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『ドーパミン中毒』

2022年11月30日

あなたには「推し」はいますか?

「推し」のおかげで人生が豊かになった方もいることでしょう。

確かに好きな人やモノのことを考えている時は幸せで
「ドーパミン」が出ているのを感じますよね。

最近ですと、サッカーワールドカップの
日本対ドイツ戦を見た際にドーパミンが出た方が多いでしょうか。

「ドーパミン」は「脳内麻薬」とも呼ばれるホルモンで、
ドーパミンがもたらす幸福感は人を虜にするそうです。

でも、だからこそ、気付いたときには「依存症」になっていることもあるのだとか。
あなたは、ゲーム、アイドル、SNS、スマホ、お酒、恋愛などに依存していませんか?

今日ご紹介するのは、世界的なベストセラーとなっている話題の本です。

『ドーパミン中毒/アンナ・レンブケ、
訳:恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)【新潮新書】』

著者は、依存症医学の世界的第一人者で、
かつて自身も依存症を経験したことがあるそうです。
ちなみに「恋愛小説」依存症だったのだとか。

この本は、依存症からどのように脱出すればいいかが、
実際に著者が診てきた患者たちを例に挙げながら解説されています。

ドーパミンというと、どんな時に出るイメージでしょう?

実はドーパミンは「好き」より「欲しい」に関係していて、
例えば、SNSで実際に「いいね」をもらうときよりも
「いいね」がもらえるかどうかわからないときのほうがドキドキするのだとか。

そして、快楽には犠牲がつきものなんですって。

例えば、幸せな気分になれるからと、
毎日お菓子を大量に食べていたら太ってしまいますよね。

では、どうしたら依存しなくなるのか。

その方法は色々ありますが、
その中のひとつに、やろうと思えば誰でもすぐにできるのに、
なかなかできない「あること」をするのがいいとあります。
それをすることで、自分自身の人生がよくなるだけでなく、
もしかしたら世界を変えることもできるかもしれないんですって。

さて、その「あること」とは何だと思いますか。

気になる方は『ドーパミン中毒』を読んでみてください。

この本を多くの人が読んでみんなが「あること」をすれば、
確かに世界は変わるかも。
私もなるべくそれをやっていこうと思います。
まずは自分の人生をよくするために。

yukikotajima 2:30 pm

『イコ トラベリング 1948ー』

2022年11月23日

今、夢に向かって勉強や就職活動を頑張っている方もいると思います。

私ならできる!と前向きな気持ちになる日もあれば、
私なんてダメだ…ととことん落ち込む日もありますよね。

私もそうでした。特に就職活動中は浮き沈みが激しかったなあ。

今、どちらかというと自信を無くしつつある方は、ぜひこの本を読んでみてください。
きっと夢に向かって歩みを進めたくなると思います。

『 イコ トラベリング 1948ー / 角野栄子 【KADOKAWA】 』

角野栄子さんは、ジブリアニメ作品として映画化された
『魔女の宅急便』の著者として知られる世界的児童文学作家です。

なんと御年87歳!
でもテレビで拝見するお姿は若々しく
春の若葉やお花のような瑞々しさを感じます。
私もこんな風に年を重ねていきたいと思うような素敵な女性です。

最新小説は、角野さんが戦争をテーマに執筆された
『トンネルの森 1945』に続く自伝的物語です。

『トンネルの森 1945』は、
イコという名の少女が経験した戦争について書かれた物語で、
当時十歳だった角野さんが実際に見たり感じたりしたことを
そのまま物語にされたそうです。

私は最新小説の前にまずこちらの物語を読んでみたのですが、
主人公の少女イコの誰にも言えない本音がそのまま書き起こされたような小説で、
何度もイコを抱きしめたくなりました。

また、「こんなご時世」という言葉が何度も出てくるのも印象に残りました。
まさに、こんなご時世ににこそ多くの方に読んで頂きたい一冊だと思いました。

***

そして、最新小説の『イコ トラベリング 1948ー』では、
イコは中学二年生になっています。

成長したイコちゃんを知って「大きくなったねぇ」と、
まるで親戚のおばさんのように嬉しくなってしまいました。

ですが、気付いた時には私自身をイコと重ねながら読んでいました。
時代は違えど学生時代の私と重なるところが多く、
当時感じた痛みや喜びがよみがえってきて、何度も胸がじわりと熱くなりました。

物語の舞台は戦後の日本です。
終戦後、町も人も価値観もものすごいスピードで変わっていきます。

でもイコは、戦争への不安が消えず、悪いことがまた起きるのではと思っています。

そんなある日、英語の授業で習った【〜ing=現在進行形】に衝撃を受け、
私も「今しつつある」という現在進行形で生きていきたい!と思います。

そして英語も好きになるのですが、
気持ちは募るものの特に何かを始めることはしません。

ですが、学校の友だちや先生がイコの世界を広げるきっかけを作ってくれます。

イコは好奇心旺盛な上に素直なところがあるので、
「いいっ!」と思ったら行動が早いのです。

そして、イコは「いつかどこかへ行きたい」と思うようになります。
それも「ひとりで」。
とは言え、日本からの海外渡航は許されない時代です。
イコは時には足踏みをしたり、進む方向を変えたりしながら前へと進んでいきます。

そう。イコはいつでも「前向き」なのです。

不安を感じても前向きな考えで打ち消していきます。
不安を好奇心に変えちゃうのです。
それがとても気持ち良い!

よく「ポジティブな言い方に変える方法」と言ったようなハウツー本がありますが、
イコの思考に触れたほうがきっと役に立つと思うわ。

でも、私はイコが完璧じゃないところも好きなのです。
だから自分と重ねてしまったのかもな。

重ねたといっても今の私は少女ではなく、年齢だけ見れば立派な大人です。
でも、この小説を読んで、私もイコちゃんのように
この先もずっと好奇心を忘れずに現在進行形で進んでいきたいと思いました。
それこそ、今も現在進行形で輝きつづける角野栄子さんのように。

この本を読んだ後は、きっと心も足取りも軽くなるはずです。

自分の進むべき道に悩む若い方はもちろん、
大人の皆さんにもぜひ読んでいただきたい一冊です。
できれば『トンネルの森 1945』もあわせてお読みください。

yukikotajima 1:45 pm

西田美術館 特別展「日本三霊山展」

2022年11月16日

立山連峰が美しい日には思わず写真を撮りたくなるものですが、
あなたはこれまでどのような山の写真を撮ってきたでしょうか。

同じ山でも撮る場所、撮る時間、撮る人によって、その姿は様々です。
時にはまるで奇跡のような光景に出くわすこともあります。

先日、そんな一瞬の美しさをとらえた写真や絵画を間近で堪能してきました。

先週の土曜日12日から上市町の西田美術館では、「日本三霊山展」が始まりました。

日本三霊山とは、富山の立山、石川の白山、静岡の富士山のことです。

西田美術館は、「自然・祈り・美術」をコンセプトに、
数多くの霊山をモチーフにした作品を収蔵している美術館です。
今回の展覧会では、写真、日本画、版画、ガラスなどの
多彩なジャンルの新作や収蔵作品が展示されています。

展示は山ごとに分けられており、
「立山」は、写真家のイナガキヤストさんの写真がメインです。

私がお邪魔した時にちょうどご本人がいらっしゃったので、
直接、写真の解説をしていただきました。

イナガキさんの写真と言いますと、ダイナミックな富山の景色でお馴染みですが、
ただ美しいだけではなく、どの写真も奇跡の瞬間をカメラにおさめているのだとか。

例えば、霧に覆われた幻想的な街の写真(↑)は、
霧の厚さがベストだったからこそ撮れたそうです。
確かに街灯の柔らかな灯りはこれ以上無いという美しさです。

写真を撮る際に「タイミング」は重要なんですって。

思いがけずイナガキさんご本人からお話を伺えて楽しく鑑賞できまました。
ありがとうございました!

そのほかの作品は、学芸員の城川沙織さんに解説して頂きました。

立山と作品ですと、入ってすぐのところに、
ガラス作家の名田谷隆平さんの「剱岳」というガラス作品(↑上の写真)があります。

こちらは、この夏、実際に剱岳に登った上で作られたそうで、
見る角度によって見え方が変わります。
確かに実際の立山も見る度に見え方が変わりますよね。

「富士山」は、先日まで水墨美術館で展覧会をしていた
山元春挙の弟子で甥っ子の山元櫻月の富士山の日本画(↑の写真)や、
富士山写真家の橋向真さんの写真が並んでいます。

◎山元春挙展の私のブログは コチラ

櫻月は、横山大観から「富士を描いたら日本一」と言われるほどだったそうです。

橋向さんの写真(↑)は、雲にこだわりがあり、
例えば、朝焼けの様子(左から3枚目)は
まるで鳳凰のような色と形の雲が広がっているなど、
現実の世界とは思えないような作品が多く、インパクトがありました。

「白山」は、木村芳文さんの写真(↑)や谷内正遠さんの版画が中心です。

立山や富士山の展示作品は離れたところから山を撮っている写真が多いのに対し、
木村さんの白山の写真は実際に山に登って山を撮っているのが特徴です。

谷内さんの版画(↑)は、どこかで見たことがあるなあと思ったら、
北陸銀行の現金を入れる封筒でした。

他にも様々な日本三霊山の作品が展示されていますので、
ぜひ会場でご覧になってみてください。

ちなみに、三霊山のいずれも夕方より朝の太陽をおさめた作品が多いので、
ご来光を拝んでいる気分にもなりました。

学芸員の城川さんから「作品を見た後は実物の剱岳も見てください」と言われ、
2階の休憩室から山の様子を眺めたのですが、
この日は山がくっきり見えていまして、最後にご褒美を頂いたような気分でした。

美術館までの道中も立山連峰を見ながらのドライブで、最高の秋の一日となりました。

西田美術館の特別展「日本三霊山展」は、2023年1月29日(日)までの開催です。
休館日は月曜・火曜です。

また、常設展もかなり見応えがありますので、ぜひあわせてご覧ください。

※ちなみに、特別展のみ写真撮影OKです。

◎西田美術館の公式サイトは コチラ

yukikotajima 11:48 am

『今夜、ぬか漬けスナックで』

2022年11月9日

私は料理は得意ではないのですが、ぬか漬けだけは続いています。

以前、母のぬか床をわけてもらい、しばらく漬けていたものの
仕事が忙しくなったときに放置してしまい、ダメにしてしまったのですが、
その後、手間いらずの「発酵ぬか床」を見つけ、リベンジ!
再びぬか漬け生活を始めました。

それが2019年の夏だったので、気付けば3年以上続いています。

ぬか漬けを始めてから、旬の野菜を意識するようになりましたし、
生活がほんの少しだけ丁寧になったように思います。
今では私の生活と言うか人生に必要なものになっています。

さて、今日はそんな「ぬか漬け」が出てくる小説をご紹介します。

『今夜、ぬか漬けスナックで/古矢永塔子(小学館)』

主人公はアラサーの槙生(まきお)です。
彼女は、何年も音信不通だった母が亡くなったのを機に、
母が住んでいた瀬戸内海の小豆島を訪れます。

そこで、亡き母の夫だという伊吹(いぶき)と出会い、
しばらく家に住まわせてもらうことに。

ちなみに、伊吹は母よりふたまわり近く年下です。
槙生よりも年下なので、周りには「弟」だと言っています。

槙生は、祖母から引き継いだぬか床を持ってきており、
様々なぬか漬けを漬けているのですが、
それを伊吹が亡き母のスナックで出しています。

お店で島の人々にぬか漬けを振る舞うことで、
槙生も少しずつ島に馴染んでいきます。

そして、ずっと疎遠だった母の素顔を知ることになり…。

***

この物語は、7話で構成されているのですが、
それぞれのタイトルが「水抜き」「捨て漬け」など、
ぬか漬けを作る際の手順になっているのです。

そして、ぬか漬けから様々なことを気付かされます。
人生もぬか床も同じなんですよ。
詳しくはこの本を読んで頂きたいのですが、ぬか漬けってほんと深い!

また、ちょっと変わったぬか漬けも登場するのも楽しく、真似したくなりました。
とりあえず私はドライフルーツを漬けてみようと思います!

それから、タイトルに「ぬか漬け」とあるので、
ほっこりした小説なんだろうな、と思ってしまいそうですが、
いやいや、島の人たちはみんなパワフルだし、口が悪いのです。(笑)

もうね、みんなサバサバッとしていて気持ちいいほどです。
でも、決してトゲトゲしいわけではありません。
読んだ後は穏やかな気持ちです。

見たまま聞いたままではなく、
その奥にある本音に触れながらのやり取りは、
まるで昭和時代の映画を見ているようでもあって、
(例えば「男はつらいよ」的な。笑)
逆にあたたかさを感じるほどでした。

泣いて笑っていい小説でした。
そして、ぬか漬け最高!

yukikotajima 2:23 pm

『リバー』

2022年11月2日

明日11月3日は文化の日ですが、
毎年、文化の日を中心にした2週間は「読書週間」です。

今日の「ゆきれぽ(ヨリミチトソラ内18時30分頃〜)」は、
読書の秋を堪能できる長編小説をご紹介します。

『リバー/奥田英朗(集英社)』

私の大好きな作家、奥田英朗さんの新作というだけでなく、
作品の舞台のひとつが群馬ということもあり、
書店で見つけるやいなや購入。

すぐにでも読みたかったのですが、
なかなかまとまった時間が取れず
買って一ヶ月後にようやく読めました。

と言うのも私、本は一気に読みたいのです。

でもこの本、約650ページもあるんですよ。
見た目はまるで辞書です。(笑)

でも、昨日ようやく読めました。
途中ジムに行った以外は朝から晩まで読み続けるという、
大変幸せな一日でした。

とても面白くて、650ページもあるのに、
残りがわずかになっていくにつれ、寂しさを感じたほどです。

『リバー』は、北関東で起きた連続殺人事件を描いた犯罪小説です。

物語は、群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で
相次いで若い女性の死体が発見されたところから始まります。

その手口が、十年前に同じ場所で起きた
未解決の連続殺人事件とよく似ていたのです。
警察は、また同じ犯人によるものなのか、それとも模倣犯なのか、捜査を始めます。

『リバー』は、様々な人が登場する群像劇で、
主に6人の視点で物語が進んでいきます。

群馬県警・栃木県警それぞれの若手の刑事、
十年前の事件を担当していた元刑事、
若手の新聞記者、
十年前の事件の被害者の父親、
スナックのママの6人です。

事件に関わる様々な立場の人を描くことで、
物語がよりリアルなものとして浮かび上がります。

私が奥田さんの小説が好きな理由は人物の描き方です。
みんなどこかに本当にいそうな人たちなのです。
また、どんな人物も公平に描いているのがいいのです。
誰か一人をヒーローにしたり、悪者にしたりはしません。

だから実際はフィクションなのだけど、感覚はリアルです。

犯人を捜す刑事たちの緊迫感も、
若手記者の緊張感も、
被害者の父親の執念も、
それぞれ別物なのだけど、どれもわからなくないのです。

果たしてこの事件の結末はどうなるのだろう?と
もはや登場人物の一人、当事者の気持ちで読み進めているというか、
事件を追っていました。

大変豊かな読書時間でした。

私、個人としては私の地元の太田市が出てくるのも嬉しかったです。
だからより作品の世界に入り込めたのかも。

この秋、長編小説に挑みたい!という方はぜひ♪

yukikotajima 2:46 pm