桜庭一樹短編集
2013年6月26日
突然ですが、お酒を飲んで酔っ払ってしまった時、
あなたはをどんなことを考えていますか?
酔った時なんて覚えてないよー!
という方もいらっしゃるかもしれませんね。(笑)
私の場合は、酔い過ぎた時は寝ます。
でも、気持ちよく酔っ払っている時は、
テンション高く、アハハと笑ったり、声が大きくなったりしながらも、
実は頭の中はとても冷静だったりします。
私酔ってるな、とはっきりわかりつつも、楽しい。
そして、そんな時、自分の本心に気づくことがあります。
普段はあえて考えないようにしていることがふと頭の中に浮かんできて、
と同時に素直な感情も湧いてきます。
そして、そんな正直な自分の気持ちに笑えてきます。
笑えてくるのは、酔っているからなのですが、
でも、楽しくなってくる。
でも、そんな無邪気な自分をもう一人の冷静な自分が見つめています。
その、私酔ってるなと思えるくらいの時が楽しい。
と言いつつ、周りから見たら、ただの酔っ払いに見えているかもしれませんが。(笑)
さて。
まるで酔った時の自分を見ているかのようで、うっっ、みっともない。
ていうか、笑えない…。
と思った本を読みました。
30歳を過ぎた独身女性が酔いつぶれた話です。
酔って家の前で寝かけた時に、隣人のおじさんに起こされるところから物語はスタート。
さすがに私は、家の前で寝たことはありませんよ!
まあ、家に入ってソファーに横になった瞬間、そのまま寝てしまったことはありますが。(笑)
・・・
さて、今日のユキコレ(『grace』内コーナー13:45頃〜オンエアー)
でご紹介するのは、桜庭一樹さん初の短編集、その名も
『桜庭一樹短編集(文藝春秋)』
です。
全部で6つのお話が収録されています。
さきほどの酔いつぶれた30代女性と隣人のおじさんのお話もあれば、
高校生が主人公のお話、
奥さんと愛人が自分の目の前でけんかをする話、
少年のひと夏の冒険話などもあります。
・・・
まずは、妻と愛人の争いをそばで眺める男のお話からスタート。
男の目にうつる景色の描写から始まるのですが、
その表現が美しく、そしておかしく、
早速、この本に出会えたことに喜びを感じました。
1話目は、まるで舞台上で繰り広げられる劇を生で見ているような臨場感を感じました。
ああ、女っておそろしい。
・・・
そのほかにも、小学生の男の子が、母に連れられやってきた田舎で、
夏の日の一日、地元の子供と山に冒険に行ったお話も。
このお話は、まるで自分まで子供に戻って、山の中を走り回っているような感覚になりました。
走った後の息苦しさや雨の冷たさが伝わってくるようでした。
・・・
どれも短編なのだけれど、どの世界にもすうっと入っていけました。
でも共感とは違います。
だって、ここで描かれる世界は、ありきたりでは無いですもの。
この短編集は、私の知らない世界が描かれています。
でも、置いていかれることはありません。
すっと入っていける。
桜庭さんの表現がそうさせるのです。
色が見え、音が聞こえ、温度を感じ、においがする。
感性が刺激されました。
それぞれの作品がまったく異なる世界観で、
じっくり一話ずつ味わっていきくなりました。
あなたも、梅雨時期の夜、毎晩一話ずつ物語の世界をのぞいてみては?
あなたの心に一番残るのは、どの物語かしら。