『今夜、ぬか漬けスナックで』
2022年11月9日
私は料理は得意ではないのですが、ぬか漬けだけは続いています。
以前、母のぬか床をわけてもらい、しばらく漬けていたものの
仕事が忙しくなったときに放置してしまい、ダメにしてしまったのですが、
その後、手間いらずの「発酵ぬか床」を見つけ、リベンジ!
再びぬか漬け生活を始めました。
それが2019年の夏だったので、気付けば3年以上続いています。
ぬか漬けを始めてから、旬の野菜を意識するようになりましたし、
生活がほんの少しだけ丁寧になったように思います。
今では私の生活と言うか人生に必要なものになっています。
さて、今日はそんな「ぬか漬け」が出てくる小説をご紹介します。
『今夜、ぬか漬けスナックで/古矢永塔子(小学館)』
主人公はアラサーの槙生(まきお)です。
彼女は、何年も音信不通だった母が亡くなったのを機に、
母が住んでいた瀬戸内海の小豆島を訪れます。
そこで、亡き母の夫だという伊吹(いぶき)と出会い、
しばらく家に住まわせてもらうことに。
ちなみに、伊吹は母よりふたまわり近く年下です。
槙生よりも年下なので、周りには「弟」だと言っています。
槙生は、祖母から引き継いだぬか床を持ってきており、
様々なぬか漬けを漬けているのですが、
それを伊吹が亡き母のスナックで出しています。
お店で島の人々にぬか漬けを振る舞うことで、
槙生も少しずつ島に馴染んでいきます。
そして、ずっと疎遠だった母の素顔を知ることになり…。
***
この物語は、7話で構成されているのですが、
それぞれのタイトルが「水抜き」「捨て漬け」など、
ぬか漬けを作る際の手順になっているのです。
そして、ぬか漬けから様々なことを気付かされます。
人生もぬか床も同じなんですよ。
詳しくはこの本を読んで頂きたいのですが、ぬか漬けってほんと深い!
また、ちょっと変わったぬか漬けも登場するのも楽しく、真似したくなりました。
とりあえず私はドライフルーツを漬けてみようと思います!
それから、タイトルに「ぬか漬け」とあるので、
ほっこりした小説なんだろうな、と思ってしまいそうですが、
いやいや、島の人たちはみんなパワフルだし、口が悪いのです。(笑)
もうね、みんなサバサバッとしていて気持ちいいほどです。
でも、決してトゲトゲしいわけではありません。
読んだ後は穏やかな気持ちです。
見たまま聞いたままではなく、
その奥にある本音に触れながらのやり取りは、
まるで昭和時代の映画を見ているようでもあって、
(例えば「男はつらいよ」的な。笑)
逆にあたたかさを感じるほどでした。
泣いて笑っていい小説でした。
そして、ぬか漬け最高!