海の見える理髪店
2016年5月25日
今日ご紹介する本は、「家族」の日々が描かれる短編集、
荻原浩(おぎわら・ひろし)さんの新作
『海の見える理髪店/(集英社)』
です。
様々な家族のお話が6編収録されています。
家族の物語というと、どんな印象を持ちますか?
いい人がたくさん出てくるあたたかな物語
を想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、
実際の家族はというと、100%問題の無い家族なんてないですよね。
どの家族にもきっと何かしらあるのでは?
こどもが小さい頃は家族全員仲良しってこともあるかもしれないけれど、
こどもが成長するにつれ、その関係性が変わっていくこともあります。
あなたの場合はいかがですか?
家族って近いだけに甘えが出てしまいがちなんですよね。
他人には優しく接することはできても、
家族にはわがままやひどいことも平気で言えたりしませんか。
家でまで気をつかえないよ!と思うかもしれませんが、
家族だって人間です。心があります。こどもは親のモノではありません。
そんなのわかってるよ!(怒)と思うかもしれないけれど、
今、イラッときた方は、わかっていないのだと思います。
すみません。よりイラッときましたよね。
でも、大切なことです!
奥さまをこき使ってふんぞり返っているご主人、
娘に自分の考えを押し付けているお母さん、
そんなことをしていたら、いつか離れちゃいますよー!
家族だからこそ、思いやりが大切だと思うのです。
「ありがとう」と伝えられるうちに伝えないと、きっと後悔します。
『海の見える理髪店』には、素直になれない家族がたくさん登場します。
たとえば・・・
・自分の考えが絶対だという母に反発して家を出た娘が
弟から一度母に会ってほしいと言われ16年ぶりに帰省したお話
・仕事ばかりの夫と口うるさい姑に嫌気がさし実家に帰った奥さまのお話
・両親が離婚し母の親戚の家に引っ越してきた女の子が家出をするお話
・15歳で亡くなった娘のもとに成人式のカタログが届き、ある決意をした両親の物語
などが収録されています。
どのお話も終わり方が素敵なのです。そういうことか!と匂わせる感じで。
私は、この本を読んで、あらためて自分の家族について考えました。
しかも、文句じゃなくていいところを思い出そうと。
そうしているうちに、優しい気持ちになっていました。
こんな気持ちになれたのは、この本のおかげです。
実は今、家族とうまくいっていない、という方は、
試しにこの本を読んでみてはいかがでしょう。
何かしらのヒントをもらえるかもしれませんよ。
ちなみに私がこの作品の中で好きなのは、
表題作の『海の見える理髪店』です。
海辺の理髪店に髪を切りに来た若い男性と
お店のご主人のやりとりが描かれいるのですが、
大きな鏡にうつる青空や海、手入れの行き届いた店内などの描写が美しくて
まるで私自身が髪を切ってもらっているような錯覚におちいったほどでした。
今日ご紹介した荻原浩さんの短編集
『海の見える理髪店』は、丁寧に読み進めたい一冊です。
仕事終わりにちょっとカフェにでも寄り道して
一話読んでから帰宅したら、家族に優しくなれるかも。