『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』
2014年8月13日
毎月第2、第4、第5水曜の13時45分ごろ〜
grace内で放送している「ユキコレ」では、
様々な本をご紹介していますが、
その本の紙はどこで造られているのかご存知でしょうか。
日本の出版用紙の約4割が日本製紙で造られているのだそうです。
その日本製紙の基幹工場となっているのが、
宮城県石巻市にある石巻工場で、
1日あたり約2500トンもの紙が生産されています。
この工場で造られた作品を挙げてみましょう。
・百田尚樹『永遠のゼロ(講談社文庫)』
・村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(文藝春秋)』、
・池井戸潤『ロスジェネの逆襲(ダイヤモンド社)』
・『ONE PIECE(集英社)』
など、文庫から単行本、コミックまで様々な本の紙が作られています。
日本製紙石巻工場は、日本の出版業界にとっては、
無くてはならない存在です。
しかし、2011年3月11日。石巻工場は東日本大震災で被災。
機能は全て停止してしまいました。
***
今日ご紹介する本は、工場が復興するまでの様子が綴られた
佐々涼子(ささ・りょうこ)さんの
『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている
再生・日本製紙石巻工場 』
です。
佐々さんは、『エンジェルフライト』という作品で、
2012年に開高健(かいこう・たけし)ノンフィクション賞を受賞し、
注目を浴びました。
***
今回の『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』は、
工場が被災し再生されるまでが綴られています。
製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」
という出版社との約束があります。
だから、工場を復旧しなければいけない。
しかし、状況は絶望的で、従業員でさえ復旧は無理だと思ったほどでした。
にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言します。
この本には、復興までの過酷な日々がつづられています。
再生までの道のりは本当に大変なのですが、
あたたかなエピソードもありました。
従業員たちは、被災したマシンに対して、
まるで生きている人間のように接するのです。
マシンの方もまるで心があるかのような感じで、
そのやりとりが感動的でした。
***
その一方で、辛い震災の様子なども鮮明に描かれています。
震災時は美談などが多く報道されていましたが、
実際は悲しい出来事も多かったようです。
たとえば、バットを手に持ちながら、
お店のガラスを割って商品を盗むといった行為をする人や、
間違った噂に振り回されてしまった人も少なくなかったのだとか。
本を読みながら何度も心がギュッと締め付けられました。
***
また、この本では、本の紙のことも色々と学べます。
たとえば、
・なぜ文庫の紙は薄いのに破れにくいのか?
・コミックはどうして分厚いのか?
・教科書の紙の秘密
などを知ることができます。
答えが気になる方は、是非本を読んでみてね!
***
いいなあと思ったのが、
「読書では、ページをめくる指先が物語にリズムを与える。
人は無意識のうちに指先でも読書を味わっている」
という表現。
その気持ち、よくわかるなあ。
ただ、紙の上の文字を目で追っているだけではなく、
紙のにおいや色、触り心地なども含めて読書を楽しんでいるんですよね。
この本を読んだ後は、今まで以上に「本」のことが好きになりました。
読んでよかったです。とてもいい本でした。
1人でも多くの人に読んでいただきたい1冊です。
というか、読んで〜!!(笑)