王とサーカス
2015年9月23日
今日ご紹介するのは、米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)さんの新作
『王とサーカス(東京創元社)』
です。
米澤さんというと、去年『満願』という短編集が話題になりました。
『満願』は、山本周五郎賞を受賞したほか、
年末ミステリーランキングで3冠に輝いたり、
直木賞候補にもなったりしました。
ラジオ&私のブログでもご紹介しています。
・『満願』の私の感想は コチラ
そんな米澤さんの最新作が『王とサーカス』という長編小説です。
舞台は今から14年前、2001年のネパール。
主人公は、28歳のフリーのジャーナリスト、太刀洗万智(たちあらい・まち)。
彼女は知人の雑誌編集者から依頼された海外旅行特集の事前取材のために
ネパールに一人で向かいます。
ところが、現地に到着した直後に、
王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が起きてしまいます。
そこで彼女は雑誌の旅行特集の取材ではなく、
急きょ、ジャーナリストとして事件の取材を始めます。
現地でできた知り合いのつてなどを利用しながら
事件の核心にせまっていく彼女でしたが、
そんな中で彼女がかかわったある男性が殺されます。
なぜ彼は殺されたのか?
彼女はどんな真実に辿り着くのか?
***
この続きは、ぜひ本を読んでみてください。
今日はシルバーウィークの最終日ですが、
ふりかえってみると、どこにも行かずだらだら過ごしてしまったな、
という方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方は、早速、本屋さんに行って、この本を買って読んでみては?
本のページをめくった瞬間から、本の世界に入れます。
本を読んでいるというより、
主人公の彼女と一緒にネパールを歩いている気分になれます。
ネパールの首都カトマンズのほこりっぽさや熱気、香りが
体中にまとわりつくほどに感じられます。
私は、本の1ページ目を読んだ瞬間、
たとえでなく、本当に本の世界に体そのものが引き込まれるような、
すうっと物語の中に入っていく、あの瞬間が大好きです。
これからどんな世界に連れて行ってもらえるのだろうというワクワクをかみしめ、
はやる気持ちを抑えながら、じっくり文字を追っていく感覚こそ、
読書のおもしろさの一つだと思います。
この作品もまさに、その幸せ気分を味わえました。
でも、内容はお気楽旅物語ではありません。
なんといってもいきなり王族殺害事件が起きてしまいますから!
主人公の彼女が、大きな事件を取材する中で、
自分自身の仕事とも向き合っていきます。
彼女が取材で現地の大人、子どもたちの本音を聞き、
彼女は深く考えるのですが、彼女同様、私自身も考えさせられました。
どう考えさせられたのかの具体的な感想は、
ネタバレになってしまいますので、あえて書きません。
気になる方は、是非本を読んで、ご自身でも色々考えてみて下さい。
***
そうそう!
冬には、この本の主人公による短編集が発売される予定だそうです。
こちらも楽しみ〜。
また、2004年に発売された『さよなら妖精』という作品にも
大刀洗さんが登場しているのだとか。
ただ、『王とサーカス』とつながりはないようですが。
もし気になるようでしたら、合わせて読んでみては?