『かぞえきれない星の、その次の星』
2021年10月13日
最近、世の中は以前とはスタイルを変えた形で
少しずつ前へと動き始めましたが、
コロナ禍になって様々なことがストップしましたよね。
会いたい人に会えなかったり
大学に入学したものの家で一人でオンライン授業を受けていたり
仕事も職場には行かず家で一人でしていたりと
さみしさを抱えていた方もいたことと思います。
それこそ誰とも喋らない日もあった方もいるのでは?
今日ご紹介する本は、さみしさと希望を描いた重松清さんの最新作です。
『かぞえきれない星の、その次の星(角川書店)』
重松さんは今年作家デビュー30周年だそうです。
おめでとうございます!
最新作は11の物語が収録された短編集です。
私はこれまで重松さんの作品を読む度に泣いてきたので、
書店でこの本を手に取った時に、
きっと泣くのだろうなと覚悟していましたが、予想通りでした。
重松さんの優しいまなざしに泣かされました。
誰にも言えない、さみしかったり辛かったりする心の内を
重松さんは丁寧に描いていきます。
また、視点もユニークで、小学校の「こいのぼり」や
神社の「かえる」の目から見たコロナ禍の物語や
何百年も鬼退治を続ける「桃太郎」のお話もあります。
他には、感染症の流行で毎日、画面越しの娘と会話するパパの物語や
病気で亡くなった「お母さん」を迎えるお盆に
今年は新しい「ママ」がいることで
心が揺らぐ小学生姉弟のお話もあります。
新しいママは優しいから好きだけど
「お母さん」は「ママ」のことをどう思うんだろと
二人の母のことで悩む子どもたちに涙。私はおいおい泣きました。
また、日系ブラジル人三世の母と日本人の父の間に生まれた
ミックスルーツの小学生のリナの物語も印象的でした。
日本で生まれ、国籍も日本なのに「日本人っぽい」と言われることに
どこかモヤモヤしたものを感じています。
また、セイタカアワダチソウや池の中の外来種の魚などの
外国から来た植物や生き物が嫌われていることをかわいそうだと思います。
同じような話では「虫送り」に関連した物語もあります。
富山の皆さんはご存じかと思いますが、
虫送りは、稲や畑に害虫がこないようにするため行事です。
でも虫たちは悪さをするつもりなんてなくて
ただ自分たちのご飯を食べているだけなのですよね。
そこで、ある村では、居場所がなくなった虫たちを迎え入れる
「虫迎え」をするようになります。
そして今では、居場所をなくした子どもたちを迎えています。
重松さんは、どうせ私のことなんて誰もわかってくれない…
と心を閉じてしまった人たちの存在に気付き、寄り添います。
だから本を読みながら出てくる涙は、
「悲しいから」「かわいそうだから」「感動したから」
という単純な理由だけでありません。
もう仕方ないと諦めていたことや、逃げていたことに気付かされ、
そして抑え込んでいた思いが募って涙があふれてくるのです。
自分がどんなことに傷ついたり、嫌だと思ったりしているのか、
逆に、人が傷ついているのを見て見ぬふりをしてきたのかが、
心の奥から顔をのぞかせてくるようでした。
だから、きっとこの本を読んだ人は、
自分自身と向き合いたくなるのではないかしら。
少なくとも私はそうでした。
でも、心の痛みを感じつつも同時にケアもされていて、
読後感は悪くはありませんでした。
重松さんは、2021年を生きる10代の自分に届けたくて、この本を書かれたそうです。
たしかに私も10代の頃にこの本と出合いたかったなー。
もちろん、かつて10代だった大人の皆さんにもおすすめです。
秋の夜長、毎日一話ずつ読み進めてみては。
いい涙を流しながら毎日心のデトックスもできるかも!?