当確師
2016年3月9日
突然ですが、質問です。
「選挙」という言葉を聞いた時、一番にどんな言葉が頭に浮かびますか?
「めんどくさい」
「自分には関係ない」
「うるさい」
という否定的な印象をお持ちの方もいれば
「AKB総選挙」
や
「18歳」
という方もいらっしゃるかもしれません。
今年から選挙権年齢が18歳以上になりましたものね。
いずれにしても、選挙に関わる人以外は
それほど関心が無いのではないでしょうか。
だからといって、そのままでいいわけはありません。
私たち一人一人がもっと真剣に向き合う必要があります。
といっても、何をすればいいのかわからない…。
そんな方は「知る」ことから始めてみるのはいかがでしょう?
わかりやすいところでは、選挙がテーマの小説を読む、というのもいいと思います。
***
今日ご紹介する小説は、選挙の裏側が描かれた作品です。
『当確師/真山仁(まやま・じん)(中央公論新社)』
真山さんはテレビドラマが話題となった『ハゲタカ』でおなじみです。
今回も強烈なキャラクターが登場します。それは、当確師。
当確師とは、選挙コンサルタントのことです。
請け負った選挙の当選確率は99%以上であることから『当確師』を名乗っています。
主人公は、当確師の聖達磨(ひじりたつま)。
選挙のプロです。
勝てそうにない選挙でも必ず当選させるのが彼のプレイスタイルです。
仕事はできます。でも、とても傲慢!
物語の中心となるのは、ある政令指定都市の市長選挙です。
現職市長を打倒する候補を勝たせるのが今回の彼の仕事です。
3期目を伺う現職の市長は、破綻直前だった市を立て直し、全国的に名を馳せています。
これだけの説明ですと、いい市長のようですが、
お金や権力、プロパガンダなどあらゆる手段を使って今の地位を築いています。
だから政治は信用できないんだよ!と思わずにはいられない、
わかりやすい黒さをまとっています。
そんな現職に立ち向かうべく擁立されたのは、ある意外な人物でした。
さて、この戦い、勝つのはどちらか?
***
選挙の裏側は、嫉妬や裏切りが入り混じってドッロドロです。
当確師である彼は、そんな中で人の心をうまく動かしていきます。
ずるいことはしないけれど、ギリギリを攻めます。
でも、そんな彼も仕事だから勝たせるのではなく、
「選挙で、この国を浄化したい」とこっそり心の中で思っています。
嫌な奴だけど憎めないのは、本心がとってもピュアだからかもしれませんね。
この作品を読んでいると、選挙の裏側ってコワイワー!!と思うけれど、
どんな仕事も変わらないようにも思います。
表面上、笑顔でやりとりしていたとしても、その腹の内までは見えませんからねー。
この作品の中に
その人が去った時に、それまで笑顔だった人たちがどこまで仏頂面になるかで、
その人が本当に愛されているのか嫌われているのかがわかる、
というような文章がありまして、ドキリとしました。
確かに、ちょっとしたスキにその人の本性って見えるものですものね。
小説『当確師』は、
選挙の裏側をのぞけるだけでなく、
「人間」の弱さや強さにも触れることができます。
また、途中まで市長の対立候補がわからないのも楽しみの一つです。
刺激ありまくりの一冊でした。
面白かった!
この作品も『ハゲタカ』同様映像化されそうだなあ。してほしいなあ。
私のイメージでは、主人公の当確師は渡部 篤郎さんです。
そんな風に想像しながら読むのも楽しいかも。