たそがれどきに見つけたもの
2016年9月28日
今日ご紹介する本は、こちら。
『たそがれどきに見つけたもの/朝倉かすみ(講談社)』
タイトルの「たそがれどき」は、
夕方というより、50歳の頃という意味で使われています。
なんとくなく50歳っぽいというイメージではなく、
ちゃんとした理由があります。
人生80年を一日24時間で割ると
50歳は午後4時から5時の間になるそうです。
まさに、たそがれどきです。
でも、夏の4時はまだ明るいですよね。
4時以降暗くなるのは秋以降です。
人生を80年とし、それを四季の4で割ると
20歳までは「春」
40歳までは「夏」
60歳までは「秋」
それより先は「冬」ということになります。
つまり、50歳は秋の夕方ということになります。
ちなみに、38歳の私は夏の終わりの昼過ぎ。
残暑厳しい午後かあ。
たしかにわからなくもないかもな。
あなたはどうですか?
どの季節の何時ごろになりますか?
***
さて、話を本に戻しましょう。
この本『たそがれどきに見つけたもの』は、
まさに、人生のたそがれどきを迎えた人々が主人公の短編集です。
6編のお話が収録されているのですが、
主人公は42歳〜56歳の男女です。
既婚者もいれば未婚もいます。
本の帯にはこうあります。
「気付いたら、けっこう“いいとし”になっちゃってたんだ」
と。
子どものころは、大人は何でもできると思っていませんでしたか?
大人は何でも知っていて、何かあってもじたばたしないと。
でも、大人になった今は、はっきりとわかります。
そんなことはないと。
何歳になってもじたばたするし、
不安にもなるし、涙も流します。
甘えたり、いたずらもして…
子どもと変わらないですね。
体が老いていくスピードに、心が追い付いていないのかもなあ。
この本にもそんな大人たちが出てきます。
一見ちゃんとした大人でも、実はどうしようもなく幼かったりします。
例えば…
フェイスブックで久しぶりに会った友人の投稿を見て
「あれ、こんなキャラだったかしら?」と違和感を感じたり、
パート先の若い男子が自分に気があるんじゃないかと思ったり、
同僚に過去の話を大げさに語ってみたり、
家族にも内緒でローカルタレントの追っかけをしたりしています。
どうですか?
自分とよく似た人、あるいは周りの人で似たような人はいませんか?
本を読みながら、正直、これはちょっといたいでしょ…
と思うような登場人物もいるのですが、
でも、どこか他人事とは思えません。
あんなこと言わなきゃよかった、
どうしてあちらを選ばなかったんだろう、
という過去の後悔は、きっと誰もが持っていると思います。
思い出すたび、心がちくっとするような、ね。
でも、その後悔は人知れず心の奥に眠らせている、
という方も多いのではないかしら。
それが時々思い出されて、罪悪感でいっぱいになって、
誰にも届かない「ごめんなさい」を心の中で言ってみたり、
逆に人生すべてが嫌になってみたりすることもあるかもしれません。
この本に出てくる登場人物も一見ちゃんとした大人たちです。
でも、実は弱かったりずるかったりします。
『たそがれどきに見つけたもの』は、
そんなじたばたしている大人たちの心の中が綴られた物語です。
9月も後半。もうすっかり秋ですね。
秋の夜長は人生の秋を迎えた大人たちの物語を
毎晩一話ずつ読み進めてみてはいかがでしょう?
同世代の方は共感し、
それより若い方も色々気づかされることがあるのではないかしら?