対岸の家事
2018年10月31日
このブログをお読みの方の中には
専業主婦の方もいらっしゃると思います。
富山は、働くお母さん、ワーキングマザーが多い県ですので、
専業主婦の方の中には「なんで働かないの?」
と言われるたびに嫌な気持ちになる…という方もいるかもしれませんね。
今日ご紹介する本は、
家族のために「家事をすること」を仕事に選んだ、
専業主婦の女性の物語です。
『対岸の家事/朱野帰子(講談社』)』
タイトルは「たいがんのかじ」と読みます。
「対岸の火事」ではありません。
ちなみに、対岸の火事とは、辞書によると
「自分には全く関係のない出来事で、
少しも痛くもかゆくない物事のたとえ」のことです。
その「火事」を「家事」にしたのがこの小説です。
著者の朱野帰子さんと言いますと、
以前、『わたし、定時で帰ります。』という小説をご紹介しました。
★私の感想は コチラ
『わたし、定時で〜』は、長時間労働を良しとせず、
絶対に残業しないことをモットーに効率よく仕事をする女性の物語です。
そして、今回の『対岸の家事』は、
もう一つの長時間労働である「家事」について書かれた小説です。
主人公は、「家事をすること」を仕事に選んだ、専業主婦の詩穂です。
詩穂は2歳の娘と居酒屋勤めの夫の3人家族です。
詩穂は、「専業主婦」になることを望み、
娘も可愛いし、夫も優しくて幸せいっぱいなのですが、
自分の選択はこれでよかったのか、とたびたび悩んでいます。
例えば、なかなかママ友が作れなかったり、
ずっと娘と二人だけの日々に不安を感じたり、
ワーキングマザーたちから嫌味を言われたり…。
一方で、そのワーキングマザーも苦しんでいます。
子育てや家事をしながらも忙しい仕事を抱え、
自分の体調が悪くても休めないし、
誰にも頼ることができずにいます。
他にも、なかなか子どもが出来ずに
周囲の人たちからプレッシャーをかけられ続ける主婦や
仕事で忙しい妻の代わりに二年間の育休を取った夫などがいます。
イクメンという言葉はすっかり定着していますが、
それでも男性で育休を取る人は実際はまだまだ少ないため、
なかなか理解を得られません。
この本の中にも育休後「ゆっくり休めた?」なんて言われてしまった男性もいます。
休めるはずはないのに。。。
男性は男性で悩みを抱えているのですね。
この本に登場するイクメンの場合、仕事ができる人なので、
仕事のように思い通りにいかない子育てに苛立ちを感じています。
仕事のできないむかつく上司のほうが、まだマシだと思ったほどです。
『対岸の家事』は、誰にも相談できず、それぞれ悩みを抱えている人たちの物語です。
ちなみに、既婚者だけでなく、結婚していない女性も登場します。
ですから、この本の中には、自分の立場に近い人がきっといると思います。
みんなそれぞれ、何かしら抱えているものがあるけれど、
自分が大変な時は、他の人の辛さには気づけなかったり、
それどころか、自分以外の人のことを羨ましく感じたりしてしまうのですよね。
この本の中にこんなセリフがあります。
「みんな自分が持っていないものの話になると、冷静じゃなくなる」
この本を読むと客観的に様々な立場の方のことを知ることができ、
視野が広がるように思いました。
小説としての面白かったのはもちろん、色々学ぶこともできた一冊でした。
ほんとうに読んでよかった!
いま、子育て中で大変という方(男女問わず)にこそ、
この本を読んで頂きたいのですが、
本を読む時間なんてないっ!と言われてしまいそうですね。
それでも。
少しずつでもいいから、この本を読んでみてください。
きっときっと心が楽になると思います。
子育てをしているイクメンの皆さんもぜひ!
一方、家事は主婦がやるもの、仕事に比べたら家事のほうが楽だ、
と思っている男性(とくに年配の方たち)にも読んで頂きたい!
『対岸の家事』は、一人でも多くの方に読んで頂きたい一冊です。
ぜひ読んで〜。