若冲
2015年7月8日
来週の木曜日、16日に「第153回芥川賞・直木賞」が発表されます。
すでに候補12作が発表されています。
芥川賞には、ラジオでもご紹介した
お笑い芸人のピース・又吉直樹さんの『火花』がノミネートされ、
話題になっています。
今日のユキコレ(grace内コーナー13:45頃〜オンエアー)でご紹介するのは、
直木賞にノミネートされている
澤田瞳子(さわだ・とうこ)さん の 『若冲(じゃくちゅう)』 です。
文藝春秋から今年4月に発売されました。
若冲は、江戸時代に京都で活躍した絵師です。
今年、生誕300年ということで、
全国各地で特別展示が行われ、
本屋さんには、若冲関係の本や雑誌、ムックなどが並んでいます。
なんといっても若冲の絵は、目立ちますからね。
本屋さんでも若冲の絵が表紙の本はすぐに見つけられます。
赤いとさかが鮮やかな鶏の絵は、若冲の名前を知らなくても
一度を見たことがあるのでは?
もちろん、鶏以外にもたくさんの絵があります。
小説『若冲』には、そんな若冲の絵がどのようにして誕生したのかが、
物語形式で描かれています。
***
簡単にストーリーをご紹介しましょう。
若冲は、京都の問屋の長男として生まれたものの、
家督を弟に譲り、自身は絵の道へと進みます。
家にひきこもり、絵だけを描く日々で、
芸事もせず、お酒も飲まず、生涯独身だったと言われているそうです。
でも、この小説には若冲の奥さまが登場します。
しかも、若いころに自ら命を絶ってしまいます。
自分のせいで、妻が亡くなったと思った若冲は、ますます絵に没頭していきます。
そして、彼の絵は注目を浴びるようになり、依頼も増えます。
そんな絵師として活躍する彼の前に、
若冲の贋作(がんさく=にせのさくひん)を描く絵師、
市川君圭(くんけい)があらわれます。
君圭の作品を見た若冲は何を感じたのでしょうか。
ちなみに、若冲と同じ時代に京都で活躍した絵師はたくさんいまして、
小説にも登場します。
たとえば、池大雅(いけのたいが)、
円山応挙(まるやま・おうきょ)、
与謝蕪村(よさ・ぶそん)など。
若冲は池大雅と仲が良かったようで、
小説にもたくさんのエピソードが出てきます。
人嫌いの若冲に対し、池大雅は人懐っこく、
若冲の描写は基本的に重苦しい空気感なのですが、
池大雅の登場により物語が軽やかに動き出します。
澤田さんの文章は、
まるで自分も江戸時代の京都にタイムスリップしたかのような、
五感を刺激するもので、
階段をのぼる様子ひとつをとっても、とても丁寧です。
まさに、物語の世界に引き込まれる作品でした。
ただ、若冲のことをよく知る人の中には、
「若冲が結婚していただって?」と思う方もいるかもしれませんが、
フィクションとノンフィクションが入り混じった
若冲の物語として読めば、きっと楽しんでいただけると思います。
この本を読んだ後は、若冲の絵を見たくなります。
いや、私は本を読んでいる時すでに見たくなったし、見たな。
ちなみに、本の帯には、小説に登場した若冲の作品のタイトルが紹介されています。
ちょうと今年は若冲生誕300年ということで、
本屋さんに行けば、たくさんの若冲関連の本や図録などがあります。
お手元に若冲の絵を置いて、
絵を見ながら本を読めばより深く味わっていただけると思います。
来週発表の直木賞を受賞すれば、さらに「若冲熱」が高まりそうですね!
取ってほしいなあ。