帰ってきたヒトラー
2014年3月26日
2冊合わせて500ページ以上あるにもかかわらず、
一気に読んでしまった本があります。
しかも思いっきり笑いながら。
この本を電車やカフェの中で読んだら、
きっと怪しい人になってしまいそうです。
だって絶対にずっとニヤニヤしているもの。
無表情で読むことなんてできません。
しかもカフェで読もうもんなら、かなり迷惑な人になりそうです。
本に夢中になりすぎて、長い時間席を独占してしまうでしょうし、
熱々のコーヒーはアイスコーヒーになってしまうことでしょう。
ただし。
この本は笑いだけでは終わりません。
こわさやきわどさもあります。
その本とはこちら。
『帰ってきたヒトラー 上・下
/ティムール・ヴェルメシュ/訳:森内薫(河出書房新社)』
ヒトラーの小説です。
ヒトラーの小説が笑えるってどういうこと?
と思った方もいらっしゃるかもしれません。
また、田島は何を考えているんだ??とご立腹の方も・・・
でも、カッカしないでください。
あくまでも小説、フィクションですから。
それにこの本は、いま世界的ベストセラーとなっているんです。
ドイツでは130万部を突破し、世界38各国で翻訳されました。
なんと早くも映画化も決定したのだとか。
映画もテンポのいい笑い&皮肉たっぷりの作品になって、
きっと話題になることは間違いないと思います。
そんなベストセラーがついに日本に上陸しました。
・・・
世界的に話題となっている『帰ってきたヒトラー』とは、どんな作品なのか?
タイトルの通りです。
ヒトラーが現代に帰ってきてしまうお話です。
1945年にベルリンで自殺したはずのヒトラーが、
2011年のベルリンで目覚めます。
彼は自殺したことを覚えていません。
軍服のままのヒトラーを見た街の人たちは、
そっくりさんの芸人だと思い込み、
彼の発言はブラックジョークだと思って、笑って受け流します。
会話は全くかみあっていないのだけれども、
奇跡的になぜか成立してしまい、なんとなくうまくいってしまいます。
そして、彼はそっくりさんの芸人として現代のテレビのコメディー番組に出演し、
人気者になっていきます。
・・・
この本では、ヒトラーが悪者ではなく、魅力的な人物として描かれています。
確かにこの本を読んでいると、とても人間的な人に思えてきます。
また、ヒトラーは自分の置かれた状況をちゃんと受け入れていきます。
66年後のドイツがどう変わったのかを客観的に見て、
進化したところ、変わらないところ、ダメになったところを冷静に分析していきます。
またとても前向きです。そして順応力がすばらしい。
インターネットのことをインターネッツと呼びながらも使いこなしていきますし、
ググルなんて言葉も使います。
でも、初めて現代の文化に触れた時の反応には笑わせていただきましたが。
パソコンを見るなり、仕事中テレビを見てはいけないから片付けろ、と言ったり、
すべての店が「www」という親会社に所属していると思ったり、
犬の散歩中の女性が犬の糞を集めることに驚いたり。
独特な解釈が読者の笑いを誘います。
でも、それだけじゃなく、現代の問題点にもするどく突っ込んでいます。
なぜ?と思ったら、必ず調べようとする。
足を運び、自分の目で見て、人から話を聞く。
そんな視点のするどさや巧みな話術によって、ファンがどんどん増えていきます。
そして、彼のことを応援したくなっている私自身がいます。
でも、はたと気づきます。
アハハと笑っているだけでいいのか、と。
本物が蘇るなんてことは絶対にありえないフィクションだからこそ
思いっきり笑って楽しめるのですが、
でも、それだけで終わる作品、
いや、終わらせていい作品ではありませんでした。
この本は、ただのお笑い小説ではなく、皮肉に満ちた風刺小説です。
考えさせられたり、気付かされたりするこのが多い作品でもあります。
さて、あなたはこの本をどう読み、何を感じるでしょうか?
・・・
海外の作品は苦手…という方でもこの本はとても読みやすいので、
ためしに読んでみてください。
ちなみに、ドイツのお話ですが、日本ともかぶるところが多いのも
読みやすい理由の1つかなと思います。
正直言って私も読む前は、読むのに時間がかかりそうだなと思ったのですが、
びっくりするほど夢中になって一気に読んでしまいました。
何か面白く刺激的な作品を求めている方は是非お読みになってみてください。