化物蠟燭
2019年9月25日
2週連続の3連休が終わりましたね。
後半の連休はちょうど秋のお彼岸ということで
お墓参りに行った方もいらっしゃると思います。
例えば、天国のお祖母ちゃんに心の中で語りかけたり
家族でお祖母ちゃんとの思い出話をした方もいらっしゃるのでは?
もしかしたらお祖母ちゃんは
にこにこ微笑みながら目の前にいたかもしれません。
実際には見えなくても。
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今日ご紹介する本は、幽霊たちが登場する短編集です。
『化物蠟燭(ばけものろうそく)/木内昇(きうち・のぼり)【朝日新聞出版】』
木内さんというと、2011年に『漂砂のうたう』で直木賞を受賞しています。
「化物蠟燭」とは、影絵の一種で、
幽霊の形に切った紙に蝋燭の灯りを当てて障子などに影を映すというものです。
影が揺らぐことで、まるで障子の向こう側で幽霊が動いているように見えるのだとか。
今回の作品は江戸の町が舞台の短編集で、7つのお話が収録されています。
例えば、表題作の「化物蠟燭」は、影絵師をしている男性のもとに、
ある男性を「影絵」で怖がらせてほしいという依頼が舞い込みます。
言われた通り、影絵師は毎晩夜中に部屋の外から幽霊の影絵を見せ続けます。
しかし、ある日、自分は毎晩いったい何をしているんだ?と思い、
昼間にこっそり彼の様子を見に行きます。
すると「毎晩、あなたの影絵を楽しみにしていた」と言われてしまいます。
怖がらせるために見せていたはずなのにどうして?
そもそもなぜ自分の存在がばれているのか?
その理由を知ったとき、私は胸が熱くなりました。
大変いいお話でした。
化物蠟燭は、形は同じでも、ゆらゆらと見え方を変えていく、
つまり、向きによって見え方が異なります。
これ、あらゆることに言えませんか?
もっと物事を様々な角度から見ることができれば、
あらゆることはスムーズにいくのかもな。
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他には、
亡くなったはずの人が隣に引っ越してきたり、
過去に夫だったというおじいさんが突然現れたり、
生きている人だと思った人はすでにこの世の人ではなかったりと、
どのお話もちょっと不思議な物語です。
幽霊が見えてしまうある男性が、こんなことを言っています。
「生きている者より死んでいる者のほうが素直に心を語る分、心安い」
「たかが噂ひとつで手のひら返すのが人という生き物だ」
この短編集には幽霊の出てこないお話もあります。
このお話が一番怖かったです。
幽霊は怖い…という方もいるかもしれませんが、
一番怖いのは、生きている人の心なのかもしれませんよ〜。
『化物蝋燭』は、確かに幽霊たちは出てきますが、怖い作品集ではありません。
秋の夜長に毎晩一話ずつゆっくり読み進めてみては?
幽霊たちから気付かされることもあるかも。
また、江戸の訛りと文章のリズムが心地よく、読んでいてとても楽しかったです。
そういう意味でもおすすめの一冊です。
ぜひお読みください。
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ただいま紀伊國屋書店富山店では、
「ユキコレ・キノコレ フェア」が開催されています。
このフェアは、graceで毎週水曜日の13時45分頃〜お届けしている
本の紹介コーナーでご紹介した本を集めたものです。
これまで紹介してきた本の中から
紀伊國屋書店富山店と私、田島が選んだ本が並んでいます。
私のオススメ本には私のコメントもあります!
また、紹介本も最初の頃より増えています。
フェアは9月30日(火)までですので、ぜひ足をお運びください♪