散り行く花
2017年9月13日
今日ご紹介する本は、
「このミス」大賞で優秀賞を受賞した作家さんの新作です。
このミスとは、宝島社の「このミステリーがすごい!大賞」のことで、
過去に大賞を受賞した作品の中には、
『四日間の奇跡/浅倉卓弥』、『チーム・バチスタの栄光/海堂尊』
など映画化された話題作もあります。
今日ご紹介する本は、伽古屋圭市(かこや・けいいち)さんの
『散り行く花(ちりゆくはな)』です。
先月、講談社から発売されました。
伽古屋さんは、『パチプロ・コード』で
第八回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し2010年にデビューされました。
今回の作品は、美人画で有名な絵師が軸となり話が進む短編集です。
舞台は、大正時代。
大正時代に美人画で有名な絵師といったら、
どなたかわかりますか?
ちなみに、絵師は自らのことを「茂次郎」と名乗っています。
たぶん、絵に詳しい方は、彼か!とおわかりになったのでは?
気になる方は、「大正時代 美人画 茂次郎」で検索してみてください。
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この物語では、人を殺めた4人の女性たちが登場します。
大正時代、女性たちは今以上に窮屈に生きていました。
そんな中、夫や父親の抑圧から解放された、
つまり、夫や父親などを殺してしまった女性たちの前に、
どこからともなく茂次郎と名乗る絵師の男性があらわれます。
彼女たちは皆「自分が人を殺したことはばれていない」と思っているのですが、
茂次郎からは「あなたが殺した」と言われてしまいます。
見ず知らずの人になぜばれたのか?
茂次郎は「罪を背負った女性がわかる」のだそうです。
そして「罪を抱え、解放された女性は最も美しい」と言います。
茂次郎の目的は一つ。
「この世で最も美しい女性」の絵を描くことです。
彼女たちの罪を警察に通報したり誰かに話したりはしません。
茂次郎は絵師ですが、この作品の中ではまるで探偵のようです。
女性たちがどのように罪を犯したのか、鮮やかに暴いていきます。
この謎解きが大変面白い!
女性が犯罪を犯したことは、本を読んでいればわかるのですが、
それ以外にも様々な謎が明かされていきます。
ああ、この発言、この行動は、こういうことだったのか!
と私自身すっかり騙されていたことを茂次郎によって気付かされます。
この物語は、伏線が自然に散りばめられており、なかなか気付けないのです。
また、映像ではなく、本ならではの遊びがこの本にはつまっていました。
短編集ですので、次の作品は騙されないぞ。
と思ってじっくり文字を追っていくのですが、やはり騙されます。
先入観、思い込みってこわいですね。
毎回、100%騙されました。
でも、うわ、また騙されたか!と思いつつも
騙されたことを心地よく感じている私がいました。
ああ、読書は面白い!
まだ夜はそこまで長くないですが、これからの秋の夜長にぴったりです。
忙しくて本を読む時間なんて無い。
という方も短編集ですので、気軽に読めると思います。
軸となっているのは男性の人気絵師ですが
物語そのものは女性たちの物語ですので
女性の方にこそオススメの一冊です。
もちろん、男性も楽しめると思いますが
女性のことを少し怖いと感じるかもしれません…。
まあ、それも含めて楽しんでください。(笑)