すでに学生の皆さんは夏休みに入っているようですが、
この夏は、ぜひ課題図書以外の本も読んでみませんか?
今日は、夏休み中の高校生の皆さんにも読んで頂きたいと思いまして、
高校生が登場する物語をご紹介します。
高校生が町おこしに関わるという
江上剛(えがみ・ごう)さんの『蕎麦、食べていけ!(光文社)』
という小説です。
本の帯には「高校生の蕎麦打ちサークルが町おこしに!?」とあります。
「蕎麦」ではなく、「蕎麦打ちサークル」が町おこしって、
いったいどんな物語だろうと気になり、読んでみました。
読み始めてすぐに、群馬出身の私は、あ、これ知ってるとぴんときました。
群馬が舞台でした。
大阪から群馬の祖父母の家に引っ越してきた女子高校生「春海」が、
群馬の自然豊かな森の中の道を走る描写から始まります。
ランニング中、彼女は地元の信用金庫に勤める若い男性「勇太」と出会います。
物語はこの二人を軸に進んでいきます。
二人が住むのは、かつてのにぎわいを失った温泉街です。
その温泉街にもう一度観光客を呼び込もうと
勇太は、地元活性化案を企画し実行に移していきます。
その内容は、地元に伝わる大蛇伝説をベースにした新たなお祭りの開催です。
目玉は、伝説の大蛇の形の大きなお神輿と、
もう一つは、地元の蕎麦粉を使って蕎麦を打ち、
観光客の皆さんに食べていただく蕎麦打ちイベントです。
春海は、全く蕎麦打ちに興味がなかったものの、
あることがきっかけで高校の蕎麦打ちサークルに入り、
全国高校生蕎麦打ち選手権大会に向けて、日々特訓に励んでいます。
・
そして、彼女たちのサークルも地元のお祭りのために協力することになります。
そんな中、東京のメガバンクに勤める勇太の兄が地元にやってきて
温泉街のリゾート計画の話を持ちかけます。
兄の言うことには、リゾート化することで大勢のお客さんが温泉街を訪れ、
かつての賑わいを取り戻せる!と。
その話にのろうとする温泉街の人たち。
それに反対する勇太。
そこに春海たち高校生も絡んで…。
果たして、温泉街を活性化するための勇太のプランは、どうなってしまうのか!
という物語です。
途中、地元の信用金庫VS東京の大手メガバンクの戦いのようでもあって、
まるで池井戸潤さんっぽい雰囲気だわ、と思ったのですが、
著者の江上さんは元バンカーなのだとか。
銀行の細かい描写が多かったのは、そういうことか!と納得。
大手メガバンク、地元の信用金庫それぞれの違いや役割などを
わかりやすく表現されており、そういう意味でも勉強になりました。
また、対決も面白かった!
田舎の小さな温泉街活性化の物語ですが、
出てくる人みんながとにかく明るく元気で
楽しい気分で読むことができました。
高校生の物語でもありますので、
ぜひ高校生の皆さんも読んでみて下さいね。
そして、この夏、自分が住んでいる町のことを
少し考えてみてはいかがでしょう?
見慣れた町の景色も視点を変えて見てみると
新たな発見があると思いますよ。
また、親御さんをはじめ、おじいちゃんやおばあちゃんに
子どもの頃は、どんな町だったのか聞いてみては?
一緒に町を散歩しながら話を聞くのもいいかも。
(ただし、熱中症にならないよう、暑い時間帯は避けてね)
私の祖父母はもう天国にいるため、直接話を聞くことができません。
もっと昔の町のことを聞いておけばよかったなあ、
とこの本を読んで思いました。
その分、お盆に実家に帰った時に
父と母に昔の町の様子などについて話をきいてみようと思います。
本を読んで「ああ、たのしかった!」で終わりではなく、
その後も様々な行動につながっていく本っていいなあと改めて実感。
是非ご家族みんなでよんでみてください。
この作品、いつかドラマ化されそうな予感。
もしドラマ化されるなら、
美しくて強い春海のママを
群馬出身の篠原涼子さんに演じてほしいな。