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グッドバイ

2020年1月29日

大浦慶(おおうら・けい)さんという女性を知っていますか?

幕末がお好きな方なら、ご存じかもしれません。

大浦慶さんは、幕末の長崎で外国を相手に
茶葉交易に乗り出した伝説の女商人です。

今日は、そんな大浦慶さんの人生を描いた小説をご紹介します。

『グッドバイ/朝井まかて(朝日新聞出版)』

本を書かれたのは、2014年に『恋歌(れんか)』で
直木賞を受賞した朝井まかてさんです。

この『恋歌』も素晴らしい作品でしたが、
新作の『グッドバイ』も大変良かったです。

主人公は、長崎で菜種油を商う大浦屋の女あるじ、
大浦希以(のちに慶)26歳です。

時代は幕末。
当時、長崎に安価な油が出回るようになり、
慶は現状を変えるために、あるアイデアを出します。

それは、外国との交易を考えてみてはどうかというものでした。

ところが、同業の年上の男性たちからは馬鹿にされてしまいます。
長く続いてきたものを大きく変えようとすれば反発は避けられません。
まあこれは幕末だけでなく今も変わりませんね。

外国との交易をあきらめられなかった慶は、ひょんなことから
若いオランダ人の船員に日本の茶葉の見本を渡すことになります。

油ではなく茶葉なのは、外国人との会話の中で茶葉が売り物になると思ったから。

数年間は何の音沙汰もありませんでしたが、
ある日、見知らぬイギリス人が慶のもとへやってきて、
かなりの量の茶葉を注文したことから、慶は茶葉交易に本格的に乗り出します。

とはいっても、茶葉に関しては素人ですので、徹底的に茶葉について学びます。
また、変なものを売りたくないという思いから手抜きは一切しません。

その仕事ぶりは外国の商人たちから
「最も信頼される日本商人」と言われるほどです。

彼女のもとには様々な人がやってきます。
外国人もいれば、日本人も。
中には坂本龍馬ら亀山社中のメンバーたちもいます。

慶自身は国を変えようという気持ちはないけれど、
熱い若者たちの心に寄り添いたいと思い、彼らに資金援助をします。

稼いだお金を若者たちに使うって、お慶さんかっこよすぎます。

しかし、いいときは長く続きません。
また、慶自身も年を重ねていき、自分の変化に気付きます。
若い時分は後先考えずに動いたのに、今は先を読んでしまう、と。

若いころは無知ゆえの勢いがあるけれど、
年を重ねると知識や経験が増える一方、
同時に考えすぎてしまうものなのですよね。
それ、よーーくわかる!

そして、彼女は大きな失敗をしてしまいます。

その後、彼女はどう生きていったのか。
ぜひ続きは本のページをめくってみてください。***

彼女の人生は「仕事」そのものでした。

状況も関わる人も次々に変わっていきますが、
どんなときでも真面目に人と向き合い仕事に取り組んでいきます。
若いから、女だから、誰もやったことがないから、
と言われても彼女は気にしません

お慶さんかっこよすぎます!(2回目。笑)

私もお慶さんのような女性になりたいと思いました。
とてもいい本でした!

女性の物語なので、女性の方に読んで頂きたいのはもちろん、
おじさま世代の男性たちにもぜひお読みいただきたいです!



<紀伊國屋書店富山店からのお知らせ>

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芥川賞、直木賞受賞作品
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芥川賞受賞作
『背高泡立草(せいたかあわだちそう)
/古川真人(ふるかわまこと)【集英社】』

直木賞受賞作
『熱源(ねつげん)
/川越宗一(かわごえ・そういち)【文藝春秋】』

※芥川賞、直木賞ともに入荷しました。

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洋書バーゲンセールを開催中!
==============

絵本やフィクションを中心としたジャンルの洋書バーゲンです。

このバーゲンでは、普段、店頭で販売されている書籍ではなく
バーゲン用の書籍が特別に販売されており、現在大好評!

洋書ファンの皆さん、お得なこの機会をお見逃しなく〜。

◆期間:1月16日(木)〜2月16日(日)

◆場所:店内中央催事コーナー(※洋書売り場ではありません)


<紀伊国屋書店富山店>

住所:   富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号:   076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00
店休日:  2月26日(水)

HP:   http://www.kinokuniya.co.jp/store/Toyama-Store/

yukikotajima 11:40 am

これでもいいのだ

2020年1月22日

今ブログをお読みのあなたは、年を重ねるにつれ何か変化はありましたか?

若いころより生きやすくなったという方もいれば、
逆に、年を重ねていくのが嫌だ…という方もいらっしゃるのでは?

そんな妙齢の皆さんにおすすめのエッセイがあります。

***

今日ご紹介する本は、
紀伊國屋書店富山店 文学担当の北村菖(あやめ)さんのオススメ本です。

『これでもいいのだ/ジェーン・スー【中央公論新社】』

北村さんのオススメコメントです。

ジェーン・スーさんが日常の中で思った様々なことが書かれたエッセイ66篇です。

ジェーン・スーさんとは年齢も環境も違うけれど、
共感できるお話がいくつもありました。

たいしたことではないけれど、悩んでいること、コンプレックスを
ジェーン・スーさんも同じように感じていて、
でもそれを「それでもいいのだ」と言い切ってくれるこの本に少し心が救われました。

66篇もあるので、誰が読んでも共感できるお話があるのではないでしょうか。

***

著者のジェーン・スーさんは、1973年、東京生まれの日本人で、
作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティとしてご活躍です。

これまでに
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』
『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』
『今夜もカネで解決だ』
『私がオバさんになったよ』
といったエッセイを出しています。

タイトルを見るだけでもスーさんらしさが伝わってきます。
そして、どのタイトルも秀逸です!

この流れからの新作のタイトルは『これでもいいのだ』。

本の帯には
「思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。」
とあります。

真面目に頑張っているのに色々うまくいかなくて、
私の人生って何だろう…と思ったとき、ふと書店でこの本を目にしたら
思わず泣いてしまいそうなコメントです。

うまくいないことだらけなのに年齢だけは重ねてしまっていて焦る!
私は一体どうしたらいいんだろう…と思うこと、ありませんか?

そんな時こそ、スーさんの言葉に耳を傾けてみては?

『これでもいいのだ』は、共感したり、笑ったり、突っ込んだり。
まるで友達のブログを読んでいるような親しみやすさです。

私が共感したのは、仲のいい友人との食事は、お互い話に夢中になりながらも
「これ美味しい!」といったような思ったことはすぐに口に出す、というもの。
でも、その後すぐに会話に戻れるのが快感だとスーさんはおっしゃっています。

私もこれにはおおいに共感!
会話のリズムの心地よさは、相手を選びますからね。
気持ちよく喋れる相手との食事は本当に楽しいものです。

その一方で、スーさんは、アドレナリンを放出せずに済む
ゆったりした付き合いも大事にされています。

これもわかる!
勢いよく喋るのではなく、のんびり過ごせる友人との時間も大切です。
全然タイプが違うからこその良さがあるのですよね。

そういった友達の話もあれば、妙齢の女性ならではの話や
以前、レコード会社で働いていたスーさんらしい音楽の話題などもあります。

音楽の話で印象に残ったのは、トップアイドルの曲は、
時代のトップクリエイターが飛び切りの一曲を提供するため、
名曲がそろっている、というもの。
そして、そのケミストリーを制作サイドは楽しんでいるのだとか。

音楽の話題は他にもまだまだありますので、
このエッセイは音楽が好きな方も楽しめると思います。

最後にスーさんは、年を重ねてきたからこその良さをおっしゃっています。

さて、それは何でしょう?
気になる方はぜひ『これでもいいのだ』を読んでみてください。



<紀伊國屋書店富山店からのお知らせ>

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芥川賞、直木賞発表
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芥川賞受賞作
『背高泡立草(せいたかあわだちそう)
/古川真人(ふるかわまこと)【集英社】』

直木賞受賞作
『熱源(ねつげん)
/川越宗一(かわごえ・そういち)【文藝春秋】』

※芥川賞直木賞ともに1月末に入荷予定

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◆期間:1月16日(木)〜2月16日(日)

◆場所:店内中央催事コーナー(※洋書売り場ではありません)


<紀伊国屋書店富山店>

住所:   富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号:    076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00
店休日:  22日(水)

HP:   http://www.kinokuniya.co.jp/store/Toyama-Store/

yukikotajima 11:33 am

勿忘草の咲く町で 〜安曇野診療記〜

2020年1月15日

今日のユキコレ(grace内コーナー13:45頃〜)でご紹介する本は、
映画化もされた『神様のカルテ』シリーズでおなじみの
夏川草介さんの新作です。

『勿忘草の咲く町で 〜安曇野診療記〜(角川書店)』

今回も『神様のカルテ』シリーズと同じく医療小説なのですが、
夏川さんによると、

『神様のカルテ』では書けないことを、書きました。

とのこと。

『勿忘草の咲く町で』のテーマは「高齢者医療」。
それも都会ではなく地方の物語です。

舞台は長野県松本市郊外の病院。
主人公は、看護師になって3年目の女性、美琴(みこと)です。

この病院の特徴は何と言っても高齢の患者が多いということ。
特に内科病棟は、まるで高齢者の介護施設のようです。

その内科へ研修医の桂先生がやってきます。
実家がお花屋さんのため、お花には詳しいけれども、
見た目はちょっと冴えない男性です。
でも、医者としての仕事は真面目にしています。

この病院は地方の小さな病院ですが、
急性期病院でもあり、次々に患者さんが病院に搬送されてきます。

医者不足なのにも関わらず地域からの要求は昔よりも厳しくなっており、
たとえ研修医であったとしても休みなく働き詰めです。

また、患者のほとんどがご高齢です。
寿命と治療をどう考えるか、先生によって考え方も様々です。

研修医の桂先生は、先輩から

何が正しいかは誰にもわからない。
大切なことは、できるだけ色々な考え方に触れて、
自分の哲学を鍛えるということだ。

と言われます。

桂先生は悩みながら自分なりの答えを見つけていきます。

そういった地方の病院における高齢者医療の現実を描いたのが、この作品です。

私自身、自分が高齢者になった時、どんな治療を受けたいのか、
また、人生をどのように終わらせたいのか、
本を読みながら真面目に考えてしまいました。

この本を読むと、きっと誰もが自分や家族の最期について考えると思います。
そういう意味でも読んで良かったです。

また、この本は、医療小説であるだけでなく、
看護師の美琴と研修医の桂先生の恋愛物語でもあるのです。

この恋愛部分がいい感じです!初々しくて。

ベースは高齢者医療ですが、
そこに恋愛のお話が時折はさまれ、物語を彩っています。

また、桂先生がお花が好きということと
彼らが住む安曇野が自然豊かな場所ということもあり、
本を読みながら目の前に美しい景色と華やかな色彩が広がり、
豊かな気持ちになれました。
特に自然の描写が美しく、声に出して読みたくなるほどです。

物語としての面白さはもちろん、
自分や家族が人生の最期をどう迎えるべきか考えるきっかけにもなり、
また初々しい2人の恋愛小説としても楽しめる1冊です。
ぜひお読みください♪


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住所:   富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号: 076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00
店休日:  今日1月15日(水)、22日(水)

HP http://www.kinokuniya.co.jp/store/Toyama-Store/

yukikotajima 11:48 am

店長がバカすぎて

2020年1月8日

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

私の年末年始については、
私の個人ブログ「続・ゆきれぽ」
にアップしましたので、よかったらご覧ください。

◎続・ゆきれぽは コチラ

さて、今日は私が担当する新年最初のgraceがあります。
そして今日から本紹介コーナー「キノコレ・ユキコレ」がリニューアル。
ユキコレは、これまで同様、私、田島がオススメする本をご紹介していきますが、
紀伊國屋書店富山店オススメの本を紹介するキノコレも
私、田島がご紹介していきます。

***

今年最初に紹介する本は、
紀伊國屋書店富山店 店長 白山善史さんのオススメ本です。

『店長がバカすぎて/早見和真(はやみ・かずまさ)【角川春樹事務所】』

店長から直接、この本を渡されたとき、
思わず「え?これでいいんですか?」と聞き返してしまいました。

だってタイトルが「店長がバカすぎて」なんですよ!

でも、店長は穏やかな笑顔で
「これがいいんです」とおっしゃっていました。

そんな店長のオススメコメントをご紹介しましょう。

***

書店で働く主人公と店長をはじめとした、本に携わる人々の物語。

私が店長となった当初、出張先で見かけたユニークなタイトルの書籍。
思わず手にとった一冊です。

書店を舞台とした物語は多くありますが、
今回この本を読んで良かったと思いました。

職業柄、物語中の多くの言葉が心に突き刺さります。
共感と感動を得られるとともに働くことの意欲を再認識致しました。

本に携わる職業の方だけでなく、より多くの方にも読んでもらいたい、
力が湧いてくるような面白くて楽しい感動の一冊です。

***

私からも簡単に内容をご紹介します。

舞台は東京・吉祥寺にある武蔵野書店。
主人公は、本が大好きな28歳の契約社員、谷原京子。文芸書の担当です。

そんな谷原さんが「バカすぎる!」と思っているのが、店長です。

谷原さんは、仕事が好きで、仕事もできます。
でも、バカな店長に日々振り回されて、いつもイライラしています。(笑)
バッグの中にはいつでも仕事を辞められるよう「退職届」を忍ばせているほどです。

このブログをお読みの方の中にも
年末年始にリフレッシュして、よし今年も頑張ろう!と思ったものの、
出社するやいなや職場の困った人のせいで
早速イライラさせられている…なんて方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方がこの本を読んだら、きっと大いに共感するはずです。

物語は、朝礼での店長の話にイライラしているところから始まります。
実際、本当にイライラします。(笑)

そして、この書店では次々に様々なトラブルが生じます。
そのどれもが、まるで他人事と思えず、
私は、まるで自分の物語のような気持ちで本のページをめくり続けました。

また、小説が好きな谷原さんの本への熱い思いも随所に散りばめられていて、
私も同じく本が好きで、ラジオで本を紹介している身として、勉強になりました。

そういう意味でも、新年最初にこの本を読めて良かったです。

例えば…

・物語の持つ力の一つは「自分じゃない誰かの人生」を追体験できること。
自分のことしか考えていない時代に、自分以外の人間を想像できるのが物語!

・自分の好きな本を人に強要してはいけない。

・本の感想は千差万別

などです。

そうなのです。
好みは人それぞれだし、本を読んで感じることも人によって異なります。
でも、それでいいと思うのです。
私自身も今年も自由に本を楽しんでいきたいと思います。
皆さんも、様々な情報に振り回されず、自分の心が感じるままに本を楽しんでください♪

白山さん、素敵な本を教えていただき、ありがとうございました!

ちなみに、店長にイライラして、仕事のトラブルも次々に起きて…
だなんて、そんなの読みたくない!と思われてしまいそうですが、
『店長がバカすぎて』は、「コメディ」です。

そのうちNHKあたりでドラマ化されそうな予感。(笑)


<紀伊國屋書店富山店からのお知らせ>

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絵本やフィクションを中心としたジャンルの洋書バーゲンが開催されます。

このバーゲンでは、普段、店頭で販売されている書籍ではなく、
バーゲン用の書籍が特別に販売されます。

洋書ファンの皆さん!
お得なこの機会をお見逃しなく〜。

◆期間:1月16日(木)〜2月16日(日)

◆場所:店内中央催事コーナー(※洋書売り場ではありません)


<紀伊国屋書店富山店>

住所:   富山市総曲輪、総曲輪フェリオ7F
電話番号: 076-491-7031
営業時間: 10:00〜20:00
店休日:  1月15日(水)、22日(水)

HP http://www.kinokuniya.co.jp/store/Toyama-Store/

yukikotajima 11:51 am