彼女たちの場合は
2019年6月5日
10代の頃、親に内緒でこっそりどこかに出かけたことはありますか?
ちょっとそこまでとか、ほんのわずかな時間ならある、
という方はいらっしゃるかもしれませんが、
置手紙だけ残して旅に出たことのある方は滅多にいないのでは?
今日のキノコレ(grace内コーナー13時45分頃オンエアー)は、
紀伊國屋書店富山店の奥野さんから
江國香織さんの新作『彼女たちの場合は(集英社)』
をご紹介いただきます。
◎奥野さんの紹介文は コチラ
奥野さんが丁寧にこの本について説明していますので、
本を読む前にチェックしてみてください。
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私もこの本を読みましたので、軽く感想を。
主人公は、14歳の礼那(れいな)のと17歳の逸佳(いつか)です。
二人はニューヨークの郊外に住むいとこ同士です。
逸佳の両親は日本に住んでおり、
彼女だけ礼那の家族とともに暮らしています。
逸佳は日本の高校を自主退学したのち、アメリカにやってきたのでした。
ある日、二人の少女は“アメリカを見る”旅に出ます。
親にはもちろん内緒で。
といっても、ちゃんと「旅に出ます」と書置きはしますが。
それも「家出ではないので心配しないでね」と。
行先は様々です。
わりと行き当たりばったりで、
その時の気分で決めていきます。
本を読みながら、私も10代に戻って一緒に旅をしている気分でした。
無知でピュアゆえの危なっかしさといったら!
ハラハラドキドキの連続でした。
でも、自分の10代の頃を思い出しながら
彼女たちと一緒になって楽しんでいると
一気に現実に戻されます。
というのも、この物語は、少女たちだけでなく
彼女たちの親目線の物語も同時に進んでいくのです。
親が登場すると一気に現実モードになります。
同じ親と言っても考え方はそれぞれです。
17歳の逸佳の父親は、自分自身が旅慣れしているため
娘を心配しつつも心の中では応援しています。
一方、14歳の礼那の父親は気が気でなく、母親に当たるほどです。
大人の皆さんの中には、お子さん目線よりも
親目線でこの物語を読まれる方もいらっしゃるかもしれません。
私には子どもはいませんが年齢的には親世代なので、
もし自分が親だったら、何を思い、どう対応していくのかしら?
と考えずにはいられませんでした。
その一方で10代の少女たちの気持ちもわかりました。
若いってこういうことだよなーと
彼女たちに過去の自分を重ねてみたりもしました。
少女たちが出会った30代の男性がこんなことを言います。
「大人はふつう、こんなふうに誰かに気持ちをひらいたりしない。
きみたちはよく笑う。思ったことをはっきり言葉で伝え合うし」
まさにそれ!
10代の頃は、よく笑ったし、何でもよく喋ってましたもん。
今はなんだかんだで空気を読んじゃうもんなー。
ま、それが大人になるということなのかもしれませんが。
また、14歳の礼那は旅の間、どうでもいいことを書き留めていきます。
その理由は、大事なことは覚えているけれど、
そうじゃないことは忘れちゃうから、だそうです。
実はそっちのほうが大事だと。
礼那は旅の思い出を全て忘れたくないと思っているのでした。
私も10代の頃はそうだったかもなあと懐かしく感じました。
今はもう忘れる一方です。
毎日、日記じゃなくても
単語だけでもいいから記録していくのはありかもな。
大事なことも些細なことも。
『彼女たちの場合は』は、
旅気分が味わえるのはもちろん、10代の頃のまっすぐな思いや
待たされる親の気持ちもわかる
色々な意味で読み応えのある一冊でした。
さて、彼女たちの旅はどこに向かっていくのでしょうか。
そして、親たちはこの状況をどう受け入れていくのか。。。
ぜひお読みください♪
ああ、私もアメリカを旅したいなー。
でもその前に英語を勉強しなきゃ…
と言い訳しているところが、ダメな大人の典型だわね。(笑)