仏果を得ず
2014年10月22日
今日のユキコレ(13時45分頃〜オンエアー)でご紹介するのは、
『文楽』
の世界が描かれた小説です。
文楽、ご存知ですか?
人形浄瑠璃・文楽は、
大夫(たゆう)、三味線、人形つかいによる、
大阪の人形浄瑠璃芝居のことです。
日本の誇る伝統芸能であり、ユネスコ無形文化遺産でもあります。
文楽の小説を書かれたのは、
人気作家の三浦しをんさん。
今回のタイトルは 『仏果を得ず』 です。
三浦さんを言いますと、直木賞作家であり、
出す作品が次々に映像化されています。
最近は、まほろ駅前シリーズの
『まほろ駅前狂騒曲』が映画化され現在公開中です。
他にも、林業がテーマの『神去なあなあ日常』、
箱根駅伝をテーマにした『風が強く吹いている』、
辞書を作る人たちを描いた『舟を編む』など、
毎回、がらりと扱うテーマが変わります。
今回は、人形浄瑠璃・文楽の語り手である大夫(たゆう)が主人公の
『仏果を得ず』
という作品です。
健(たける)君は、高校の修学旅行で文楽を観劇し、
大夫のエネルギーに圧倒され、虜に。
そして、文楽の世界へと入ります。
文楽のことがわからない方には、
難しい話のように感じられるかもしれませんが、
全くそんなことはありません。
なぜって、登場人物たちが皆個性派で楽しいからです!
人間国宝である健の師匠は、普段は豪快なおじいちゃんですし、
健と組む三味線の兎一(といち)兄さんは、
実力はあるものの、ちょっと変わっている方です。
そして主人公の健はというと、
文楽が大好きなしっかりした青年・・・かと思いきや、
ある女性を好きになってからは、
芸にまで影響が出てしまうほど心をかき乱されてしまう始末。
でも、その恋が芸にもプラスに作用していくのですが。
男女の複雑な恋模様を描くことの多い文楽で、
健は演じる役の気持ち理解できずにいます。
でも、自ら恋をすることで、役の気持ちがわかるようになっていきます。
そのように少しずつ成長していく健ですが、
一方の恋愛の方はうまくいくのか…。
という、若手大夫の成長を描く物語であり、恋愛小説でもあります。
私は、健の告白シーンが大好きです。
こんな風に告白されたいし、してみたい。(笑)
どんな告白シーンなのか気になる方はぜひ本を読んでみてね。
***
私は、この本を読んで、
文楽って、こんなにいきいきとしているものなのか!
と印象が大きく変わりました。
そして、本を読んだ後、早速文楽の映像を見てみました。
きっとこの本を読む前に同じ映像を見たら、
どう見ていいのか、どう聞けばいいのかわからなかったと思います。
でも、本を読んだ後は、人形が生身の人間のように見えてきました。
なんて色っぽい。。。
人形だから表情は変わらないはずなのに、変わっているように見える、
と興奮交じりで映像を凝視しました。
まだ生で見たことがないので、いつか見てみたいなあ。
***
それにしても、三浦しをんさんはすごい人です。
三浦さんは、いつも世界をぐっと広げてくれます。
それもわくわく楽しく。
初めて三浦さんのすごさを実感したのは、
箱根駅伝を描いた『風が強く吹いている』でした。
ただ、駅伝の解説を読むだけでは、なかなか頭に入ってこないと思うのだけど、
三浦さんの小説を読むと、まるで私自身も当事者のような気分になっていきます。
今回もそう。
文楽の難しい本を読んでもきっと睡魔が襲ってくるだけだと思うの。
でも、三浦さんの描く世界には、ぐいぐい引き込まれていきます。
愉快な登場人物たちの軽快なかけあいといった、ゆるさがありつつも、
仕事には真剣に向き合っている、そのメリハリがよいのです。
ずっと真面目も疲れちゃうし、
ずっとふざけっぱなしというのも飽きてしまいます。
三浦さんは、そのさじ加減が絶妙なのです。
秋の夜長、文楽の世界を、あなたもまずは小説で堪能してみては?
それに、こちらの本は文庫化されているのでお求めやすいですし!
さらにこの本は、
大阪の本屋さんと問屋さんが力を合せて
ほんまに読んで欲しい1冊を選ぶ
『Osaka Book One Project 』
の2014年の選定作になったそうです。
大阪の本読みのプロたちもすすめる
三浦しをんさんの『仏果を得ず』。
あなたも是非読んでみてください♪