『木になった亜沙』
2020年7月29日
生まれ変わったら、あなたは何になりたいですか?
人以外なら、何がいいでしょうか。
今日ご紹介する本は、
生まれ変わったら「木」になりたいと願った女性の物語の他、
3つのお話が収録された短編集です。
『木になった亜沙(あさ)/今村夏子(文藝春秋)』
今村夏子さんと言いますと、去年の夏に
『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞し、注目を浴びました。
新作には、3つの短編が収録されています。
表題作の「木になった亜沙」の「亜沙」は女性の名前で、
タイトル通り、木になった女性の物語です。
亜沙は、なぜ木になったのか?
彼女は子どもの頃から、自分の手で渡した食べ物を誰にも食べてもらえませんでした。
彼女には、タイミングが悪かったり
良かれと思ってしたことが裏目に出てしまったりするところがあるのです。
例えば、相手が苦手なのを知らずに手作りクッキープレゼントをしてしまうような。
でも、理由なんて無くても結局、誰も食べてくれないのですが。
だって学校で飼っている金魚ですら、エサを食べてくれないのですから。
そんなある日、彼女はスノーボードをしていたところ、木にぶつかってしまいます。
目を開けるとタヌキがいて、木から落ちた甘い実を食べていました。
その様子を見て、「生まれ変わったら木になりたい」
と思いながら亜沙は人生を終えます。
そして、願いが叶い、木として生まれ変わります。
でも、果物の木ではなく、杉の木に。
結局わりばしになった彼女は、ある若者と出会うのですが、
生まれ変わった彼女は、今度こそ人に食べ物を食べてもらえるのでしょうか。
続きは、本のページをめくってみてください。
***
他には、ドッジボールをはじめ何を投げても
なぜか彼女だけには当たらない「的になった七未(なみ)」や
ゴロゴロするのが好きで、歩くのが億劫になり腹這いで生活をしていた女性が
久しぶりに外に出た日のことを描いた「ある夜の思い出」などが収録されています。
ちなみに、『ある夜の思い出』の女性は、腹這いのまま外に出ていきます。
自分が手にした食べ物は誰も食べてくれない女性に
ドッジボールをしても絶対に当たらない女性、
腹這いで町の中をズリズり進む女性など
登場人物はみな独特です。
でも「不思議な話」だけで終わりません。
どれも愛の物語なのです。
それも、ずるさが無い、ピュアで不器用な女性たちの物語です。
私は、この本を読み終えたとき、読後の余韻に懐かしさを感じ、
子どもの頃の昔話を思い出しました。
不思議だけど、夢中になって読んで、そして心に残るような昔話を。
まあ、実際は大人向けの現代のお話なのですけどね。
あなたも毎晩寝る前にでも一話ずつじっくり読んでみては?
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◎HPは コチラ
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