2つの家族の物語
2018年7月5日
先日、映画を2本連続で鑑賞してきました。
まずは、是枝裕和監督の『万引き家族』。
カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した話題作です。
6月8日の公開からまもなく1ヵ月。
人気作品とはいえ、もたもたしてたら終わってしまう、
ということで観てきました。
さすが是枝作品。
家族の会話や生活感のある暮らしがあまりにも自然で、
作られた作品を見ているというより、
この家族の生活をのぞき見しているような気分でした。
貧しくても笑顔あふれる穏やかな日々を送る彼らからは
幸せなオーラしか見えません。
みんなでご飯を食べるシーンは、
ありふれた家族の日常に見えますしね。
でも、家族に見える人たちには血の繋がりはありません。
また、彼らが食べているものは万引きで盗んだものばかりです。
つまり犯罪です。
それでも、私はこの家族を嫌いになれませんでした。
特に安藤サクラさん演じるママがよかった。
ママっぽい立ち位置から「ママ」になっていく様に心動かされました。
ママのあの泣きのシーンには感動。私も涙。
でも、犯罪はダメだけどね!
是枝作品の余韻に浸りながら映画館を出ようとしたとき、
ふと、もう1本観ようかなと思い、その場でチケットを購入。
ちょうど10分後に上映開始の作品があったので、それにしてみました。
予備知識はほぼゼロです。
選んだ作品は『焼肉ドラゴン』でした。
いきなり喧嘩のシーンからのスタートで、
さきほどまでのぼそぼそトークの『万引き家族』
のボリュームとあまりにも違い過ぎて、まずそこにびっくり。
この映画も貧しい家族のお話でした。
こちらは、1970年前後の関西で、
焼き肉店「焼肉ドラゴン」を営む韓国出身の家族の物語です。
日本で暮らす韓国出身の家族の日々が描かれているのですが、
当時、彼らの暮らしは色々な意味で楽ではありませんでした。
理不尽なことや思い通りにいかないことだらけです。
でも、一家の主である父親は決して誇りを失わず、
家族のために前を向いて一生懸命仕事をしています。
口数は決して多くないけれど家族思いの真面目な父親です。
一方の母親は感情を抑えられず常に怒っています。
最初は、すごい剣幕のパワフル母ちゃんが登場したぞ、と思ったのですが、
この母ちゃんがいい味を出していて、すっかりファンになりました。
姉妹たちや、それぞれの恋人たちもキャラが濃くてハイテンションだし、
会話もほとんど焼肉ドラゴンのお店の中で繰り広げられていて、
まるで舞台のような作品だなあと思ったら、その通り。
人気舞台の映画化でした。
最初は、わーわー騒がしいだけの映画かな?
と思ったのだけど、気付いたら作品の魅力にはまっていました。
***
私は偶然この2本の作品を続けて観ましたが、
時代や設定やキャラクターたちは違えど、
どちらも貧しい家族の物語という点では同じでした。
そういえば、どちらの作品にも花火が登場していたな。
他にも共通点は色々ありますが、ネタバレになるので控えます。
万引き家族は、ただ一緒に暮らしているだけで血の繋がりはないけど、
本物の家族よりも仲が良かったりする。
一方の焼肉ドラゴンは、日本で暮らし日本語しか喋れず見た目も同じなのに、
日本人では無いというだけで差別されてしまう。
今は「多様性を認める」時代だと言われていますが、
それでもまだその考えが浸透したとは言い切れません。
誰もが生きやすい世の中へ向かっているように見えて、
逆に以前よりも窮屈な世の中になってきているようにも思います。
「正しさ」ってなんだろなあ。
ということを二つの映画を見た後、ずっと考え続けました。
是非、あなたもどちらの作品も観て、色々考えてみてはいかがでしょう?