森へ行きましょう
2017年11月29日
もしあの時、違う選択をしていたら、
どんな人生を送っていたのだろう…
ときっと誰もが一度は考えたことがあると思います。
私もあります。
・大学卒業後、そのまま東京に残っていたら
・結婚して子どもがいたら
・全然違う仕事に就いていたら
なんてことを考えたことが。
もし富山でアナウンサーにならず、
東京で全く別の仕事をしていたら
20代で結婚して今は小学生のママだったかもしれません。
「お母さんは学生時代はアナウンサーになりたかったのよ」
なんて言いながら近所の朗読教室に通っていたかもしれません。
そして、もしアナウンサーになっていたらどんな人生を送っていたのかしら?
なんてことを時々想像していたかもしれません。
***
今日ご紹介する本は、
1966年の同じ日に生まれた二人の女性の物語
川上弘美さんの『森へ行きましょう(日本経済新聞出版社)』
です。
二人とも似たような環境の中で
同じ人に出会って、それぞれ生活を送っています。
でも、二人が生きる場所は違います。
そう。描かれるのはパラレルワールド。
二人が交わることはありません。
一人は、留津さん。
もう一人は、ルツさん。
耳で聞くと同じ「るつ」さんですが、表記は違います。
1966年に生まれたところから
2027年の60歳までの人生が交互に描かれていきます。
一人はずっと独身で、仕事を続けています。
もう一人は結婚し、子どももいます。
二人が出会う人たちは基本的には同じです。
絡み方は違いますが。
出会い方次第では親友にもなるし、
ただの知人で終わることもあります。
女性の大きな分岐点は結婚&出産かなと思いますが、
この二人もやはりそこが分岐点となります。
でも、分岐点はそこだけではありません。
その後の人生にもたくさんの選択肢が待っています。
二本にわかれた道のどちらを選んでも、すぐにまた道は二本にわかれます。
人生が進むにつれて、選択肢がどんどん増えていくのです。
この物語も最初は二人の「るつ」さんだけのお話でしたが、
後半は、他の「るつ」さんたちも登場します。
独身の「るつ」さんにも
一人暮らしではなく、実家暮らしをする「るつ」さんや
不倫をしている「るつ」さんが出てきます。
同じ男性とお付き合いすることになったとしても、
出会いのタイミング次第で全く異なる人生になるのも面白かったです。
若いころに出会えれば、結婚して子どもができる可能性もあります。
せっかく好きになっても、すでに別の人と結婚していれば、
二人の関係は不倫になってしまいます。
また、出会ったのが遅ければ、自分たちの子どもをのぞむことはできません。
***
川上弘美さんの『森へ行きましょう』は、大変面白く興味深い一冊でした。
現実的に考えれば、過去に戻って人生をやり直すことはできないけれど、
この先の人生は自分で選んで進んでいくことができます。
残りの人生は、いくらでも変えられるのです。
「るつ」さんたちの人生を傍観しながら、
私自身の人生についても考えずにはいられませんでした。
目の前だけを見ていると、道は一本しかないように思うけれど、
実際は人生の終わりまで誰にでも道は何本も用意されていて
自分で選んでいくことで人生が作られていくのですよね。
そして、自分次第で道は増やせるものなのかもな、
なんてことをこの本を読んで感じました。
ほんっと面白かった!
実はこの本、500ページを超えています。
長いです。重いです。まるで辞書のようです。
まあ、人の人生を描いてますからね、軽いわけないですよね。(笑)
でも、実際読んでみると一気読みの面白さでした。
自分自身を重ねながら読んでいたからかもしれませんが、
久しぶりに読書に没頭しました。
あなたも「いたかもしれないもう一人の自分」
を想像しながら読んでみてください。