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『タラント』

2022年3月30日

まもなく新年度ですね。
この春から大学生で一人暮らしが始まる方もいることでしょう。
今どんな気持ちですか。
不安を感じつつもこれからの日々への期待が大きいでしょうか。

大人の皆さんは、当時どんな気持ちでしたか。

私はフワフワしていました。
初めての一人暮らしも、東京での大学生活も、アルバイトも。
大学卒業後どこでどんな人生を送っていくのか、
全く想像もできなかったからこそ、ふわふわしていたように思います。

では今はどうかというと、当時ほどではありませんが時々感じます。(笑)

たとえば、同世代の友人の活躍を知った時などは、
おめでとう!と思うと同時に私は何も成し遂げていないなあと焦りを感じたり、
私の人生これでいいのかなと思ってしまったりして、
大学生の時のようなふわふわとした気持ちになります。

あなたにもありませんか。

今日ご紹介する本の主人公の女性も
他の友人たちと比べると自分は何もできていないと思っています。
というか、彼女の場合すでにあきらめてしまっているのですが。

『タラント/角田光代(中央公論新社)』

主人公は、まもなく40歳になる「みのり」です。
香川出身で大学進学とともに上京します。

物語は2019年から始まり、
大学に入学した1999年、社会人時代の2000年代、
そしてコロナ禍が始まった2020年までが、
時代を行ったり来たりしながら進んでいきます。

まもなく40歳という2019年のみのりは、結婚し東京の洋菓子店で働いています。
仕事は真面目にしているものの、向上心はまったくなく、
それには何か理由がありそうなことが伺えます。

一方、大学に進学したばかりの1999年のみのりは、
つまらなくて退屈な自分こそ世の中の役に立つようなサークルに入って
自分を鍛えるべきだと思い、ボランティアサークル入ります。
そして、国内外での活動を経て世界が開いていく感覚を味わったみのりは、
私にもできることがあったと気付き、
社会人になってからも海外でのボランティア活動を続けていきます。

でも、ある日、正義感からある過ちを犯してしまい、
何に対してもやる気をなくしてしまいます。

しかし、戦争で左足を失った90代の祖父のもとに
若い女性から手紙が届いたことをきっかけに、みのりの心に変化が生じます。

みのりは送り主の女性が誰なのか、中学2年生の甥と調べることします。
ちなみに、この甥もある理由から学校に行っていません。

女性のことを調べるうちに、祖父の過去も明らかになっていきます。
と同時に、みのり自身も変わっていきます。

祖父の過去とは。
なぜ甥は学校に行けなくなったのか。
そして、人生をあきらめたみのりはどう変わっていくのか。
この続きは、ぜひ本のページをめくってみてください。

まもなく新年度ですが、はじまりの季節にぴったりの一冊です。
このままではいけないと思いながらも
どう一歩を踏み出せばいいのかわからない人は、
この本を読むことから始めてみてはいかがでしょう。
きっと欲しかった言葉と出合えるのではないかしら。

***

また、この作品は、ただ文字を追って物語を頭の中に浮かべるだけでなく、
自分だったらどう思うんだろう?何が正解なんだろう?
と、ずっと考え続けた小説でもありました。

ボランティア活動について、戦争について、正義感について、
そして私の場合ラジオについても考えさせられました。
そう、ラジオの話題も出てきます。

ハッとさせられることも多く、
物語としての面白さはもちろん、
気付きや学びも多い一冊でした。

たとえばどういうこと?って思いましたよね。
本当は事細かに伝えたいのですが、
ぜひ本を読みながらハッとしていただきたいので、あえて言いません。

ネタバレせずにこの本の魅力を紹介するのは本当に難しい〜。
この私の紹介では全然物足りなさを感じますもの。ああ、もどかしい。

とにかく素晴らしい作品でしたので、ぜひ読んでください。(笑)

そうそう!富山の話題もちょこっと出てきます。
富山出身者が言いそうなセリフがありまして、思わず笑ってしまいました。

yukikotajima 12:31 pm

『20歳の自分に教えたいお金のきほん』

2022年3月23日

もうすぐ新年度です。
春から社会人という方もいることでしょう。
今、どんな気持ちでしょうか。

大人の皆さんの中には、
初々しい新社会人の姿を見ながら
もう一度、新人の頃からやり直したいなあ。
今なら、きっともっと色々上手くやれるのに!
なんて思う方もいるかもしれません。

もし、当時の自分に何か伝えるとするなら、
どんなことを言いたいでしょうか。

私は、お金についてもっと勉強して!と言いたいです。

若いころは、何だか難しそうだからとお金に関して学ぶこともせず、
積み立てはしていたものの、ある程度貯まると使うということを繰り返してきました。
まさに「アリとキリギリス」のキリギリス人生を送っていました。
ま、それはそれで楽しかったからいいのですが。(笑)

でも、これではいかん!とNISAやiDeCoをきっかけに色々勉強するようになりました。

そして、NISAを機に個別株にも注目するようになったのですが、
投資は日本だけでなく世界情勢が大きく影響するので、
これまでどこか他人事だった遠い国の出来事が
身近なことに感じられるようになりました。

とは言え、まだまだ初心者なので、株価の値動きに心が揺れまくる日々です。
でも、それも含め、世界とつながっていることを実感していますし、
投資を始めて良かったなと思います。
何より今は知ること、学ぶことが楽しいです。

いや、でも「お金」のことは難しそう…という方もいると思いますが、
新年度を前に「お金の基本」を学んでみるのはいかがでしょうか。

今日ご紹介する本は、こちら。

『20歳の自分に教えたいお金のきほん/池上彰』

本のタイトルには2つの意味があるそうです。
ひとつは、もうすでに大人の皆さんに
もうひとつは、現在の若者に向けているそうです。

この本では、経済、投資、税金などの
経済ニュースの基礎の基礎をやさしく解説しているので、
一冊読むと「お金の基本」が身に付きます。

たとえば、コロナ禍で経済は大打撃を受けたのに
日経平均株価だけは上昇を続けました。
「景気が悪くなれば株価が下がる」という常識が通用しませんでした。
それはどうしてなのか。

なんでだろうね。と思うだけで終わっていませんか?
この本にはその理由がわかりやすく説明されいますので、
気になる方はぜひ読んでみてください。

また、経済の基礎知識がクイズ形式で問われるなど、
楽しみながら学ぶことができます。

たとえば。

・日本のお札(紙幣)を発行するところは?

答えは「日銀」です。これは簡単でしたかね。
では、「硬貨」はどこが発行しているかご存じですか。

正解は「政府」です。硬貨には「日本国」と書かれています。
なぜ硬貨は国が発行しているのか。その理由もぜひ本を読んで確認してください。

私がとくに興味深く読んだのは「税金」についてです。
・税金が何に使われているか、
・一生でどれくらい税金を払うか
皆さんは、ご存じですか。

私はお酒が好きでよく飲みますが、
ビールを飲む人は、一生で約219万円の税金を払うそうです。

また、30年ほど前までは、生活必需品でないものなどには
「物品税」という税金がかかっていたそうです。
別名「贅沢税」とも言われ、貴金属、ゴルフ用具、大型テレビ
などのぜいたく品が対象だったそうです。

また、レコードやCDもそうだったんですって。
でも、童謡は子どものために必要なものなので、
物品税はかからなかったそうです。

しかし、「およげ!たいやきくん」が大ヒットしたときに、
大勢の大人たちもこのシングルを買いました。

このとき国税庁は、物品税をかけると言ったそうです。
しかし、レコード会社は「童謡」だと主張。

最終的には「童謡」だと認められたのですが、
その決め手になったものがありました。
いったい何だと思いますか。
その答えはぜひ本を読んで確かめてください。

「お金の基本」と言うと、自分の知らない言葉や数字がたくさん出てきて、
もう読む気が起きない!と思う方もいるかもしれませんが、
この本は、具体的な話が多く頭の中でイメージしやすいので、
自分のこととして理解することができるんです。
だから眠くなるどころか、どんどんページをめくりたくなりました。

さんも新年度を前に今一度、「お金の基本」を学んでみてはいかが。

yukikotajima 11:50 am

マルート、ホテルヴィスキオ富山

2022年3月17日

昨日のgraceでだいぶお話してしまいましたが(笑)、
今日のgraceシン・トヤマは明日18日に富山駅前にオープンする
JR富山駅ビル商業施設「MAROOT(マルート)」
「ホテルヴィスキオ富山」をご紹介します。

「マルート」と聞くと懐かしい気持ちになる方もいるかもしれません。

この名前には、戦災から復興の象徴であり富山駅ビルのルーツでもある
「まると百貨店」へのオマージュも込められているそうですよ。
また、富山の人々の暮らしに必要なものを「まるっと」揃え、
地域の暮らしの「根底(=root)」を支える役目を担い、
「気軽に過ごせる毎日の居場所」を感じることができる
商業施設を目指していくそうです。

施設のコンセプトは、富山の人々の暮らしに必要な「衣」「食」「住」が揃う
「理想の暮らしのアパートメント」で、約72店舗が入っています。
このうち半数程度が食に関連するショップということで、
特に「食」に力を入れているそうです。

先日行われた内覧会に堀池アナと参加したのですが、
たしかに私たちは美味しいものを食べてばかりでした。

揚げたてのかりんとうまんじゅうは通常より小ぶりのサイズで、
つい手がのびパクパク食べたくなりましたし、
富山米で作られたおだんごも美味しかったです。
このおだんごは来週のシン・トヤマで詳しくご紹介しますので、お楽しみに♪

また、ジューシーな入善唐揚げ、本場仙台の牛タンなどお肉もたっぷり頂いてきました。

ドリンクも味わってきました。

北陸初の「ティー」を楽しむ新しいスターバックス
「スターバックス コーヒー 富山マルート店」のティーを頂きました。

一見、ティーなの?と思ってしまったほど色鮮やかで、
私が頂いたドリンクには果肉やジュレが入っていて、食感も楽しめました。
でも香り豊かでティーとしての美味しさももちろん味わえました。

そして、その隣にあるのが、日本酒バル「バール・デ・美富味(みとみ)」です。
こちらでは、県内19の蔵元のフレッシュな生酒がタップから提供されるほか、
気に入ったお酒は店内のショップで買うこともできます。

若者世代にも日本酒を楽しんで頂きたいということで、
見た目も華やかで飲みやすい日本酒カクテルもあります。

また、ピンチョスなど「バル」ならではのメニューもあり、日本酒と共に楽しめます。

店内には富山初となる「リキュール醸造所」も併設しており、
日本酒と様々な果実を組み合わせたリキュールを今後製造していくそうです。

ご神木で作られた一枚板のテーブルを始め、
木のぬくもりを感じられるおしゃれな店内で
皆さんも今までとは一味違う日本酒体験をしてみては。

マルートには他にも生鮮食品やコスメ、雑貨、洋服、書店などのお店がありますので、
ぜひ店内を歩きながら、どんなお店があるのか楽しんでみてください。

私も食べて飲んで歩いて楽しみました!

ただ…欲張りすぎてちょっと疲れてしまったのですが、
店内にはたくさんの椅子やソファがあって
いつでもどこでも休憩できたんです。最高〜!

しかも椅子はもちろん、休憩スポットはどこもオシャレで、
ただそこに座ってぼーっとするだけでも癒されますし、楽しい時間を過ごせます。

たとえば、かわいい照明やカラフルな鳥さんたちでにぎわう鳥かご、
富山の昔の地図が飾られたスポットなど、
休憩スポットごとに全く印象が異なるのが楽しかったです。

店内のデザインは、富山との共通点の多い北欧を参考に
富山らしい解釈やアレンジが加えられているそうですよ。

様々なお店はもちろん、店内の装飾にも注目してみてくださいね。


さて、マルートを満喫した私は、
同じビルにある「ホテルヴィスキオ富山」にも泊ってきました。
JR西日本ホテルズの北陸エリア初出店となるホテルで、ビルの上層階にあります。

全てのお部屋に大きな窓があり、
東側の客室からは立山連峰が、西側からは神通川がのぞめます。

私が訪れた日は美しい青空が広がっていて、まるで窓枠が額縁のようでした。
お部屋からぼーっと外の様子を眺めるだけでもいい時間が過ごせました。

ホテル内には、飲み物やお菓子を頂きながらゆったり過ごせる宿泊ゲスト専用ラウンジや
大浴場などもあり、ホテル内でのんびりくつろげます。

楽しみにしていた朝食は、富山の食材を使ったメニューや郷土料理など
約60種類の中からお好きなものをブッフェスタイルで楽しめます。

私もマス寿し、昆布巻き、ほたるいかのマリネ、米麴の甘酒など
富山らしいものをたっぷりいただいて大満足でした。

なお、こちらのレストランは、昼と夜は富山の海の幸やお寿司が楽しめる
「とやま鮨 海富山(うみとやま)」として宿泊者以外の方も利用できます。
次は飲みに行きたいな〜。

ということで、明日18日(金)に富山駅前にオープンする
マルートとホテルヴィスキオ富山をご紹介しましたが、
私がご紹介したのは、ほんの一部です。
この続きは直接マルートに行ってお楽しみください♪

私もまだ利用していないお店だらけですので、近々また行こうと思います。

◎マルートの公式サイトは コチラ

◎ホテルヴィスキオ富山のサイトは コチラ

yukikotajima 12:19 pm

『妄想美術館』

2022年3月16日

ラジオでもよくお話しているとおり、
私は美術館が好きでよく行っています。

でも20代まではちょっと苦手な場所でした。
アートに疎く、どう楽しめがいいのかわからなかったのです。

それが原田マハさんのアート小説と出合ってから、
美術館で作品を鑑賞することが好きになりました。
原田さんのアートに対する愛と尊敬があふれた小説を読むと、
どの作品も身近なものに感じられるのです。
そして、作品に会いに行きたくなり、
気付けば美術館によく足を運ぶようになりました。

それまで難しいと思っていたアートも
興味を持ってみると逆に面白くてたまらなくなりました。
アートは自分には無い視点と出合えるところがいいのです。
これは小説にも同じことが言えます。
芸術家や小説家の皆さんのユニークな発想に触れることで、
いたって平凡な自分の感性が磨かれ、
自分がちょっとだけ素敵な人間になったような気がします。

それこそ、素敵なアート作品や小説に出合い感性が磨かれたあとは、
おなじみの日常や景色でさえ、なんだか美しく感じられて、
そんな見方ができたことに喜びを感じます。

また、アートを学んだり知ったりするのも楽しいものです。
今日ご紹介する本も勉強になったのはもちろん、とても面白かった!

『妄想美術館/原田マハ、ヤマザキマリ(SB新書)』

小説家の原田マハさんと、漫画家のヤマザキマリさんによるアート談義です。

原田さんは、『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』
などの様々なアート小説でおなじみです。
原田さんはただアートが好きというわけではなく、
美術史を学ぶために30歳で再び大学生になったり、
ニューヨーク近代美術館で働いていたこともあったりと
アートを学び、アートの最先端で働いていた方なのです。

ヤマザキさんは、映画化もされた『テルマエ・ロマエ』でおなじみの漫画家です。
イタリア・フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻し、
現在は東京造形大学客員教授でもあります。
また、様々なアート番組にも出演されています。

そんなアートが大好き&詳しいお二人が
アートについてあれこれ自由に語っているのが、この『妄想美術館』です。

本の帯に「新感覚アートガイド」とあるとおり、
お二人の好きな美術館・作家・作品のほか、
初めての美術館体験や、名画にまつわる裏話、美術鑑賞の秘訣などが載っています。
また、こんな美術館をつくりたい!という
お二人の「妄想美術館」についても熱く語っていて、
とても楽しく読めました。

私はアートが好きと言っても
まだまだ知らないことばかりですので、
この本はかなり勉強になりました。

例えば、西洋と日本の美術館では展示の仕方が異なるそうで、
ヨーロッパでは額にガラスがなく、むき出しで展示されていることが多いのだとか。
その理由は、ガラスに反射してほかのものが映り込んでしまうと、
絵を模写しにくいからなんですって。
また、日本の家は窓が多すぎて絵が飾れない作りになっているそうです。
そのかわり、ふすまや屏風から日本の美術は発展していったのですって。
そう言われると大いに納得!

それから、美術館に行っても、どう鑑賞すればいいかわからない方もいると思いますが、
初心者の方は、理解しなきゃという義務感を払拭して、
なにかいいなあと感じられるものがあったら、
立ち止まってじっくり鑑賞すればいいそうです。
そして、興味を持ったら、深く知っていけばいいと。

この本には、様々なアート作品が登場するのですが、知らなくても大丈夫です。
カラーで作品が紹介されていますので、絵を実際に見ながら本を読むことができ、
まるでお二人の会話に混ざっている気分で楽しめます。

ちなみに、どんな感じの会話かと言いますと、
「モナ・リザ」で知られるレオナルド・ダ・ヴィンチのことは、
「もし現代にいたら、SNSでエゴサーチしてそう」とか、
「インスタ映え、なんて思いながら、自分の絵をアップしてそう」という感じです。
どうです?楽しくないですか?

そのほか、お二人の小説や漫画についての裏話なども語っていますので、
それぞれの作品のファンの方もきっと楽しめると思います。

そして、この本を読んだ後は、きっと美術館に行きたくなるはずです。
私は世界各地の美術館に行きたくて、うずうずしています。
ほんと楽しいおしゃべりでした!

ところで、ヤマザキさんがアートについてこんなことをおっしゃっています。
「アートは、多様性を受け入れ、自分の世界を拡げる手がかりになる」

一方、原田さんはこうおっしゃいます。
「大人になるまでに美術館で幸せな空気を覚えてもらえたら、
きっと戦争がない世の中になる」

こんな時だからこそ、お二人の言葉がより心に響きました。

yukikotajima 9:28 am

『赤と青とエスキース』

2022年3月9日

約一ヶ月後の来月6日に今年の本屋大賞が発表されます。

全国の書店員の投票だけで選ばれる「本屋大賞」は、
大賞受賞作はもちろん上位の作品も面白いので、私も毎年楽しみにしています。
また、映像化されることも多く、
2019年の本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの小説
『そして、バトンは渡された』に続き、
2020年の大賞受賞作となった凪良ゆうさんの『流浪の月』も映画化され、
5月13日に公開されます。

ちなみに、去年の大賞は、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち』でした。
そして2位となったのが、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』でした。

いずれも以前、ラジオでご紹介しました。
(↑作品のタイトルをクリックして頂くと、私の本の紹介が読めます)

そして、今年の本屋大賞にも青山さんの作品がノミネートされています。

◎本屋大賞の公式サイトは コチラ

今日ご紹介するのは、去年11月に発売された青山さんの新作です。

『赤と青とエスキース(PHP研究所)』

エスキースとは、下絵のことです。
この本には、「本番を描く前に、構図を取るデッサンのようなもの」とあります。

物語は、メルボルンから始まります。
メルボルンに留学中の女子大生が、現地に住む日系人の男性と恋に落ちます。
そして、二人は彼女が日本に帰るまでの期間限定で付き合うことに。
帰国の直前、現地の画家の卵が、彼女をモデルにした「エスキース」を描きます。

『赤と青のエスキース』は、そのエスキースをめぐる連作短編集です。

次の物語は、30歳の額職人の男性のお話です。
彼は、学生時代にとある絵画を見た時に、
この絵の魅力をもっと引き出せるような額をつけてあげられらいいのに
と思ったことをきっかけに額職人になります。
しかし、来る発注は既製品ばかりで、なかなかオーダーメイドの依頼はありません。
そんなある日、ある絵画が工房にやってきたことで、
オリジナルの額縁を作ることになり…というお話です。

短編集の中で私はこの額職人のお話が一番好きです。
絵にぴったり合うのはどんなフレームなのか、
あれこれ考える額職人の目の輝きまでが見えるかのようで、
読んでいてワクワクしました。

この作品を読んだあと、たまたま美術館を紹介するテレビ番組を見たのですが、
作品以上にどんな額縁が使われているのか、そればかりが気になってしまいました。
今度、美術館に行ったら、額縁メインで鑑賞してしまいそうです。

その次は、40代の漫画家の男性の物語です。
彼は、大きな賞を受賞した、かつてのアシスタントから
雑誌の対談相手に指名され、久しぶりに顔を合わせることになるというお話です。

作品も素晴らしい上にモデルのようなイケメンの元弟子を前にした
中年の漫画家の正直な心のうちが綴られています。
この作品も良かった。心も瞳も潤いました。

次は、恋人と別れ輸入雑貨店で働く50代の女性のお話です。

どの短編にも「エスキース」が様々な形で出てきます。

最初のお話を読んだ時は20代の若者たちの不器用な恋物語なのねと思いましたが、
話が進むにつれ、登場人物たちの年齢が上がっていくのが興味深く、
それぞれの年代の悩みや本音が丁寧に描かれているのが印象的でした。

悩んでいるのは若者だけじゃないもんね。
その年代ごとにいろいろあるわけで。

この物語には、様々な人が出てくるのですが、
ひとりひとりに対して、著者の青山さんの優しいまなざしを感じました。

また、この本には、ほほう、なるほどそうきたか!と思うしかけがあります。
本の帯に「二度読み必至」とある通り、
最後まで読むと、もう一度読みたくなります。
そして、同じ物語なのに一度目と二度目では感じ方が変わります。
私は、最初は勢いよく、二度目はしみじみと読みました。

本を読みながら、ドキリとして頂きたいので、
まっさらな気持ちで、それこそ一度私の本紹介もいったん忘れて(笑)、
頭の中を真っ白なキャンバスにして、
本のページをめくりながら色をのせていってください。

そして最後にあらためて表紙をご覧ください。
より美しく見えるはず。

ちなみに、著者の青山さんによると、
この作品は「マンガ大賞2020」を受賞した
漫画『ブルーピリオド』からも影響を受けているそうです。
どんな作品だろうと気になり、試しにNetflixでアニメを見たところ
面白くて久しぶりに一気見してしまいました。

『ブルーピリオド』は、ある日、美術に目覚めた男子高校生が
東京藝術大学を目指すという受験物語で、
熱いストーリーや魅力的なキャラクターはもちろん、
美術についても色々学べるのも楽しかったです。

ぜひ『赤と青とエスキース』と合わせてお楽しみください。

yukikotajima 11:08 am

ホテルJALシティ富山

2022年3月3日

graceでは毎週木曜14時25分頃から「シン・トヤマ」をお届けしています。

今日ご紹介するのは、3月1日にオープンした「ホテルJALシティ富山」です。

富山初のオークラ ニッコー ホテルズのグループホテルで、
JR富山駅の南口から徒歩3分のところにあります。

10階建てで客室は252室あり、すべてダブルかツインでシングルはありません。
中には、段差が無く車いすでも過ごしやすいバリアフリーの客室もあります。

こちらがユニバーサルツインです。

今回私はクイーンサイズのベッドのある「モデレートクイーン」に宿泊したのですが、
ベッドはもちろん室内も広々としていて快適でした。

客室は、グレーが基調の落ち着いた空間の中に、
赤のペンダントライトやクッションがアクセントとなっていて、とてもオシャレでした。

この赤は、おなじみJALのブランドカラーで、
館内には赤がところどころに使われています。

お風呂とトイレが別なのも良かったです。

全てのお部屋のバスルームが独立型で、
バスタブとレインシャワーの付いた洗い場が備えられているので、
ゆったりと快適なバスタイムが過ごせます。

そのほか、大型の4Kテレビや無料Wi-Fi、コーヒーマシンやソファなどもあり、
お部屋にずっといたくなりました。

私は照明を少し落とし、ヒーリングミュージックを聞きながら
ソファに座ってコーヒーを頂いてみたのですが、いいひとときでした。

座り心地抜群のソファは、
飛行機のファーストクラスコンパートメントがモチーフになっているんですって。
それは快適なわけだ!
まるで飛行機のファーストクラスを利用している気分が味わえました。

この旅気分、実はお部屋に入る前から始まっています。

廊下のじゅうたんが空の雲の上を飛行機が飛ぶデザインなんです。
飛行機に乗ってお部屋に到着するという遊び心ステキ♪

ちなみに、客室のじゅうたんは、富山の「雪」「立山」「雨」のデザインなんですって。
上の写真は「立山」です。

館内は「富山に Touch」をコンセプトにデザインされているそうで、
錫製のタンブラーなど富山ならではのアイテムが並ぶ特別なお部屋や

1階には富山の恵みを楽しむレストラン&バー
「Cafe Contrail(カフェ コントレイル)」があります。

朝食の他、ランチやディナー、バーで
富山の食材を使用した料理や富山の地酒を楽しむことができます。

ディスペンサーで地酒やワインを楽しめるバーもあり、
プリペイドカードを購入することで、
8種類のお酒を利き酒のように楽しめます。

ホテル内で販売されている富山で作られた錫やガラスの酒器を購入し
店内でグラスキープをすると、1日1杯お好きなお酒が無料でいただけるのだとか。
毎日飲んでもいいそうですよー。それも永遠に。すごい!

私は今回宿泊し、翌朝、揚げたてのすり身揚げや、富山県産てんたかくなどの
富山づくしのブッフェを頂きましたが、とても美味しかったので、
次はランチやディナーで利用したいと思いました。

カフェ コントレイルは、宿泊者以外の方も利用できるそうですよ。

こちらはランチ、ディナーともに利用できるハーフコースです。美味しそう!

また、QRコードを使用したチェックイン・チェックアウトも便利でした。

富山県にお住まいの皆さんも、
ぜひ飛行機旅気分を味わいながら
「ホテルJALシティ富山」に宿泊してみては。

◎「ホテルJALシティ富山」の公式サイトは コチラ

yukikotajima 9:18 am

『ボタニカ』

2022年3月2日

先月、2023年前期の朝ドラが、「日本の植物学の父」と呼ばれた
牧野富太郎をモデルにした物語であることが発表されました。
演じるのは神木隆之介さんで、ドラマのタイトルは「らんまん」に決まったそうです。

また、朝ドラだけでなく小説の主人公にもなっています。

今日ご紹介するのは、牧野富太郎が主人公の『ボタニカ(祥伝社)』です。
直木賞作家の朝井まかてさんの小説で、今年の一月に発売されました。

本の表紙には、蝶ネクタイをつけて朗らかに笑う老人のイラストが描かれ、
帯には、ただひたすら植物を愛し…とか、
莫大な借金、学会との軋轢もなんのその、などと書かれていたので、
お金が無く敵が多い中でも大好きな植物の研究に取り組み続けた
ピュアで穏やかな男性の物語なのね、
とイメージを膨らませページをめくれば、
植物たちに「おまんの名前は?」語りかける少年富太郎が出てきて、
思った通りの美しい物語だわと思って読み進めていきました。

ところが、私の勝手なイメージはすぐに打ち消されました。

植物が大好きなことに違いはないのですが、
植物をはじめ自分の好きなことにしか興味が無いのです。
また、家が裕福なため欲しいものはなんでも買ってもらえるし、
小学校はすでに知ってることばかりでつまらん!
と中退してしまうというわがままっぷりです。

さらに、知らぬ間にというか、ちゃんと話を聞いていなかったせいで
結婚することになってしまうのですが、どこか他人事で、
ある人からは「君は人に対して無神経だ。
身近な人間にも植物と同じように心を向けて、大事にしないと」と叱られるほどです。

結局、結婚したものの家業は妻に任せ(というかおしつけ)、
もっと植物について知りたいと一人東京へ。
なんと学生でも無いのに東京大学理学部植物学教室に出入りを許されることになります。
そして、植物の研究は熱心におこなうのですが、
東京で出逢ったスエという若い女性との間に子どもができ、
一緒に暮らし始めることになります。
さらに本など研究に必要なものを次々に買い、気づけば借金だらけ。
お金がなくなると実家の妻にお金を催促する始末。

自由すぎるー!

富太郎は明るく正直な性格ゆえ第一印象は良いのですが、
植物のことしか考えていないので、敵を作りやすいのです。

間違っていることに対しては、
たとえ立場が上の人だろうが「違う」とはっきり指摘し、
「学会の中に閉じ籠っておらんと、野山を歩けばよいのに」と思います。

「もっと教授を立てろ」とアドバイスされることもあるのですが、
そんなことをしても日本の植物学は進歩しない!と反発します。

その一方で、植物に興味を持つ人なら、
たとえ相手が十二歳であろうと対等に扱っています。
みな、友人、仲間だと。

また、学歴や肩書への興味もまったくありません。

ただただ植物が好きで、いろんなことを知りたいし、
知ったことは世の中に広めたいと思っているだけなのです。

わからないことは本を読んで調べ、
さらに深く知るために植物を観察するということを
何歳になっても続けていきます。

この本には、そんな富太郎の正直な思いが綴られています。

私は正直なことを言えば、最初は、なんなんだこの人は!
ちょっと苦手だ…と思いながら読んでいましたが、
気付いたときには、彼のファンになっていました。

そして、富太郎の作った植物図鑑を見てみたいと思い、
図書館に行って見てきました。

富太郎が自画自賛していたとおり、植物画は素晴らしかったです。
ただ正確というだけでなく、植物への愛を感じました。

色々な人に迷惑をかけながら完成させた図鑑は、とても丁寧に作られていて、
植物に詳しくない私が見ても楽しく読むことができましたし、
この図鑑を目にした人は、富太郎を応援したくなったに違いないと思いました。

それにしても。。。

爽やかなイメージのある朝ドラで、
この自由すぎる富太郎をどのように描くのかしら。

どう描いたとしても、自分の「好き」を貫くさまにきっと勇気づけられる気がします。

yukikotajima 11:44 am