を読みながらブレイディさんや息子さんと正解を一緒に考えてみては。

また、私のようにすっかり読むのを忘れたままになっている本はありませんか?
しばらく雪の日々が続きそうですし、
お家でゆっくり読書をして楽しむのもいいのでは。

さて、来週21日(水)の『ヨリミチトソラ』内の「ゆきれぽ」では、
私、田島が選ぶ「本ランキング2022」を発表します!お楽しみに〜。

yukikotajima 1:56 pm

『噓つきなふたり』

2022年12月7日

この秋、京都に紅葉を見に行った方もいるでしょうか。
秋の京都は本当に美しいですよね。
私も大好きです。

ところで、あなたが京都に初めて行ったのはいつですか?

私は中学生の時です。修学旅行で行きましたが、
修学旅行で京都に行ったことがある方は多いかもしれませんね。

今日ご紹介する小説は、小学校時代の修学旅行を再現すべく
京都を旅する19歳の女性二人の物語です。
(と言ってもかなりの訳あり旅ですが)

『噓つきなふたり/武田綾乃(KADOKAWA)』

主人公は、親元を離れ東京の寮で生活している19歳の光(ひかり)です。
ある日、小学校の同級生だった琴葉(ことは)と偶然再会します。

二人は小学生五年生・六年生の時に同じクラスでした。
先生にも親にも従順な子供だった光に対し、
琴葉はひねくれた性格の問題児という対照的な二人でしたが、
共に飼育委員になったことで仲が良くなります。

しかし、楽しみにしていた修学旅行の直前に琴葉の転校が決まり、
そのまま二人は離れ離れになってしまうのです。

それから七年が経ち、偶然二人は再会します。
そして、ちょうど二人でいる時に
小学校時代の担任が川に転落したというニュースが飛び込んできます。
動揺する光に琴葉は「私が先生を殺したの」と告白。
その上「京都に一緒に逃げて。行けなかった修学旅行のリベンジも兼ねて」
とお願いされます。

人に対して無害でありたい、善人でありたい、
と思っていた光でしたが、なんと一緒に京都に行くことにします。

そして、二人は当時の修学旅行のしおりに沿って、修学旅行を再現していきます。

ちなみに、光は、先生を殺したのは琴葉ではないと確信していました。
だから光は琴葉と旅に出ることにしたのですが、果たして事件の真相とは。
そして久しぶりに再会した二人の旅はどうなるのか。
この続きは、ぜひ本を読んで確かめてみてください。

✴︎✴︎✴︎

とても面白かったです!
久しぶりに再会した二人の距離感が絶妙でした。

二人は仲が良かったとは言え、七年ぶりの再会です。
最初は気をつかっているものの、
旅の間ずっと一緒にいるうちに衝突もしてしまうわけですよ。
お互いむしゃくしゃする感じがとてもリアルで、
ああ、この感覚私も知ってる!と何度も自分と重ねてしまいました。

19歳ってほんと色々悩む年頃なんですよね。
良くも悪くも人からの影響を受けやすい頃でもありますしね。
満たされない思いを抱えていて、ずっと不機嫌で。

でも、いきなり京都に行っちゃうような勢いも時間もある、
というのも若さゆえなのですよね。

久しぶりに再会したタイプの異なる二人の旅はどこに向かうのでしょうか。
そして、本のタイトルにもなっている『噓つきなふたり』とは?

ぜひ二人と一緒に京都を旅してみてください。

本を読んだ後は、本当に京都に行ったあとのような気分になれます。
しかも気分は19歳です。(笑)
10代の自分にも再会できた一冊でもありました。

今10代の方はもちろん、かつての若者たちもぜひ。

yukikotajima 2:01 pm