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『マナーはいらない 小説の書きかた講座』

2021年1月20日

コロナ禍で家にいる時間が増えたことで読書をするようになった方もいるのでは?
中には、読むだけじゃなく自分で小説を書いてみようかな、
と思っている方もいるかもしれません。
そんな方は、小説を書く前に、まずこの本を読んでみてはいかがでしょう?

『マナーはいらない 小説の書きかた講座/三浦しをん(集英社)』

紀伊國屋書店富山店でこの本を目にした時、最初は小説だと思って手に取りました。
でもタイトルには「小説の書きかた講座」とあり
パラパラとめくってみると確かにそんな内容で、
私は小説を読むのは好きだけど書くつもりはないんだよなあと
読むのをやめようと思ったのですが、いや、待てよと。
小説がどのように作られているのかを知るのは面白そうではないかと思い直し、
読んでみることにしました。

これが読んで正解でした。とても面白かったですし、
へえ、こんな風に本は作られていくのかと勉強にもなりました。

著者の三浦しをんさんは、
2006年に『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を
2012年に『舟を編む』で本屋大賞を受賞された人気作家です。
これらを始め、数々の作品が映画化、ドラマ化されています。

この本は、そんな人気作家の三浦しをんさんによる「小説の書きかた」本です。

きっかけは、三浦さんが某短編小説の新人賞の選考をしている時に
「もっとこうしたらいいのに」と感じたことからだそうです。

この本では、推敲、構成、人称、タイトルのつけ方などの基礎を学べるのですが、
具体例が豊富に使われているので、大変わかりやすく、そのうえ面白い!

例えば「セリフ」。
誰が言ったセリフかわかりやすくする戦法の一つに
「宝塚戦法」というものがあるのだとか。

「待ってくれ、アンドレ!」
「どうした、オスカル」

のようにセリフの中で相手の名前を呼ぶとわかりやすいと。(笑)
確かに宝塚ではよくセリフの中で相手の名前を言っているな、
と思わず笑ってしまいました。

また、ほかの例では、三浦さん自身の作品を取り上げていまして、
これがファンにはたまらないのです。(私もファンです)

この作品はこんな風に作られていったのか!
と読みながらワクワクが止まりませんでした。

例えば、箱根駅伝を描いた私も大好きな小説『風が強く吹いている』では、
タイトルのつけ方から取材方法、構成まで細かく明らかにしています。
なんと手書きの構想メモまでオープンにしちゃってます。
ですから三浦しをんさんの作品が好きという方はぜひお読みください。

もちろん三浦さんの作品をそれほど読んでいなくても大丈夫!
読書がお好きな方でしたら未読でも十分楽しめます。

私はこの本を読んで、自分が好きな作品の傾向がはっきりしました。

それは、うまい描写の本です。
ストーリーももちろん大事だけど、
素敵な表現で書かれた作品が私は好きだとあらためて思いました。

三浦さんも「描写」は大事だとおっしゃっています。
小説における描写とは、事細かに説明することではなく、
読者の想像力をよりかきたてるための「材料」だと。

その描写力をあげるためには、
「目に映ったものや感じた気持ちを、ふだんから脳内で言語化する」
ことが大事だとおっしゃいます。また語彙を増やすことも。
語彙と文法力のアップの方法についても書かれているのですが、
それについてはぜひ本を読んでみてください。

アナウンサーとしても大変勉強になった一冊でした。読んで良かった!
また、エッセイとしても面白かったです。
三浦さんが今はまっているものへの愛がすごかった。
ある映画のシリーズを推しているのですが、何度もその話題が出てくるので
とりあえず最初の作品だけでも見てみようかしら、という気持ちになりました。(笑)
やはり何かに対して熱くなれる方が小説家に向いているようですよ。

≪ おまけ ≫

描写がうまいといえば、去年のユキコレランキング1位に選んだ
髙樹のぶ子さんの『小説伊勢物語 業平』は、まさに豊かな表現が心地いい一冊でした。

◎本の感想は コチラ

そして、先日、この本も読んでみました。

『伊勢物語 在原業平 恋と誠』

こちらは、髙樹さんが小説を補足するために書かれた新書です。
小説とセットで読んでいただくと、より理解が深まると思います。

1000年以上前も人間の心は、今と変わりません。恋をして喜んだり泣いたり。
時代は違えど、感じる思いは今と同じだからこそ、
1000年以上前の物語に心動かされるのでしょうね。

また、彼らから学ぶことや気付かされることもあります。
例えば、当時の彼らは、短絡的に勝者と敗者を分けなかったのだとか。
そして、そのような一見曖昧にも見えるふるまいを
髙樹さんは「雅(みやび)」とおっしゃいます。
そこには相手を思いやる気持ちがあるのだと。
まさに今の時代にこそ、この「雅」が必要なのかもしれませんね。
あなたも『小説伊勢物語』で「雅」に触れてみませんか?

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なが〜いブログになってしまい、申し訳ない。
でも、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

yukikotajima 9:27 am