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想像ラジオ

2014年1月29日

もうすぐ1月も終わります。
あと1か月とちょっとで、東日本大震災から3年です。

以前に比べると震災のことがニュースで扱われることも減ってきました。
いつの間にか日々の生活に追われているうちに
震災のことが頭から離れていってしまった方もいらっしゃるのでは?

では、被災地ではどうなのでしょうか。
福島に住む友人に聞いてみました。

福島のお子さんたちは常に線量計を身につけているそうです。
また、友人が働く南相馬市には若者がいなくなったとも話していました。

友人の周りでは震災の話を口にする人はほとんどいないそうです。

それぞれ辛い思いを抱えていて、ひとりひとり状況も違う。
だから、震災の話はしなくなったと。

よく「福島では・・・」とか「被災地では・・・」と、
ひとくくりにしてしまいがちですが、
全ての人が同じではないのですよね。

友人の話から大切なことに気づかされました。

・・・

震災からまもなく3年。
今一度、震災のことを思い出し、考えてみませんか?

今日のユキコレ(13時45分ごろオンエアー)でご紹介するのは、
去年2013年3月11日に発売された

いとうせいこうさん の 『想像ラジオ(河出書房新社)』 です。

発売からまもなく1年ですので、
お読みになった方もいらっしゃるのでは?

そんな方は是非grace宛に感想をおよせください。

この本は、様々な賞を受賞したり、ノミネートされたりしてきました。

最近では、芥川賞候補になったり、
紀伊國屋書店の書店スタッフがおすすめする
「キノベス!2014」で第1位に選ばれたりしました。

「キノベス!2014」

【1位】 『想像ラジオ』(いとうせいこう、河出書房新社)

【2位】 『さようなら、オレンジ』(岩城けい、筑摩書房)

【3位】 『スタッキング可能』(松田青子、河出書房新社)

 キノベスの結果は コチラ

・・・

『想像ラジオ』は、想像力を使って聞くラジオです。
DJは、東日本大震災の津波で高い杉の枝に引っかかった男性、DJアーク。

このラジオを聞く手段は、想像力のみ。

本を読んでいるというより、
まるで本当にラジオのおしゃべりや曲を聞いているような感覚です。

メッセージを送るリスナーさんや電話中継をされる方もいます。
どこで被災し、今どのような状況なのかがリポートされていきます。

音楽もかかるし、笑うし、リスナーさんからの突っ込みが入るし、
まるで普通のラジオです。

でも、このラジオは、想像力が無ければ聞けません。

つまりは、想像力さえあれば、
もう会ったり話したりすることはかなわない人との会話だってできます。

この本は、どこに気持ちをぶつければいいのかわからない、
そんな方の心をきっと軽くしてくれたはずです。

だから、多くの皆さんに支持されたのだと思います。

私も同じラジオの仕事をする身として、
大切なことに改めて気づかされました。

スタジオでは一人で喋っているけれど、一人じゃない。
みんなつながっている、ということに。

ラジオは、身近でつながりを感じやすいのが、いいところなのですよね。

そもそも通常のラジオも音だけのメディアですから、
「想像」しながら聞くラジオです。

あなたは、ラジオを聞きながら、
今日はどんな映像が目の前に浮かんでいるでしょうか。

・・・

震災からもうすぐ3年です。
今の自分にできることはなんだろう?と思われたなら、
この本を読むこともしてみてはいかがでしょう?

あなたには、声が聞こえましたか?

yukikotajima 11:29 am

恋歌(れんか)

2014年1月20日

読む本を決める基準は人それぞれだとは思いますが、
大きな賞を受賞した作品はとりあえず読んでおこうという方もいらっしゃるのでは?

先週の木曜日16日に、
第150回芥川・直木賞の選考会が開かれ、
芥川賞に小山田浩子さんの『穴』、
直木賞に朝井まかてさんの「『恋歌(れんか)/(講談社)』と
姫野カオルコさんの『昭和の犬(幻冬舎)』が選ばれました。

受賞作の中の『恋歌』は、紀伊國屋書店富山店の橋本さんから
とてもよかったのでぜひ!とすすめられ、すでに先週読んでおりました。
そして、これは選ばれそうだ!と思っていたらやはり選ばれました。

橋本さん、さすがです!

本を紹介するにあたり、ベストタイミングとなりました。

今週のユキコレでご紹介するのは、

朝井まかてさん 『恋歌(れんか)』です。

※ユキコレは、1月22日(水)13時45分頃〜graceの中で放送します。

去年の夏に発売されていますし、
このたび直木賞を受賞されましたので
お読みになった方もいらっしゃるのでは?

そんな方はぜひ grace宛て に感想をお寄せください。

朝井さんは、受賞されたとき、
「まさかまさかまさか」
と「まさか」を3回連続でおっしゃり、話題になりました。
ニコニコの笑顔でピースサインで写真撮影をされている姿も印象的でしたよね。
きっととっても明るくまっすぐな方なのだと思います。

あの朝井さんの笑顔を見ながら、
本の主人公の歌子と雰囲気がかぶりました。
まっすぐでかわいい歌子に。

・・・

『恋歌(れんか)』は幕末の水戸を舞台に描かれた時代小説です。
主人公は、明治の歌人、中島歌子(なかじまうたこ)。樋口一葉の歌の師匠です。

中島歌子は、この時代には珍しく、
身分の違いをこえて恋を成就させました。

江戸の商家の娘である歌子は、天狗党の志士に嫁ぎ、水戸へ下ります。

思いが通じ合い幸せいっぱいの歌子でしたが、
実はこの時、壮絶で過酷な人生の扉を開けてしまったのでした。

水戸藩の内乱の激化にともない、
なんと、歌子は夫と引き離され、自らも投獄されてしまうのです。

いったい歌子の運命は?

というお話です。

このあと歌子がどんな人生を歩んでいったかについては
本を読んで、じっくりと味わってください。

・・・

この本には、今の世の中にこそ必要なことが書かれていました。

人間関係の悪化も国交の悪化も
たったひとつ、お互いがこれさえできれば、
一気に関係は修復すると思います。

人を憎むことは辛いことです。

でも、憎む以外の方法を見つけない限り、
ずっと何も変わらないのだと思います。

とっても単純なことです。

そんなことわかってるよ!と思うかもしれません。

でもね、頭でわかっていると、
心がちゃんと理解するのでは違います。

歌子がどんな人生を送り、最期にどんな決断を下したかを知れば、
きっとあなたの心が反応するはずです。
言葉がすうっと頭を通り抜けるのではなく、
大切なこととして心にとどまると思います。

あなたにもしどうしても許せない人がいるのなら、
その人を憎む時間をこの本を読む時間にあててみてください。

もしかしたら、あなたが欲しかった答えに出合えるかもしれません。

私は、この本に出合えて本当によかったです。

・・・

直木賞を受賞したから、という理由だけでなく、
本当にいい本ですので、ぜひお読みになってみて下さい。

美しい日本語や歌にも出合えますよ。

 講談社による『恋歌』の特集ページは コチラ

yukikotajima 3:53 pm

アズミ・ハルコは行方不明

2014年1月8日

ああ、これ、わかる。
いるいる、こういう人。
確かにそんな感じだわ。

と、いちいち心の中で納得しながら
顔はやらしくニヤつきながら読んだ本があります。

それは、富山出身の山内マリコさんの新作

『アズミ・ハルコは行方不明』

です。

詳しくは、今日のキノコレで紀伊國屋書店富山店の橋本さんにご紹介頂きます。

橋本さんの紹介文は コチラ

山内マリコさんというと、デビュー作『ここは退屈迎えに来て』が注目を浴びました。

私ももちろん読みました。

『ここは退屈迎えに来て』の私の感想は コチラ

山内さんが生まれ育った富山がモデルになっていたため、
富山に住む私としては、本を読みながらも映像がしっかりと頭に浮かんできて
リアルな物語として響きました。

そして、新作『アズミ・ハルコは行方不明』からも、またもや富山フレイバーを感じました。
それもプンプン漂っています。

夏になると子供達がプールに訪れるあの場所も出てきます。

なんとかランドです!(笑)


前作同様、今回も地方のとある街(と言っても限りなく富山)の若者たちのお話でした。

全体的に若者たちがあきらめモードなのも前作と似ています。

自分のこの先の人生がぼんやり見えてしまっているものの、
自分で狭めた枠を広げようともせず、
どうせ…と諦めるための言い訳を自らに言い聞かせている感じ。

けだるさが本の中から漂っていました。

そして、そのけだるさの多くは男たちが発していました。

たいてい小説も映画も一人くらいは心惹かれる男性が出てくるものですが、
この作品には出てきません。

イケメンは出てきますよ。
でも、顔だけよくっても…ねえ。

なんていいつつ、もし自分が20歳くらいで
同じ状況になっていたら好きになっているかもしれないけれど。(笑)

そう思うとそんな自分にむかついてきます。

若い男性も、おじさんも、なんでしょうねえ、
イライラさせるんですよ、いちいち。

とくに30代半ば以降の妙齢の女性は読む時は要注意です。
不快なおっさんが出てきますから。

心穏やかに読んでください。

でも、最後まで読んだら、そのストレスも消えてしまうので、ご安心ください♪

もちろん、だめなのは男性だけではないのですが、
どうしても女性ヨリ、女性の味方になってしまいます・・・。

女ってめんどくさいーと思いつつ

でも、

かわいいじゃん!ってね。


では、男性がこの本を読んだらどうかというと、
かわいいとは思ってもらえないかもなあ。

それより

「女って意味わかんねー。は?かわいいってどこで感じるわけ?」

となりそうな気がする。


わがままで、
感情的で、
しつこくて、
うるさくて、
めんどくさいかもしれないけれど、
女性は、なんだかんだでかわいいのですよ。

ね、女性の皆さん?

あ、この開き直りが男性をイラつかせるのか!(笑)

yukikotajima 11:30 am

ラッシュ プライドと友情

2014年1月2日

ラジオをお聴きの方はご存知だと思いますが、私はF1が好きです。

好きなドライバーは「私のキミ様(笑)ことキミ・ライコネン」。

アイスマンと言われるクールなまなざし。
だけど走りは熱くうまく本当にかっこいい!


でも。

この方が頭から離れなくなってしまいました。

ジェームス・ハント。

そして。

もう一人、ニキ・ラウダ。


二人ともです。(笑)


というのも、2月7日に
ジェームス・ハントとニキ・ラウダ、
二人の天才ドライバーの対決を描いた

映画『ラッシュ プライドと友情』

が公開されるのですが、
私は一足早くその映画を見て、すっかりはまってしまったというわけです。


そういえば、キミ様もジェームス・ハントのファンで、
トリビュートヘルメットを作り、以前話題になりました。


私、今年ナンバーワン映画がもう決まりました。

この作品です!

と断言できてしまうくらいに感動しました。


映画を見ながら映画館にいるのかサーキットにいるのか、時々わからなくなりました。

目の前をマシンが走り抜けていく様は生そのもの!

体に響くエンジンサウンド、
タイヤやオイルのにおい、
そして、前髪が浮き上がるほどの風。

「いやいや、においや風は無理でしょ!」と思いましたよね?

ええ、実際には無理です。

でも、私には感じられたのです!

去年の夏、スーパーGTを生で見たときの感動を思い出しました。

実話を描く『ラッシュ』は、ドキュメンタリーのようでもありました。

こんなに興奮したレースはないというくらいに興奮しました。


さて。

いきなりあつくるしい感想で始まってしまいましたが、
内容についても軽くご紹介しましょう。

映画『ラッシュ プライドと友情』は、
ロン・ハワード監督が、1976年のF1世界選手権を舞台に、
2人の天才ドライバー、ニキ・ラウダとジェームズ・ハントの戦いと絆を描いたものです。
実話です。

実話の映画化は、何かと不満を口にされる方もいるようですが、
この作品の満足度はかなり高く、なんと93%なんだとか。

なんといっても俳優さんたちがご本人によく似ているんです。

ラウダもハントもそっくり!

ハントなんて本人かと思ってしまうくらい。

クリス・ヘムズワース演じるハントの女性を虜にするあの色気と筋肉。

女性に対しては超だらしないのに、
でも、こっそりレースのイメージトレーニングをしている姿には・・・惚れます(笑)。
記者会見後のシーンも泣けたなあ。

でも、ダニエル・ブリュール演じるラウダはラウダで素敵です。
ハントとはまた別のかっこよさがあります。
彼こそ、本当の意味で強く、それでいて優しい人です。

そんなハントを支える奥様がまたいい人で。
ううう。涙。


この映画には日本も登場します。
なぜならラウダとハントの最終決戦の地が、富士スピードウェイだから。

果たして勝負の行方は?


「面白そうだけど、F1はわからないし…」という方もいらっしゃると思います。
特に女性の方。

でも楽しめると思います。

なんといってもレーサーたちがかっこいいですし(笑)。
もちろん、それだけじゃない魅力が詰まっています。
きっと見てよかったと思うはず!

この映画をきっかけに、F1に興味を持つ人が増えたらいいな。

案外、女性がはまりそうな予感がするわ。

今年はF1ブームがくるかも!?


心ふるわすヒューマンドラマ、

『ラッシュ プライドと友情』

は2月7日の公開です。


公式サイトは コチラ


私は、映画が公開されたらまた見に行こうと思います。

久しぶりにまた見たい!と思えた作品と出合えました。

去年はなかなか映画を見に行けなかったのだけど、
今年はもっと見に行こう。

やはり、映画っていいね!

・・・

最後に。

元F1ドライバーのミハエル・シューマッハさんの回復を心から祈ります。

yukikotajima 10:56 am

鴨川食堂

2014年1月1日

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!

元日の今日もgraceはいつも通り13時30分からお届けします。

さらに今日は豪華プレゼントもあります!

でもプレゼント情報はネット上には一切アップしません。
ラジオでしか言いませんので、どうぞお聴き逃しなく♪

・・・

さて。

年末年始、いかがお過ごしですか?

久しぶりに実家の味、母の味を口にして
「そうそう、この味!ああ、懐かしいなあ」
と思わず笑みがこぼれてしまった方もいらっしゃるのでは?

その一方で、食べたくても、もうかなわない…という方もいらっしゃるかもしれません。

たとえば、天国のおばあちゃんの作ったあの煮物をもう一度食べたいなあとか、
昔大切な人と行ったお店の料理が食べたいけれど、すでにお店をたたんでしまっているとか。

そんな時、もし同じ味を再現してくれる方がいたら、素敵だと思いませんか?

実は、そんな食堂が京都にあるんです。

東本願寺の近くに「鴨川食堂」という看板の無い食堂が。



でも、ごめんなさい。
あるのは小説の中だけなのですが。

今日ご紹介するのは、
小学館から1か月ほど前に出たばかりの
柏井壽(かしわい・ひさし)さんの小説

『鴨川食堂』

です。

食堂を切り盛りするのは、鴨川流(ながれ)と娘のこいしの親子二人。

なんとこの食堂では、もう一度食したい食べ物の味を
少ない手がかりから再現してくれるのです。

ただし、この店に辿り着くまでが大変です。
お店には看板がないのです。

でも、鴨川親子の言うことには、ご縁があれば辿り着けるのだそう。

そんな鴨川食堂では、初めての方にはおまかせを食べてもらっています。

京のおばんざいなのですが、それがどれも本当に美味しそうで、
本を読みながら、お腹がグーグーなり続けました。

そして、この食堂の奥には探偵事務所があります。
食事後、その事務所に移動し、さがしている食についての話を聞きます。
話を聞くのは娘のこいしですが、実際その料理をさがし、作るのは父の流です。

曖昧な思い出やキーワードから、食をみつけていくのですが、
流がいかにしてその料理をみつけたのかを披露しながら、最後に料理を出します。

その思い出の味と出合えたときのお客さんたちの表情がいいんです。

と言っても本ですから実際には見えてはいませんが、でも見えるのです。

どのエピソードも感動的で、私はずっと泣いておりました。

お腹をグーグー鳴らし、
ワーワー泣いて、
鼻をチーンとかんでと、
とにかく静かに読めない本でした。(笑)

でも、あたたかくいい本でした。

読み終えたときの優しさに包まれた充足感に浸りながら、
しばらく涙がひくのを待ち、もう一度最初から読みたくなりました。

じっくり1話ずつ読みたくなる作品です。
是非お読みになるときは、ゆっくりお読みください。

といってもいい本なので、ページをめくるスピードもはやくなってしまうのですが。

私は年の初めの1冊がこの本でよかったです。

今年は、丁寧に料理をしたり、
食事を味わったりしていこうと思えました。

とっても素敵な物語です。
あなたも年の初めの1冊にいかがでしょう?

この本を読んだ後、お母さんのご飯を食べたら、
きっと今まで以上に美味しく感じられると思いますよ。
感謝の気持ちが隠し味になって。

「鴨川食堂」、シリーズ化してくれないかしら。
柏井さん、よろしくお願いします!

・・・

今年も素敵な本をブログ&ラジオでたくさん紹介していきますので、
よろしくお願いします。

yukikotajima 11:37 am