太陽の棘
2014年6月25日
今日もさわやかな青空が広がっていますが、
青い空を見ながら、沖縄に行きたいなーと思ってしまった田島です。
沖縄というとどんなイメージをお持ちでしょうか?
青い空に、青い海。
人も陽気でのんびりしていて癒される場所。
というイメージをお持ちの方が多いかな?
でも、その一方で、悲しい歴史のある場所でもあります。
沖縄ではおとといの23日、
「慰霊の日」を迎え、戦没者追悼式が行われました。
沖縄戦の犠牲者は20万人以上、
なんと県民の4人に1人が命を落としたそうです。
そして、戦後69年経った今も
沖縄にはアメリカ軍基地があり、
様々な問題が起きています。
***
今日ご紹介する本は、戦後の沖縄が舞台の物語、
原田マハさんの『太陽の棘(文藝春秋)』
です。
原田さんと言いますと、これまで
『楽園のカンヴァス』や『ジヴェルニーの食卓』など
「アート」を扱った作品をお書きになっています。
このブログやラジオでも紹介してきました。
今回の『太陽の棘』も美術小説です。
今回は、原田さんが、
「書かなければならなかった」とおっしゃる、
ある史実がベースとなっています。
主人公は、アメリカ人の若き精神科医、エド。
戦争が終わった直後の沖縄へ軍医として派遣されます。
そんな彼が休みの日に沖縄をドライブ中、ある場所へとたどり着きます。
そこは「ニシムイ美術村」呼ばれる若き画家たちが創作活動をする場所でした。
もともと絵を見ることも描くことも好きだったエドは、
すぐにそこが気に入ります。
そして、休みの度にニシムイ美術村へ行き、
絵を買ったり一緒に絵を描いたりしながら、
画家たちと「アート」を通して交流を深めていきます。
戦後の沖縄では、アメリカ人というだけで嫌悪感をいだく人が多かった中、
画家たちはエドをはじめ軍医たちを受け入れます。
また、軍医たちも画家たちとの交流を楽しんでいました。
ニシムイ美術村での交流だけを見ていると、
終戦直後であることを忘れてしまいそうになるほど、平和に感じられます。
でも、そんな美しい姿だけが描かれているわけではありません。
辛い現実も描かれます。
戦後の貧しい沖縄の現状や
明るそうに見える沖縄の人の心の闇なども…。
泣きました。何度も。
本当にいい作品でした。
やはり私は原田マハさんの作品が好きです。
原田さんの作品を読んだ後は、人を信じたくなります。
また、読むたび、アートが好きになります。
原田さんが作品で触れた絵を、小説を読んだ後にあらためて見ると、
絵に命が吹き込まれたような感じがするのです。
今回もそうでした。
今回の本の表紙はある男性の顔の絵なのですが、
その男性こそ、沖縄の画家が描いた主人公エドのモデルの男性です。
この物語は「ある史実」を基にしていると紹介しましたが、
主人公のエドも画家たちもモデルがいます。
ぜひ、本を読む時は、本の表紙を外して、
表紙の絵を眺めながら本を読んでみてください。
「絵を眺めながら本を読む」ということが、
私の中では原田さんの作品を読む時の読書スタイルに定着しつつあります。
『太陽の棘』
またもやとても素敵な作品に出合えました。
また、いい作品に出合てよかったということだけでなく、
知らなかった「沖縄」の歴史について学べたこともよかったです。
多くの皆さんに読んでいただきたい1冊です。
きっと大切なことに気付けると思います。
★ 『太陽の棘』の特設サイトは コチラ