黒部の山賊
2014年5月14日
山で「オーイ」という声がしたら返事をしてはいけないんですって。
返事をするなら「ヤッホー」と言えばいいそうです。
もし「オーイ」と言ってしまうとどうなるのかというと、
オーイ オーイと呼び交わしながら山の中で行方不明になってしまうのだとか。
なぜなら、山で「オーイ」というのは、バケモノだからなんだそうです。
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今日ご紹介するのは、
1964年に発売され、最近は、山小屋だけで購入できた幻の名作
「黒部の山賊」の最新版です。
このほど『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』
として、山と渓谷社から発売されました。
著者は、黒部原流域のフロンティアとして、山小屋の経営に
携わってきた伊藤正一(いとう・しょういち)さんです。
今までこの本は、山小屋だけでしか買えなかったそうなのですが、
今回、新たに発売されたことで、書店でも購入できるようになりました。
黒部ダムが建設される前の戦後、昭和20年代の頃のお話です。
当時、山に山賊がいるという噂があり、
著者の伊藤さんは、山賊を退治するために山に入ります。
ところが、ひょんな縁から一緒に山で生活をしていくことになります。
一緒に暮らす中で、
山賊から、山での生活の知恵を教えてもらったり、
不思議な山のバケモノたちの話を聞いたり、
実際に自分で体験したりしていきます。
冒頭の「オーイ」のエピソードも山賊から聞いた話です。
その他にも、
「人を呼ぶ白骨」
「巧みな狸の擬音」
「カッパの正体」
といった、まるでつくりものの昔話のような本当にあったエピソードが、
いきいきと描かれています。
とくに山賊たちから聞いたお話は、どのお話も引き込まれてしまいまいました。
中でも埋蔵金話には身を乗り出して聴いてしまいました。(笑)
本当は、本を読んでいるから「聴く」という表現は間違っているのだけれど、
でも、感覚としては「聴いている」気分でした。
あなたも山賊たちの昔話に耳を傾けてみませんか?