『きときと夫婦旅』
2022年8月17日
お盆休みはいかがでしたか?
結婚をされている方の中には、
配偶者とずっと一緒だったことが苦痛だった…
なんて方もいるかもしれません。
(ほとんどの方はそんなことは無いと思いますが。苦笑)
今日ご紹介する本のご夫婦も倦怠期真っ只中です。
もう長いこと会話はなく、挨拶をするのは息子がいるときだけという
ほぼ家庭内別居ともいえる状態が続いています。
その二人をかろうじてつないでいた中学三年生の息子がある日、家出をします。
行先は富山県の氷見市です。
小学五年生の頃に引っ越した友人の家に一人で行ってしまったのです。
この一家が住んでいるのは関東です。
親二人はすぐに東京駅から北陸新幹線に乗って息子を連れ戻しに向かいます。
ということで、今日ご紹介する本はこちら。
『きときと夫婦旅/椰月美智子 (やづき・みちこ)【双葉社】』
タイトルに「きときと」とあるので、富山の方ならすぐに
「これは富山に関わる本だ」と気付かれると思います。
さて、北陸新幹線に乗った夫婦でしたが、
息子から「今日は絶対に帰らない。来るなら日曜日にして」と連絡がきます。
さらに「今日来たら二度と家には帰らない」と。
ちなみに、この日は金曜日。日曜日まで丸二日あります。
息子を連れ戻したらすぐに帰る予定だったので、宿も着替えもありません。
ですが、結局二人は富山に残って旅をすることにします。
しかし、久しぶりに二人きりで過ごすうちに
妻のほうは戸惑いや不満が募っていきます。
まずは宿を取らなきゃ、着替えを買わなきゃ、と思う妻に対し、
すぐにでも旅をしたい夫は「コンビニで買えばいい」と言います。
それに対し「コンビニに洋服が売っているの?」と反論する妻。
いつでもどこでもこんな感じのやり取りが繰り広げられます。
一方の夫は無邪気に旅を楽しみます。
鉄道オタクのご主人にとって鉄軌道王の富山は楽しくてたまらないのです。
そんな夫は、ずっと不機嫌な妻のことをアホだと思っています。
こんなに美しい景色を見ているというのに、もったいないと。
物語は、妻と夫の視点が入れ替わりながら進んでいきます。
ですから、それぞれの本音がわかります。
これまでの不満がたまりすぎて
旅の間も夫に対して苛立ちがおさえられない妻に対し、
妻が不機嫌な理由もわからず、自分の楽しみを優先する夫。
そして、ついに環水公園のスタバで喧嘩をしてしまいます。
どんな喧嘩なのかはぜひ本を読んで頂きたいのですが、
あのスタバであんなことをしたら、目立つだろうなあ。
果たして息子を迎えに行く日曜日までに仲直りをし、
息子を連れ戻すことはできるのか。
ぜひ本のページをめくって夫婦二人の富山旅を覗いてみてください。
『きときと夫婦旅』、とても面白かったです!
夫婦の物語としても、富山の物語としても楽しめました。
結婚されている方が読むと、夫側、妻側それぞれの思いに共感したり、
お互いの思いに気付かされたりするのでは。
なんでうちの妻はいつも不機嫌なんだろう…
と不機嫌の理由がわからないご主人は、
この本を読むことで大切なことに気付くのでは。
また、富山の皆さんは、よく知る場所が出てくることから、
より具体的に楽しめるのではないかしら。
私は今年のお盆は実家の群馬に帰らず、富山でおとなしく過ごしていたのですが、
この本を読みながら、この夫婦と一緒に富山を旅している気分になりました。
今度、実際に彼らがまわったルートで私も旅してみようかな。
富山を旅しながら奥様がこんなことを言います。
「富山って、なんだかとても潤ってる気がする」と。
これは湿度が高いということではなく、富山がいいところだということです。
この夏、どこにも出かける予定がない方は、
ぜひこの本を読みながら富山旅気分を味わってみては。
そういえば、先週は富山の路面電車が出てくる本をご紹介しました。
◎『路面電車すごろく散歩 増補版』の紹介は コチラ
この『きときと夫婦旅』にも富山の路面電車が出てきますので、
セットで読むのも楽しいかも。
もしかしたら、この物語に出てくる鉄道オタクの夫も
『路面電車すごろく散歩 増補版』を読んでいそうだわ。