完パケ!
2018年3月14日
先日、元中日ドラゴンズ監督で、野球評論家の落合博満さん
のお話を聞く機会があったのですが、
落合さんがこんなことをおっしゃっていました。
監督は、全てを自分一人でやろうとするのではなく
できる人たちに任せなければいけない。
例えば、監督とコーチはやるべきことが違う。
それぞれの専門スタッフを信頼して任せることが大切だと。
これ、野球だけでなく、仕事においても同じことが言えますよね。
チームで何かを作り上げる時、
それぞれのメンバーの得意分野をいかし、
お互い信頼し合わなければいいものは作れません。
私が先日おこなった朗読会もまさにチームで作り上げました。
演出、舞台監督、照明、音響など
様々なスタッフさんがいなければできませんでした。
朗読会を去年今年とおこないましたが、
毎回その道のプロの皆さんのすごさを実感させられます。
今日ご紹介する本を読みながら、
ふと、落合さんの話や朗読会のことを思い出しました。
今日ご紹介するのは、
『完パケ!/額賀澪(ぬかが・みお)<講談社>』
です。
額賀澪さんの作品は、これまでラジオでも何度かご紹介しています。
★『さよならクリームソーダ』の紹介は コチラ
★『タスキメシ』の紹介は コチラ
私は額賀さんの作品を読むたびに10代の頃に気持ちを思い出します。
どうしたらいいんだろう?何が正解なんだろう?という
答えの見つからない悩みが心の中をぐるぐるまわり続けるような感覚です。
今回の作品も登場人物たちが苦悩してました。
「完パケ」とは、「完全パッケージ」の略です。
メディアでよく使われる言葉で、私も日頃使っています。
そのままで放送できる状態に仕上がっている番組のことを言いますが、
この小説の場合は、映画のことを言っています。
***
『完パケ!』は大学で映像制作を学びながら
映画監督を目指す二人の男子大学生の物語です。
大学4年生の二人は、卒業制作の映画を作ることになります。
ただし、監督として映画を撮れるのは、たった一人。
監督志望の二人は、コンペで勝負をすることに。
一人は、人を動かすのが苦手で
自分の意見をなかなか言葉にできない男性。
地方から出てきて一人暮らしで、アルバイトをしながら生活しており、
決して裕福な生活は送っていません。
もう一人は、人とコミュニケーションを取るのがうまく、
言いたいこともはっきり言える、明るい性格の男性。
実家暮らしで父親は映画業界に身を置いています。
果たして卒業制作の映画の監督に選ばれたのは、どちらなのか?
ちなみに、このコンペの結果は、
物語を読み始めてすぐにわかります。
コンペの後、映画作りが始まっていくのですが、
友人でもあり、同じ夢を持っている二人の男性の
それぞれの心の内が順に描かれていきます。
どちらか一人の視点ではなく、
二人の視点で交互に描かれていくので、
お互いの本音がわかって公平に彼らを見ることができました。
全くタイプの異なる二人は、お互いを羨ましいと感じ、
相手の素晴らしい能力に落ち込んだり嫉妬したり苦悩し続けます。
そんな二人が少しずつ成長していく様が描かれているのですが、
それこそが、ザ・青春!です。
大好きな映画とまっすぐ向き合い、
不器用ながらも熱い思いで仲間たちと作り上げていくさまの
なんとまぶしいことか。
春に読む青春小説っていいものですね。
この季節にこそオススメの一冊です。
4月からの新年度もそんなに変化がないなあという大人の皆さん、
ぜひ『完パケ!』を読んでください。
きっと初心を思い出すはずです。
この作品、いつかドラマ化されそうだなあ。
というか、見てみたい!