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おばちゃんたちのいるところ

2017年5月31日

今日から富山市では「山王さん」ですね。
このお祭りの目玉のひとつが「お化け屋敷」。

あなたはこのお化け屋敷に入ったことはありますか?

私はだいぶ前ですが、あります。
後輩のアナウンサーと一緒に入ったのですが、
怖さのあまり後輩を先に行かせ
私は後輩の後ろをついていく…
という情けない思い出があります。(苦笑)

私、小さいころからかなりの怖がりでして、
家族で旅館に行くと、必ずと言っていいほど
こわくて寝られませんでした。
温泉の天井の模様を見つめながら、それが人の顔に見えてきたり、
ちょっとでも音がしようもんならお化けが来た!と思ったり。

まあ、実際に会ったことは無い…はずなのですけどね。

はず、と書いたのは、
もしかしたら私が気付いていないだけで
お化けに会ったり、時には会話をしたり
しているかもしれないからです。

今日ご紹介する小説には、まさに亡くなった方がたくさん登場します。

『おばちゃんたちのいるところ
 Where The Wild Ladies Are 
 /松田青子(中央公論新社)』

タイトルは、「お化け」ではなく「おばちゃんたち」です。

実際、お化けのおばちゃんたちがたくさん出てきます。

と言っても、このお化けたちは見える人には見えますが、
見えない人には全く見えません。

様々なお化けが登場する連作短編集で、時代は現代です。

「皿屋敷」、「子育て幽霊」、「娘道成寺」といった
落語や歌舞伎がモチーフになっており、
おなじみの皿屋敷のお菊さんや八百屋お七などが登場します。

私が好きなのは、戯曲「天守物語」がモチーフになった
「下りない」という物語。

姫路城の天守に今も住む富姫は、
「パッタパッタパッタ」という
観光客の履くスリッパのだらしない足音に嫌気がさしています。

そして、そろそろお城を出ていきたいと思っています。

この富姫の話では、
姫路城内にあるお菊井戸には、
お菊さんはもういないそうです。

お菊さんは人間に転生したのだとか。
でも、今もお皿を数えているそうですよ。(笑)

そのお菊さんのお話もこの短編集に収録されています。

ほかにも、落語の「三年目」がモチーフの「楽しそう」では、
スキンヘッドの女性のお化けは、パンクファッションに身を包み
好きな映画は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
というはじけっぷり。

と、お化けのお話なですが、まったく怖くありません。
どのお化けも大変チャーミングなのです。
また、有能なお化けたちが多く、
中には、シングルマザーが働いている間、
こっそり部屋で小さな子どもを見守るお化けもいます。
なんていいお化け!

こんなに愉快で有能なお化けさんたちなら、
私も会ってみたいと思いました。

でも、実際会ってみても私はお化けだと気付かなそうですが。

あなたが昨日偶然すれ違った、あの女性も
もしかしたらすでに亡くなっている人かもし・れ・ま・せ・ん・よ〜。

最近、いたるところで人が多く感じるなあという方は、
亡くなっている人が見え始めたのかも!?(笑)

***

このお話は、先ほども申した通り、
落語や歌舞伎がモチーフになっていますので、
元のお話を全て知っている方は、より楽しめると思います。

私は、知らないお話も結構あったので、
元のお話も読んだり見たりしてみたいなと思いました。

あ、もちろん、元のお話をまったく知らなくても楽しめますので
気軽に読んでみてくださいね。

yukikotajima 11:08 am

やめるときも、すこやかなるときも

2017年5月24日

今日ご紹介するのは、こちら。

『やめるときも、すこやかなるときも/窪美澄(集英社)』

タイトルを見た瞬間、結婚式を思い浮かべた方もいらっしゃるのでは?
結婚式の誓いの言葉としておなじみですよね。

まさに結婚を意識した、アラサーの男女の物語です。

簡単に二人のことをご紹介しますね。

男性は、家具職人をしています。
彼は、大切な人の死を忘れられずにおり、
彼女は作らず、女性とは一夜限りの関係を続けています。

一方の女性は、パンフレットの制作会社で働いています。
彼女は、困窮する実家を経済的に支え、
恋とは縁遠い日々を送っています。
心の中では誰かと結婚をしたいと思いつつも恋には奥手です。

そんな二人が一緒に仕事をすることになります。
彼が作った家具のパンフレットの制作担当が彼女だったのです。

***

実は主人公の二人は、ともに人には言えない悩みを抱えています。
仲のいい友人にさえ言っていないような。

恋愛が始まったばかりの頃は、
たいていお互いのいいところを見せますよね。

デートをするにしても二人とも頑張ります。
オシャレもするし、お互いを思いやります。

そして、慣れてきたころにダメな部分が出てきて
大きな喧嘩をしたり、場合によっては別れたりするのですよね。

こんな人だとは思わなかった…
なんてことを言ったり聞いたりしたこと、あなたにもありませんか?

でも、この主人公の彼女は、
気になる相手には、最初から自分の弱点を見せてしまえ!
と開き直ります。

これが功を奏し、彼女にとっては嬉しい展開となるのですが…
おとぎ話のように、王子様と結ばれて、はい、めでたしめでたし。
ではなく、ここから物語がはじまります。

弱みを見せた後、二人がどうなっていくかは、
是非本を読んで確かめてください。

***

この物語は、語り手が男女交互に入れ替わります。
ですから、ひとつの出来事に対して、男女それぞれの思いを知ることができます。

私は女性なので、どちらかというと彼女に肩入れし、
すっかり彼女の友達気分で応援していましたが、
男性がこの本を読んだときは、また違った感覚なのでしょうね。

そんな一般的な男女の違いなども興味深かったです。
もちろん、肝心のストーリーも大変面白かったですよ!

主人公二人の関係が気になって、
夢中で一冊を一気読みしてしまったほどです。

不器用なアラサー男女のラブストーリーというと
薄っぺらく聞こえてしまいそうですが、
この物語は決してそんなことはありません!

物語の登場人物たちは、お互いの気持ちをぶつけ合っていますし。

でも、喧嘩ばかりではありませんよ。(笑)

著者の窪さんが
「やさしさ成分の多い作品になりました」
とおっしゃるとおりでした。

何度、その優しさに涙したことか。

具体的に心が揺さぶられた箇所を言いたいところですが、
ネタバレになってしまいますので、やめておきます。

この本、どなたが読んでもいいと思いますが、
あえてしぼるなら、婚活中の方におすすめです。

「結婚」に対する考え方がいい意味で変わるように思います。

私は…結婚もいいもんだなと思えました。(笑)

ぜひ読んでみて下さい♪

yukikotajima 12:57 pm

『宝くじで1億円当たった人の末路』

2017年5月17日

もし宝くじで1億円当たったら…

ということを誰もが一度は考えたことがあると思います。

番組にも時々そういったメッセージが届きますが、
夢のある話題なので毎回、盛り上がります。

実際には、なかなか当たらないからこそ
色々自由に想像できて楽しめるものなのかもしれません。

でも、もし本当に当たったら、どんな末路が待ち受けていると思いますか?

そんな宝くじに当たった人の末路について書かれた本があります。

その名も『宝くじで1億円当たった人の末路』です。

詳しくは今日のキノコレ(grace内コーナー13時45分頃オンエアー)で
紀伊國屋書店富山店の奥野さんにご紹介いただきます。

◎奥野さんの紹介文は コチラ

この本には、宝くじで1億円当たった人の末路のほか、
「友達ゼロ」の人の末路、子供を作らなかった人の末路、賃貸派の末路、
電車で「中ほど」まで進まない人の末路、8時間以上寝る人の末路、
ワイシャツのしたに何を着るか悩む人の末路…など、
23の「末路」が紹介されています。

「末路」という言葉を使っているため
マイナスのイメージを抱きがちですが、
決してそうではありません。

本の帯には「心が軽くなる!」とありますしね!

この本では、専門家や経験者が具体的なエピソードを交えながら
それぞれの末路ついて意見を述べています。

なんと誰でも簡単にできる肩こり対策まで書かれていました。
その具体的な対策は、ぜひ本を読んでください。

私は、この本を読んで、人生には色々な選択があるということに
改めて気付かされました。

それぞれの人生があり、何がハッピーかも人によって違うわけですからね。

私は「賃貸派の末路」にあった

日本は今、それまで多くの人が信じてきた様々な常識を見直すべき時期に来ている

という一文が印象に残りました。

昔から決まっているんだ!という言葉にはまったく説得力がありません。
なぜそう決まっているのか、その理由を理解し、
おかしければ変えることがこれからの時代には必要なのかもしれませんね。

この本を読んだ人の末路は、確かに心が軽くなるのかも。(笑)
少なくとも私は読んでよかったです。

yukikotajima 11:17 am

文庫版 遊牧夫婦

2017年5月6日

今日のネッツカフェドライヴィンのテーマは
「お出かけのおとも」でしたが、
ラジオでもお話した通り、私のおともは「本」です。

先日、京都に旅行に行った時にももちろん持っていきました。

今回私が読んだのは、旅のエッセイ、
近藤雄生(こんどう・ゆうき)さんの
『遊牧夫婦 はじまりの日々』です。

あえてのエッセイです。
長編小説などは、先が気になって旅どころではなく
下手したら駅のホームのベンチに座ったまま一日が過ぎてしまった!
なんてことになりかねないので(笑)、
旅のおともの本は、エッセイや短編小説を選ぶようにしています。

旅エッセイの『遊牧夫婦』は、まさに旅にぴったりです。
まず、文庫なので荷物になりません。
また、旅する場所は違えど旅のテンションで読めるので、気持ちが入りやすい!
それに、この本はなんといっても面白いのです。

実は私、『遊牧夫婦』のファンなんです。

『遊牧夫婦』はシリーズものでこれまでに3冊出ています。

1『遊牧夫婦』は コチラ

2『中国でお尻を手術〜遊牧夫婦、アジアを行く』は コチラ

3『終わりなき旅の終わり〜さらば、遊牧夫婦』は コチラ

このほど最初の作品である『遊牧夫婦』の文庫が発売されたので、
あらためて読んでみたというわけです。

***

『遊牧夫婦』は、世界各地を旅してまわった若い夫婦のエッセイで、
彼らが実際に見た世界が「素直な言葉」で綴られています。

そう、飾り気がないのです。だから読みやすい。

今回、あらためてこの本を読んで、あることに気付きました。

このご夫婦は「決めつけ」が無いということに。
一方の私はイメージだけで決めつけていることが多いなと。

例えば、「そこに行くのは危なそうじゃない?」と思うような場所にも
遊牧夫婦のお二人は「行ってみなければわからない」と向かっていきます。

この「決めつけ」の無さが彼らの魅力であり、
だからこそ何年も旅を続けることができたのかもなと思いました。

たしかに、知りもしないのにイメージだけで勝手に判断してしまったら
どこに行ったとしても自分の世界は狭いままですものね。

旅というと、どこか遠くに行くことで自分の世界が広がるような気がしますが、
そうではなく、世界を広げられるかどうかは、自分次第なのですよね。

この本を読んで、私も「決めつけ」を減らしてオープンな気持ちで旅をしよう!
と思ったからか、京都旅行中はよく声をかけられました。(笑)
それも外国の方ばかりに。

普段なら言葉がわからないから無理!
と思ってしまいそうですが、なんとかなるものですね。
楽しい交流でした♪

この本のおかげで、ふわりと軽い心で旅を楽しむことができました。

『遊牧夫婦』は、もちろん旅のおともにもいいですが、
このGW中、どこにも行けなかった方にもおすすめです。

遊牧夫婦と一緒に世界へ旅に出てみては?

yukikotajima 12:34 pm

追憶

2017年5月3日

今週末、6日(土)に
富山をはじめとした北陸が舞台の 映画『追憶』 が公開されます。

先月18日には、富岩運河環水公園で凱旋イベントが行われ、
主演の岡田准一さんも会場に登場し当日は約4,500人の方が集まったようです。

映画『追憶』は、監督の降旗康男さんと撮影の木村大作さんの
巨匠二人が9年ぶりにタッグを組んだ作品です。

主演は、岡田准一さん。
共演は、小栗旬さん、柄本佑さん、安藤サクラさん、長澤まさみさん
といった豪華な顔ぶれです。

先日、岡田さんが富山でイベントを行った理由は、
この映画のほとんどが富山で撮影されたからです。

雄大な立山連峰や海に沈む夕日のほか、
八尾や氷見などのおなじみの富山が登場します。

撮影の木村大作さんといえば、
『劒岳 点の記』、『春を背負って』でおなじみですが、
さすが富山の美しい景色を知り尽くしていらっしゃる木村さんです。

スクリーンから木村さんの富山愛を感じました。

どのように富山が撮られているかは、
ぜひ映画館でお確かめください♪

***

簡単にストーリーもご紹介しましょう。

物語は、25年ぶりに再会した幼なじみの男性3人を軸に描かれます。

子どものころは仲良しだった3人が
過去のある出来事を機にそれぞれ別の生活を送るようになります。

それから25年後、3人は、刑事、被害者、容疑者という立場で久しぶりに再会します。

主演の岡田さんは刑事を演じているのですが、
ずっと盛り上がったままの眉が印象的でした。
そう、ずっと不機嫌なのです。

普段は吸い込まれそうな美しい「目」をされている岡田さんなのに、
今回は目以上に眉に注目してしまったほどです。

顔で演じていました。

その一方で、安藤サクラさんの包み込むような優しい佇まいにも釘付けになりました。

長澤まさみさんもいつも以上に透明感を感じたのですが、
なんとこの映画、全キャストがほぼ「ノーメイク」だったのだとか。

なんてこと!

そうか、だから余計、顔の表情や透明感が感じられたのか。

是非そのあたりにも注目してご覧になってみてください♪

映画『追憶』は、今度の土曜日6日に公開です。

 映画『追憶』公式サイトは コチ

***

そうそう、映画を見た後、
本屋さんで原作を見つけたので読んでみました。

細かいところはすこし映画とは異なりましたが、
映画を見た後に原作を読んだことで、より深く作品の世界を味わえました。

もし映画と合わせて原作も読みたい!という方がいらっしゃれば、
私は、映画を見たあと復習がてら原作を読むことをおすすめします〜!

yukikotajima 10:49 am

幸福のパズル

先日、本屋さんで初恋の人に出逢い、
思わずかけよって抱きついてしまいました。

というのは比喩ですが(笑)、
でも、それくらいのテンションになったのは確かです。

私の心を一瞬で思春期に戻したのは、
折原みとさんのお名前です。

思わず「わー!」と声を出してしまったほどです。

懐かしい「シュンチ」というキーワードまで蘇ってきて、
気分はすっかり10代でした。

30〜40代の女性の方ならご存知の方も多いのでは?

折原みとさんの『時の輝き』

映画化もされた話題作です!

その折原みとさんの新作が本屋さんにあったのです。

タイトルは『幸福のパズル』

とっさに読んでみたい!と思い、
興奮状態のまま、さっそく本のページをめくってみました。

600ページもある長編でしたが、一気読みでした。

***

物語は、高校生二人のピュアな恋バナから始まります。

主人公は、高校生のときにデビューした若手人気作家の「みちる」。

彼女が恋に落ちるのが、老舗ホテルの御曹司の優斗(ゆうと)なのですが、
この優斗がパーフェクトな男性なのです。

イケメンで身長が高くて優しくて、そのうえお坊ちゃま。
ね?完璧でしょ?(笑)

主人公のみちるちゃんは、地味で友だちもおらず、
物語ばかりを書いているような女の子です。
だから自分に自信がありません。

そんな女子が王子様のような男子に告白される、
という王道のラブストーリーからこの物語は始まります。

まるで少女漫画を読んでいるかのようなまぶしさで、
私もキュンキュンしながら読んでいたのですが、
そのキラキラなラブストーリーも長くは続きませんでした。

なんと二人には困難が次々に降りかかり、何度も引き裂かれてしまうのです。

お互い惹かれあっているのだから邪魔しないでよ!
と本に向かって突っ込む私は、すっかり10代の女子でした。

王道のストーリーは、ときには退屈に感じることもありますが、
この物語は、王道だからこその面白さを感じました。

ここまでの王道の心地よさを感じたのは久しぶりです。
やはり思春期の感覚って自分の心の中にずっとあるものなのですね。
というか、私のベースになっているのかもな。

また、「王道」以外の面白さもあります!

みちるだけでなく、複数の登場人物の視点で描かれているため、
それぞれの心の内がわかるのです。
純愛小説だけど、二人の恋愛オンリーでないのがいいなあと。
そうなのです。
この作品は、お仕事小説、家族小説、みちるの人としての成長物語でもあるんです。

とくに後半は家族小説としての色合いが強かったです。

というのも、みちるが小説家として成功したあと、
家族がよくないほうへと変わってしまうのです。

途中、あまりにもみちるがかわいそうで、
ここまで苦しめなくてもいいのに!と本から逃げたくなったほどです。

物語は、めまぐるしく展開していき、
気付いたらあっという間の600ページでした。

ほんっと面白かった!

思春期のころ、折原みとワールドにはまった皆さん、
たまには王道の純愛物語を読んでみませんか?

実は王道のラブストーリーは嫌いではないけど、
年齢を重ねてきて、本屋さんで手に取るのがちょっと恥ずかしくて…
なんて方もこの本なら大丈夫!

なんてったって私たちの「折原みと」ですから!!(笑)

GW後半、もし何か本でも読んでみようかなという方がいらっしゃれば、
ぜひ『幸福のパズル』を読んでみてください♪

yukikotajima 10:39 am