『商店街のジャンクション』
2021年2月10日
あなたは「着ぐるみ」に入ったことはありますか。
きっと多くの方が「ない」と答えるのでは?
では、「着ぐるみ」に入りたいと思ったことはあるでしょうか。
私はどちらも「ノー」です。
でも、この本を読んだら入ってみたくなりました。
『商店街のジャンクション/村木美涼(早川書房)』
村木さんは、宮城県生まれですが、
なんと2016年からは富山県にお住まいなのだとか。
ようこそ富山へ!
2017年に『窓から見える最初のもの』で
アガサ・クリスティー賞大賞を受賞して作家デビューされたのち、
2019年には『箱とキツネと、パイナップル』で
新潮ミステリー大賞優秀賞を受賞されています。
おめでとうございます〜!
今日ご紹介する『商店街のジャンクション』は、先月下旬に出たばかりの新作です。
本の表紙には二本足で立ってピースをしている犬の絵が描かれ、
帯には「着ぐるみ」とあるので、
表紙を見ただけで、なるほどこのワンちゃんは着ぐるみなのかと気付きます。
この着ぐるみの犬の名前は「チョッキー」です。
チョッキーは、商店街にある古びた映画館の
週末限定の「ナイトシアター」の宣伝チラシを
通りすがりの人々に配るのが仕事で、
男女3人が順番に中に入っています。
この3人はそれぞれ悩みを抱えているのですが、
着ぐるみの中に入ることで悩みが解決するのではと思っています。
3人によると、着ぐるみは、
目立っているようでいて、鉄壁の匿名性をまとっており、
自分のことを誰にも気づかれずにいられる場所であり、
中に入った後は、それまで感じたことのない解放感に満たされるのだとか。
3人は犬の着ぐるみチョッキーの中に入ることで、
自分自身と向き合うようになります。
3人が初めて顔を合わせたのは、
商店街の中の喫茶店、その名も「時計」でした。
店名通り、店内にさまざまな時計が並ぶ不思議なお店ですが、
コーヒーはとても美味しいそうです。飲んでみたい!
そして、このお店の白髪の男性店主が、ある方に言わせると
「近くにいると存在感が薄いのに、離れると存在感が増す」ような人で、
この店主がさらりといいアシストをするのです。
果たして着ぐるみをシェアする3人はそれぞれどんな悩みを抱えていて、
着ぐるみに入り、この喫茶店に通うことで、どんなことに気付くのでしょうか。
続きは本をお読みください。
そうそう、著者の村木さんは富山在住だそうで、
作品の中に「富山」がちょこっと登場しますので、お見逃しなく〜。
最初にも言いましたが、この本を読んで私も着ぐるみの中に入ってみたくなりました。
中に入ったら、世界はどのように見え、私は自分の何に気付くのか知りたくなったのです。
たしかに着ぐるみって不思議な存在ですよね。
だって、着ぐるみの中の人間が突然手を振ってきたら警戒してしまうけど、
同じ人が着ぐるみを着た状態で手を振ってきたら
一瞬で笑顔になって「かわいい〜」とこちらから近づいたり、握手したり、
なんなら一緒に写真を撮ろうよ〜!と言い出したりと、
警戒心はまるで無くなります。
私たちの笑顔は、着ぐるみに向けたものであって、
中の人に向けたわけではないのですよね。
でも、たしかに中には人がいるわけで、冷静に考えると面白いなあと。
存在としては目立つけれど、中の人の印象は薄いわけです。
その感覚を私も着ぐるみの中で味わってみたくなりました。
さて、私は小説を読む度に、いつか映画化されそうだわ!
なんて勝手に想像して楽しんでいるのですが、
『商店街のジャンクション』は舞台化されそうだなあと思いました。
というか、舞台化したものを見てみたい。
どなたかいかがでしょう?(笑)