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ぼくのとなりにきみ

2017年3月29日

学生の皆さんは、ちょうど春休み中ですよね。
毎日何をして過ごしていますか?

暇だ〜という方は、探検に出かけませんか?
と言っても本の中ですが。

探検に連れて行ってくれる本とは、

『ぼくのとなりにきみ/小嶋陽太郎(こじま・ようたろう)(ポプラ社)』

です。

このも物語は、家の近くにある古墳を探検した
三人の中学一年生の物語です。

慎重で大人っぽいサクと
スポーツ万能で天真爛漫なハセは、
夏休みの最終日に町の古墳へ冒険に出ます。

そこで、筒に入った謎の暗号を拾います。

二人は暗号を解読するために調査を開始。

そこに、フシギな行動が目立つクラスの女子のチカも暗号調査隊に加わります。

調査隊三人を詳しくご紹介しましょう。

サクは、心配性で真面目で
中一にして何もかもあきらめたおじさんのようなところがあります(笑)。

親友のハセは、本能のまま突き進む明るい少年です。
人を疑ったり傷つけたりすることはありません。
だから、クラスで浮いているチカにも気軽に声をかけます。

そして、この調査隊で唯一の女子のチカは、
ひとことで言うなら不思議ちゃんです。
のんびりしていて、あまり勉強もできません。

サクは、そんなチカに勉強を教えているのですが、
どうしてこんなことがわからないんだ!といつもイライラしています。

でも、気付くとチカのことを考えていたり、目で追ったりしていて、
この気持ちは何だろう?と思っています。

そんな三人が暗号を解くために調査をしていくのですが、
物語が進むにつれ、
サクがどこか冷めている理由や
チカがいつもわけのわからない行動をしている理由が
明らかになっていきます。

無邪気に冒険して楽しむぞ〜!と思っているのは、ハセだけで(笑)、
他の二人は、人知れず悩みを抱えています。

親との関係、出来のいい他のきょうだいに対する葛藤、恋心…。

サクは一見、大人びているけれど、やはり中学生です。

サクが何か抱えているなと気付いたママとのやりとりには涙しました。

今の私は、ママの年齢に近いですが、
この本を読んでいる時は、中学生に戻っていました。
気分は13歳です。
だから、涙したのもサク側としてです。(笑)

物語に出てくる30歳の学校の先生も実年齢では年下だけど、
中学生に戻っている私にしてみれば立派な大人で、
中学生にはこんな風に大人が見えるんだなということを思い出しました。

中学生が普段関わりのある大人といえば、親か学校の先生です。

出会う大人が少ない分、大人たちのちょっとした言葉や態度に
影響を受けやすかったりするのですよね。

今もし大人たちの言動によって悩んでいる学生さんたちがいるのであれば、
「気にしなくていいよ!」と言ってあげたい。

それから、大人の皆さんも「言わなくてもわかるだろう」と思わずに
子どもたちの不安をとりのぞくような言葉をかけてあげてほしいな。

学生さんだけでなく、大人の皆さんにもぜひ読んでいただきたい一冊です。

勝手に中高生と保護者のための春休みの課題図書に推薦します。(笑)

yukikotajima 11:50 am

我が名は、カモン

2017年3月22日

本屋さんをぶらぶら歩いている時に、
著者の名前を目にして思わず手に取った本があります。

それは、

『我が名は、カモン/犬童一心(河出書房新社)』

です。

犬童一心さんは、
「ジョゼと虎と魚たち」や「のぼうの城」
などでおなじみの映画監督です。

ですから最初この本を目にした時、
映画の原作?と思ってしまったのですが、
『我が名は、カモン』は、犬童監督の初の小説でした。

それだけも十分心惹かれましたが、
カラフルな色使いの表紙に黄色の帯がかけられていて、
なんとも楽しそうな雰囲気だったこともあり、
これは絶対に面白いに違いない!と迷わず手に取り読んでみました。

で。
肝心の本の中身はと言うと、
本の表紙から勝手に想像した期待を上回る面白さでした。

主人公は、加門慶多(かもん・けいた)。
大変めでたい名前ですが、芸名です。
元俳優で、今は劇団で芸能マネージャーをしている50代の男性です。

シニア統括マネージャーとして日々忙しく働いています。

ちなみに、忙しい理由は、担当している俳優たちのワガママに振り回されているから。

大御所俳優は、突然「引退したい」と言い出すし、
人気若手女優は、CM撮影現場でわがままを言って撮影がストップとトラブル続き。

そのたびに彼らを説得しに現場に顔を出しているのが加門です。

そんなトラブル処理係のような加門をさらに大きなトラブルが襲います。

40年前に、ある台本を途中まで書いて姿を消した伝説の劇作家を探し出し、
最後まで台本を書かせて劇を上演したいという依頼がきます。

加門は山奥の村へ劇作家を探しに行き、無事出会えるのですが、
この劇作家は、とんでもなくわがままなおじいちゃんだったのです。

私のイメージは、田中泯(みん)さんでした。(笑)
つい先日まで放送されていたドラマ「A LIFE」でキムタクの父役をしていた、あの方です。

正直ハチャメチャなおじいちゃんですが、でもエネルギッシュなのです。
いたずらっ子の少年がそのまま年だけ重ねて
おじいちゃんになってしまった感じです。

『我が名は、カモン』には、
この劇作家をはじめ、わがままな人がたくさん登場しますが、
彼らのわがままは、ぬるくはありません。
ちゃんと意味がある。
みんな芝居が好きなのです。
仕事に誇りをもっている。
そして、楽しんでいる。

だから、振り回される加門も頑張れるのだと思います。

一切の妥協無く自分の心に正直な人たちの集まる芝居の世界の、なんとまぶしいことか。

「芝居は英語で「PLAY」。上手に遊べているかどうか」が大事なんだそうです。

これ、芝居以外の仕事にも言えますよね。
仕事を遊べている、楽しんでいる人との仕事って
実際ワクワクするものです。

もちろんワクワクするだけでなく、時にはカチンとくることもあるのだけど(笑)、
後で冷静になって考えてみると、指摘されたことは正しかったりする。
妥協の無い仕事は、ひりひりする緊張感がありながらも
終わってみると「楽しかったな」と思えるものです。

この、最後はカラッとした感じが昔の現場にはよくあったのかもしれませんね。
理不尽や酷い仕打ちだらけだったとしても、
いいものを作ったあとはみんな幸せという感じ。

ちなみに、この物語の中心は50代以上の男性たちです。

だから、ちょっと今の若者たちの空気感とは違います。
でもそこがなんかいいなあと。
いまも現役で働く愛すべきオジサマたちの物語はとても面白かったです。

それから、この本、文章がまるで脚本のト書きのようなリズムなのも印象的でした。

このまま脚本として使えそうですもの。
って、実際の脚本は見たことは無いのですが…(笑)

この作品、いつか犬童監督自身の手で映画化されるかな?
是非映画化してほしい!

その時は、劇作家のわがままじいさんの役は是非、田中泯さんでお願いします!(笑)

yukikotajima 9:22 am

劇場

2017年3月15日

今日のキノコレ(grace内コーナー13時45分頃オンエアー)
で紀伊國屋書店富山店の奥野さんにご紹介いただく本は

芥川賞作家・又吉直樹さんの小説第2作「劇場」です。

●奥野さんの紹介文は コチラ

こちらは、本の装丁を見ていただければわかる通り、
まだ書籍化されていません。

3月7日(火)に発売された「新潮」4月号に掲載されています。

『劇場』は、売れない劇作家が主人公の恋愛小説です。

実は、書き始めたのは、芥川賞受賞作「火花」より前のことだそうで、
又吉さんの作家としての原点でもある作品なのだとか。

私は「火花」より「劇場」のほうぐいぐい作品に引き込まれました。

ただ、この主人公の男がとんでもなくダメな男なので、
彼には全く惹かれませんでしたが。(笑)

でも、この男はどうしたいのか?
と不安定でつかみどころのない彼の行く末が気になり、
ページをめくり続けてしまいました。

たぶんこの本を読んだ方のほとんどが感じると思いますが、
この主人公のダメ男は、又吉さんと重なります。

実際の彼の暮らしや考えていることなどは知らないので、
あくまでもイメージでしかないのだけれど、
私はずっと又吉さんが頭に浮かんだままこの本を読みました。

又吉風(ふう)の主人公の彼はとにかくめんどくさい男です。
自意識過剰です。過剰すぎるほどです。

そんな彼の恋人がとっても素敵な女性なのです。
ほんとうに優しい。

例えば、彼がつまらないことを言った時
私だったらスルーするか
「は?」と冷たい反応をしてしまいそうですが、
笑顔で楽しい!と笑うのです。

そんな二人のやりとりを軸に物語は進んでいきます。

きっとこの作品も近いうちに映像化されるのだろうな。
前作以上に映像が見えてきた作品でした。

そうそう、「火花」はなんかよくわからなかったという方も
この作品はきっと楽しめると思いますよー。

yukikotajima 12:18 pm

Good old boys

2017年3月8日

あなたの職場に、日差しが強くなるこれからの季節の毎週月曜日、
日焼けがどんどん濃くなっていく人はいませんか?

それ、まさに俺だ!というパパさんもいらっしゃるかもしれません。

お子さんのサッカーや野球の練習や試合に
顔を出しているというパパやママは、
月曜の日焼け顔ですぐにわかりますよね。

そんな姿を見ると、いいパパなんだろうなあと微笑ましく思います。

今日ご紹介する本は、
少年サッカーチームに所属する子供たちを支える
父親たちの物語、

『Good old boys /本多孝好(集英社)』

です。

この作品は、 小学四年生のメンバー8人のパパたちによる8つの短編と
プロローグとエピローグで構成された連作短編集です。

この少年サッカーチームは、とにかく弱くて一度も勝ったことがありません。

でも、彼らはサッカーが大好きです。

そんな彼らのことを70歳を超える監督は、

「楽しそうにサッカーをやる才能がある!」

と言っています。

このサッカーチームは、勝つことよりも楽しんでやることを大事にしているのです。

辛いだけではサッカーを嫌いになってしまうから、楽しんでやってほしい。
そして、大人になってからもずっと続けてほしいと。

その教えの通り、
子どもたちは、誰一人文句を言わずのびのびとサッカーをしているのですが、
パパ達はいというと、その考えに共感しているパパもいれば、
もっとしっかりした方がいいとじれったく感じているパパもいます。

例えば、日本人女性と結婚したブラジル人のパパさんは、
日本のサッカーをあまりよく思っていません。
サッカーはもっと楽しむもの、という考えが体に染みついているからです。
そんなブラジル人のパパは、
サッカーの楽しさを教えてくれる素晴らしいチームだと思っています。

ところで、このサッカーチームにはなぜこうもパパしかいないのかというと、
父親の方が色々手伝えるからです。
ゴールの移動や球出しなどは男性のほうがいいということで、
パパさんたちが手伝っています。

そして、それぞれ子どもの名前に「パパ」をつけた呼び方で呼び合っています。
ユウマパパ、ユキパパといった具合に。

子どもたちを見守るパパたちは、
程よい距離感の中でうまく大人な関係をキープしていますが、
パパと子どもの関係性は、家族ごとに微妙に異なります。

パパたちも一人の人間です。
それぞれが悩みを抱えています。
奥さまや息子さんとの関係もそれぞれです。

この物語には、そんな8人のパパ達の本音が綴られています。

まさに今小学生の息子さんがいるパパさんたちは、
より共感できるんじゃないかしら?

女性目線で見ると、そのプライド何?なんだその言い訳?
たよりないなーと思わずにはいられないところもあるけれど(笑)、
でも、みんな憎めないパパさんたちでした。

本の帯にはこうありました。

「すべての頑張るお父さんと子どもたちに、あたたかなエールを贈る一冊」

そうそう、この本は家族の前では読まない方がいいかも。

私は、泣けてしかたなかったです。

気持ちはこのチームの子どもたちの母の気分でした。
(子どもはおろか結婚もしていないというのに…笑)

yukikotajima 12:30 pm

騎士団長殺し

2017年3月1日

今日のキノコレ(grace内13:45頃〜オンエア)
で紀伊國屋書店富山店の奥野さんにご紹介いただく本は超話題作!

村上春樹さんの『騎士団長殺し』です。

奥野さんの紹介文は コチラ

『騎士団長殺し(きしだんちょうごろし)』は、

・第1部 顕(あらわ)れるイデア編—

・第2部 遷(うつ)ろうメタファー編—

の2冊にわかれています。
あわせて1000ページ以上ある長編です。

先週の金曜日24日に発売されましたので、
発売と同時に購入し週末に一気に読んだ方もいらっしゃるかもしれませんね。

私も読みました!

私は一気に読むのが好きなのですが、
さすがに1000ページ以上ある作品を一気に読む時間は無かったので
今回は少しずつ読み進めていきました。

いつもは、どうしても物語の先が気になって
なかなかすっぱりここまで!とやめられないのですが、
この本は何章にもわかれていますので、まだ途中でやめやすかったです。

また、新しい章の始まりも復習から入りますので
読書を再開しやすく、すうっと物語に入っていけました。

ところで、お気づきになったでしょうか?
ここまで私は、物語のストーリーには一切触れていません。

本紹介というのは難しいもので
私も毎週本紹介をしつつも、どこまでネタをばらすべきかいつも悩みます。

村上春樹さんの本は、発売まで一切の中身に関する情報が発表されていませんでした。

つまり、中身を知らせたくないということですよね?

まだ発売直後ということもありますし、
これから読もうという方も多いと思いますので
私もストーリーについて触れるのはやめることにしました。

でも、せっかく読みましたので簡単に感想は言いますね。

ひとことでいうなら面白かったです!

私はほとんど夜中に読んだのですが、
一人静かな部屋で本の世界に没頭しながら
登場人物たちと同じ緊張感を何度も味わいました。

スマホがぶるぶるっとなっただけで
キャーと飛び上るほどでした。(笑)

いったいこの音は何?
この先には何があるの?
これはどういうこと?

そんな疑問が何度も頭に浮かび、
ドキドキが止まりませんでした。

また絵が浮かびやすいので本を読みながら、
作品世界の中に入り込んでしまったかのような
実感を伴った読書でした。

あるいは、私は本の世界にいたのかもしれない。
(春樹風に言ってみた。笑)

「村上春樹の新作」ということで、
正直、読む前は、どこか構えてしまうところがあったのですが、
読んでいるうちに、そんなことどうでもいいやと思えました。

純粋な気持ちでただ本のページをめくればいいのだ、
と思ったら大変軽やかな読書になりました。

私と同じように感じている方も
固定概念なんて取っ払って読んでみては?

物事を難しくややこしくしているのは、いつも自分の心なのかもしれませんよ。

yukikotajima 11:56 am