デトロイト美術館の奇跡
2016年10月12日
10月も半ば。
秋も日々深まっていますが、
どんな秋を楽しんでいますか?
私は、三連休中、富山県立近代美術館に行ってまいりました。
今、近代美術館では、
「藤城清治 光よろこびメルヘン展」を開催中です。
日本を代表する影絵作家である藤城さんは、1924年生まれ。
90歳を超えた今も創作活動を続けていらっしゃるのだとか。
ちょうど私が訪れた日は連休中ということもあり
大勢の皆さんで賑わっていました。
いつもはほぼ大人しかいない美術館にお子さんたちも多く
メルヘンな作品の中を歩いていると、
まるでテーマパークにいるような気分になりました。
作品を見つめる方たちが皆、
柔らかな表情をされているのも印象的でした。
藤城さんの作品の前では誰もが心がピュアな気持ちになるのかもな。
私もすっかり解毒されましたもの。(笑)
たくさんの作品の中には、おなじみの富山の景色もあり、
隅々までじっくりご覧になっている方が多かったです。
藤城さんの目を通すと富山はこんな風に見えるんだと
遊び心あふれる富山の景色を見ながらニヤニヤしちゃいました。
ほんっと元気出ました!
★「藤城清治 光よろこびメルヘン展」の詳細は コチラ
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さて。
藤城さんの作品を見て、アートには人の心を動かす力がある!
ということを実感した直後、
まさにアートに魅せられた人たちの物語を読みました。
短い物語でしたが、熱く素敵な物語で、涙。
今回ご紹介するのは、
『デトロイト美術館の奇跡/原田マハ(新潮社)』
『楽園のカンヴァス』、『暗幕のゲルニカ』
などのアート小説でおなじみ、原田マハさんの新作です。
今回は、アメリカのデトロイト美術館で本当に起こった
実話がベースになっています。
デトロイト美術館は、
ゴッホ、セザンヌ、ルノワールといった
世界屈指のコレクションを誇る美術館で
1885年に創立されました。
ところが、2013年、市の財政難から存続の危機にさらされます。
というのも、デトロイト美術館は、市立美術館だったのです。
美術品はお金になる!ということで、
市が所蔵する美術品を売却し
市の財源にするべきだという声が上がります。
市民の暮らしを守ることももちろん重要だけど、
コレクションだって手放すべきでは無い。
どちらを選ぶのが正しい選択なのか?
***
この作品には、デトロイト美術館を愛する様々な人が出てきます。
そのうちの1人、自動車工場で長年働いてきたフレッドは、
亡き妻のジェシカと何度も美術館を訪れました。
ジェシカはデトロイト美術館が大好きで、
アートを「友だち」、美術館をあたしの「友だちの家」
と親しみを込めて呼んでいました。
フレッドは、ジェシカ亡き後も一人で「友だちの家」に足を運び、
いちばん気の合う友だち『マダム・セザンヌ』
と対話して楽しむ日々を送っていました。
ちなみに、『マダム・セザンヌ』は、
ポール・セザンヌが描いたセザンヌの妻、オルタンスの肖像画です。
えーっと、どんな絵かわからない…
という方もご安心ください!
この小説の表紙にも使われているこちらの絵です。
ですから、作品のことをまったく知らなくても問題ありません。
小説の中で、登場人物たちがそれぞれこの絵の感想を述べているのですが、
それを読むのも面白いものです。
皆、愛に満ちていて、読んでいるだけで幸せな気持ちになっています。
本には文字しか書かれていないのだけど、笑顔が見えるのです。
好きなものについて語っている時は、
いま笑っているなあというのがわかります。
様々な感想の中でも特にフレッドの素直な感想がいいんです!
知識だけで語るのではないところが身近で。
そんな一般市民であるフレッドも
美術館が存続の危機にさらされていることを知り・・・。
このお話は実話がベースになっていますので
その後美術館がどうなったのかご存知の方も多いと思います。
でも、そんな方でもきっと最後まで楽しめると思います!
私は、最後の1ページに涙しました。
これぞ、読書の醍醐味!!
『デトロイト美術館の軌跡』は、
約100ページと短い作品ですので、あっという間に読めます。
でも、じっくり読みたい一冊ですが。
なんといってもラストが最高です。
あなたも秋の夜長、アートと読書を一度に楽しんでみては?
***
私はこの小説を読んで、
デトロイト美術館に行ってみたくなったのですが、
なんと今、東京で「デトロイト美術館展」を開催しているのだとか。
わーお!
10月7日から来年1月21日まで上野の森美術館で開催しています。
これは見たい!
しかもしかも、全作品写真撮影がOKなんだとか。
(撮影可能日は決まっているようですが)
わーお!
「デトロイト美術館展」に行く予定の方は、
是非予習がてら行く前にこの本を読んでみてね。
また、本に挟まれているこのしおりが、
割引引換券になるんです!
お得♪
★「デトロイト美術館展」の詳細は コチラ