金魚姫
2015年9月30日
今、お家で金魚を飼っている方はいらっしゃいますか?
その金魚に毎日話しかけていますか?
もしかたら、その金魚は、あなたの話を全部聞いているかもしれませんよ…。
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今日ご紹介する本は、荻原浩(おぎわら・ひろし)さんの
『金魚姫(角川書店)』
です。
7月31日に発売されましたので、
すでにお読みの方もいらっしゃるかもしれません。
お読みになった方は是非grace宛に感想をお寄せくださいね。
この本は、今日のgrace内コーナーユキコレ(13:45頃オンエアー)でご紹介します!
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簡単にどんな話かご紹介しましょう。
本の表紙は、水の中にいるたくさんの金魚と目を閉じた一人の女性が描かれたイラストです。
そのイラストと「金魚姫」というタイトルから、
なんとなくこの女性が金魚姫なのかな?と想像できます。
人魚姫のような昔々の物語、
それこそ、金魚だから日本か中国の物語かしら?と私は思ったのですが、
早速本のページをめくってみれば、現代のお話でした。
暑い夏の日曜日の夕方、
一人の青年が明日会社に行きたくないと思いながら、
ベッドでだらだら過ごしているところから始まります。
その後、すぐに全く異なる物語が現れます。
赤い衣を着た女性が主人公の昔々の中国の物語。
それも、とても短いお話です。
話はすぐに現代へ。
主人公の彼はブラック企業に勤め、彼女とも別れ、何もやる気が起きないものの、
夕飯を調達するために近所の夏祭へ行きます。
そこで、たまたま金魚すくいをして、目に留まった金魚を持ち帰ったところ、
深夜に部屋から音が聞こえてきたのです・・・。
ひた ひた ひた
起き上がって部屋を見渡せば、部屋中びしょびしょ。
なんと部屋にはびしょ濡れの妖しい美女の姿が。
そうか、幻覚が見えるほどに僕の心は病んでいるのか…
と思ったものの、どうやら幻覚ではないらしい。
ここから金魚の化身との同居生活が始まります。
そして、彼は、彼女が自分がなぜここにいるのかわかっていないものの
何か理由があって来たらしいということと
古めかしい言葉を使い、現代の日本のことはよくわかっていないということ
に気付きます。
そんな二人の同居生活が描かれているのですが、
彼女のお茶目さに思わず笑いが漏れてしまいます。
彼女はテレビから流れる言葉を聞きながら、
今風の言葉を覚えるのですが、その言葉の使い方が微妙に違うのです。
現代の普通の女性に憧れている彼女は、
CMやドラマに登場する女優の台詞やしぐさを真似したがります。
それがお茶目でかわいくもあり、面白くもあります。
そんな不思議な彼女と生活する中で彼自身にも変化が生じます。
彼に起こった変化とは?
そもそも彼女はなぜやってきたのか?
この続きは、ぜひ本を読んでみて下さい。
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『金魚姫』は全く想像もつかない奇想天外な物語でした。
本の表紙を見た時は華やかな印象を、
最初のページを読んだ瞬間は夏のじとっとした嫌な暑さを感じ、
昔の中国のお話で一気に空気感が重厚なものへと変わり、
かと思ったら、お茶目な女性が登場し…。
金魚の化身なんていうと漫画か?
なんて思ってしまいそうだけれど、とてもリアルなんですよ。
すうっと物語に入っていける感じで。
私、この本を読んだ直後に寝たのですが、
夢の中に本の世界が現れて、目覚めた時になんとも不思議な感覚を味わいました。
本当に物語の中に入ってしまったのかしら。
とても読みやすい物語です。
秋の夜長、あなたも金魚姫に会いにいってみませんか?
そうそう。読書のお供にえびせんをお忘れなく。
金魚姫はえびせんが大好物なのです。(笑)