ひとつむぎの手
2019年2月20日
毎年4月に本屋大賞が発表されます。
「売り場からベストセラーをつくる!」をモットーに
書店で働く書店員の投票だけで選ばれる賞のことです。
大賞はもちろんノミネート作も小説が読まれるだけではなく
次々に作品がドラマや映画に映像化されています。
例えば、2017年に2位だった森絵都さんの『みかづき』はドラマ化され、
ちょうど今放送されています。
書籍に関する賞は色々ありますが、
身近な賞でもある本屋大賞は
毎年必ずチェックしているという方もいらっしゃるのでは?
今年もノミネート10作品が発表されました。
◎ノミネート作品は コチラ
発表は4月9日(火)です。
今年はどの作品が大賞を受賞するのでしょう?
楽しみですね!
***
今日は、そのノミネート作品の中の一冊をご紹介しましょう。
『ひとつむぎの手/知念実希人(ちねん・みきと)(新潮社)』
知念さんと言いますと、去年も本屋大賞に作品がノミネートされ、
『崩れる脳を抱きしめて(実業之日本社)』が8位に選ばれました。
また、『神酒(みき)クリニックで乾杯を』がドラマ化され、
現在、BSテレ東で放送中です。
知念さんは今注目の作家さんのお一人です。
しかもこの方、現役の医師でもあります。
『ひとつむぎの手』も病院が舞台です。
主人公は、大学病院で働く三十代半ばの心臓外科医、平良(たいら)です。
仕事が忙しく病院に泊まり込む日々です。
そんな中、医局の最高権力者・赤石教授から三人の研修医の指導を指示されます。
ただでさえ忙しいのに、研修医の指導なんて無理!
それも3人同時になんて絶対無理!
と思った平良でしたが、
彼らを入局させれば、心臓手術件数の多い病院への出向を考えてもいいと言われます。
心臓外科医としては、出向先でどれだけ経験を積めるかが大事なんだとか。
これはチャンス!と研修医の指導をすることになります。
ところが、個性派ぞろいの研修医たちとなかなか距離を縮められません…。
通常の仕事も忙しく、その上、研修医の指導をしてヘトヘトの平良でしたが、
ある日、医局の最高権力者である赤石教授を告発する怪文書が出回り、
明石から「犯人探し」を命じられます。
さて、平良はすべての問題を無事、解決することはできるのか?
という物語です。
***
物語は勢いがあって面白かったです!
次々に問題が続出するので、
複雑になり過ぎて理解できなくなりそうなところを
まるできれいに手術するかのごとく、物語をおさめていきます。
さすが現役医師!
よくある医療モノは、腕のいいドクターが難しい手術を次々に成功していきますが、
平良はスーパードクターではありません。
もちろん仕事はできるけれど、他にも腕のいいドクターはいるし、
人としても嫉妬したり、選択を間違えたり、落ち込んだりもします。
だからこそ身近に感じられます。
平良には、仕事をするうえで大事にしていることがあります。
一瞬、心が揺らぐことがあったとしてもぶれません。
そこが彼の魅力です。
ちなみに、後輩たちからは「お人好し」と言われています。
本の帯に「ラスト30頁、あなたはきっと涙する」と書かれているのですが、
天邪鬼な私は、人から「きっと泣くよ」と言われると
絶対に泣かない!と思ってしまうのですが、
悔しいかな、この作品は泣きました。(笑)
まあ、その前にもすでに何度か泣いていたのですが。
この作品も2年後くらいにドラマ化されそうだなあ。
そしたら絶対に見たい!