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アカガミ

2016年6月8日

今、独身の皆さんに質問します。

もし、あなたにふさわしいと判断した人を
国が結婚相手として選んでくれるお見合いシステムがあったら
利用してみたいと思いますか?

ちなみに、国が選んでくれた相手と
とりあえず暮らしてみて嫌だったらチェンジすることもできます。

***

今日ご紹介する本は、そんなお見合いシステムが設立された2030年の物語、

窪美澄 (くぼ・みすみ)さんの『アカガミ(河出書房新社)』です。

アカガミと言うと、第二次世界大戦中の日本の召集令状を
頭に思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれませんが、
この作品のアカガミは、国が立ち上げたお見合い制度のことです。

14年後、2030年の日本では、若者は恋愛も結婚ものぞんでいません。
恋愛に対して拒否反応を示すほどです。
恋愛どころか他者に対しての興味がないのです。

これではまずいと国が立ち上げたのが、
「アカガミ」というお見合い制度です。

主人公の25歳の女性ミツキも恋愛をしたことがありません。

彼女は、ある年上女性から「恋をしなさい」と
アカガミへ応募することをすすめられ、志願します。

アカガミに登録したら、まずは教習所に通います。

と言っても、車の教習所ではないですよー。(笑)

教習所では、昔の映画やドラマなどを題材に
恋愛や結婚、家族について学びます。

なんてったって、この時代の若者たちは恋愛をしたことがないんですから。

そして、ついに国が選んだパートナーと暮らすことになるのですが、
ミツキは、これまで恋愛どころか異性と話すことすらなかったため
なかなかパートナーとの距離を縮めることができません。

そんな彼女が初めて恋をします。

まるでロボットのようだった彼女が
恋をして人間らしい感情を持つようになり、
アカガミに志願するまでは考えもしなかった
結婚や子どもを持つといった未来についても考えるようになります。

無機質なモノクロの物語に色がついていくように
物語のタッチが変わっていき、物語に勢いが出てきます。

と同時に気になることも出てきます。
この物語はどこに向かっているんだろうと。

恋を知ってよかったね!で終わるのかと思いきや、
残りのページはまだまだある…。

果たして、恋を知った彼女には、どんな未来が待っているのでしょうか。

***

終わりが近づくにつれ、ページをめくるスピードがどんどん増していきました。

そして最後…

わーお。
そうきたか!

気になる方は、ぜひ『アカガミ』を読んでみてね。

***

『アカガミ』で描かれるのは、14年後の日本です。

フィクションだけど、不気味なほど現実味を帯びていて、
まるで予言のようだわと思いました。

そして2016年現在、すでにその気配は漂い始めているようにも感じます。

興味があるのは自分だけという自己愛の強い人や
他者に興味が無いわけではないけれど、ひとりのほうが楽という人が
増えているように、私には感じられます。

このままそういった人たちが増えていくと、
まさに他者に興味を持てない人ばかりの『アカガミ』の世界になってしまいます。 

そんな色の無い世界はこわすぎるよ、やはり。

yukikotajima 10:54 am