人間に向いてない
2018年7月4日
今日のキノコレで紀伊國屋書店富山店の奥野さんからご紹介頂く本は、
黒澤いづみさんの『人間に向いてない(講談社)』です。
◎奥野さんの推薦文は コチラ
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私も読みましたので、軽く感想を。
もう、タイトルしからしてインパクト大です。
だって「人間に向いてない」ですよ。
それに本の表紙の女性の人形の顔は溶けてしまっています。
本の帯には「ある日、息子が虫になりました」とある。
虫のような息子って、どんな比喩?と思って読んでみたら、
驚くことに比喩では無く、本当の「虫」でした。
正確には芋虫らしきもの、です。
この本の世界では、数年前から
「異形性変異症候群」という病が国内に蔓延しています。
この病は、ある日突然発症して、一夜のうちに
人間が異形の姿に変貌する病気のことで、
この病に罹患したら法的に「死亡」とみなされました。
この病が発症するのは、社会的に弱い立場の、それも若者たちばかりでした。
主人公は、ある日息子が「虫」になってしまった母親です。
初めて「虫」になった息子を見たとき、まず感じたのは嫌悪でした。
でも、彼女は変わり果てた息子を徐々に受け入れて行きます。
そして、同じように子どもが異形の姿に変わってしまった親たちの会に参加します。
なんと異形には様々な形があり、犬や魚のほか、植物になったという例もあります。
母親は、息子を受け入れることにした一方で
父親は、受け入れられることができません。
また、親の中には異形になった自分の子どもを殺してしまう人もいます。
どうでしょう?
もし、自分の子どもが突然、人間以外の動物や虫になってしまったら
受け入れることはできますか?
本を読みながら、もし私が同じ立場になったら、
どんなことを感じ、どう行動するのだろう、とずっと思っていました。
この虫は本当に私の息子なの?
私の話は理解できているの?
もう元には戻らないの?
そもそもなぜこんな姿になってしまったの?
などと主人公の母親の心が揺れる度に
読者である私の心も同じように揺れました。
子どもが虫になるなんてありえないし、考えたくもない…
と思うかもしれないけれど、
その普通ではない世界を知ることができるのが、読書の面白さです。
それも、ただ物語を読むだけでなく、
もし本当にこんなことが起きてしまったら?
と考えながら読む読書のなんと面白いことか!
最初から最後まで没頭した作品でした。
あなたも不思議な世界をのぞいてみては?