桜ほうさら
2013年4月10日
昨日、本屋大賞が発表されました。
大賞には、番組でも紹介した
百田尚樹さんの『海賊とよばれた男』が選ばれました。
おめでとうございます!
◎私の過去の感想は、コチラ
まだ未読の方は、是非読んでみてね。
とてもいい本ですから!!
・・・
さて、今日ご紹介する本もいい本です。
タイプは違いますが、是非読んでいただきたい1冊です。
しかも読むなら今、できれば桜の花が咲いている間に。
なぜなら、桜に関連した本だからです。
タイトルは『桜ほうさら(PHP)』。
先月3月に出たばかりの宮部みゆきさんの新作です。
桜色の表紙には桜の絵が描かれています。
また、小舟には和服姿の男女も。
男性は、まげを結っています。
そう、このお話は現代のお話ではありません。
舞台は、江戸深川。
主人公は、写本で生計を立てている笙之介(しょうのすけ)という浪人です。
彼は、御家騒動に巻き込まれ、あらぬ疑いをかけられ切腹した父の汚名をそそぐべく、
深川の長屋に住み、事件の真相究明にあたります。
そんな笙之介の周りではミステリアスな事件が次々に起きます。
『桜ほうさら』は、そういったミステリとしての面白さはもちろん、
笙之介の暮らす長屋の人たちとの掛け合いや
宮部さんには珍しい「恋愛」も描かれており、
色々楽しめる1冊となっています。
特に、まったく恋愛などしたことのない笙之介の初々しい初恋がよかったです。
読みながら(とういか気分的には彼の恋をのぞきながら)
思わずニヤニヤしてしまいました。
だって、笙之介ったら、
桜の木の下にいる女性を見るなり恋に落ち、
「桜の精」だと思ってしまったのですよ。(笑)
かわいくないですか?
自分が見た女性が人間だとは思えなかった、ってすごいですよね?
そんなまっすぐな笙之介は、
恋愛以外の面においても大変真面目です。
でも、完璧ではないのが彼のいいところ。
おっちょこちょいなところもあり、憎めません。
なんて書くと、江戸の長屋ののんびり物語?
と思われそうですが、終始穏やかというわけではありません。
なぜなら、笙之介は切腹したお父様の汚名をそそぐべく江戸に出てきたわけですから。
それに次々にミステリアスな事件も起きていきますしね。
また、悲しい裏切りも…。
でも、決して殺伐とせず穏やかに感じられるのは、
江戸の長屋が舞台だからかもしれません。
長屋の人々の陽気さ、人のよさ、温かさ…。
笙之介は、生まれ育った土地を離れ、江戸で一人で暮らします。
でも、長屋で暮らすことで、
仲間ができ、江戸での暮らしに馴染んでいきます。
実は家族との関係はあまり良好とはいえない笙之介ですが、
江戸では人に恵まれます。
血ではなく、心のつながりですね。
血がつながっているからと言って、
全てがわかりあえるわけではありません。
でも、わかりあいたいとは願うものですが…。
そのあたりの細かいことは是非本を読んでみてね。
***
『桜ほうさら』は、江戸時代のお話で、独特な言葉つかいなどもあり、
一見読みにくそう?なんて思いましたが、勘違いでした。
声に出して読んでみるとよりわかるのですが、
言葉のリズムがとても気持ちいいのです。
そして表現が美しい。
それは『桜ほうさら』というタイトルからもお分かり頂けると思います。
美しくないですか?
「桜ほうさら」がどんな意味なのかは、本を読んで確かめてみてください。
それから、言葉の美しさだけでなく、
座右の銘にしたいような表現が多いのも印象的です。
気になる方は、PHPの特設サイトを覗いてみてください。
⇒ http://www.php.co.jp/sakurahousara/
どうです?
これらの言葉、単体で見ても素敵ですが、
小説の流れの中で出合うとより心に響きます。
その他、登場人物の相関図も載っているので、
本を読む際に参考になさってみてください。
どうです?
読みたくなってきましたか?(笑)
ちなみに、この本は、605ページあります。
本屋さんで本を手に持った時、一瞬ひるむかもしれません。(笑)
でも、読み終えた後は、もう終わっちゃうの?と思えます。
私は終わりが近づくにつれ寂しくて仕方ありませんでした。
また、ゆるやかにつながる連作集になっていますので、
一話ずつじっくり時間をかけて読んでもいいと思います。
最後にもう一度。
この本は、桜の季節に読んでいただきたいので、
ちょっとでも読んでみたいと思われたなら、
今すぐ読んでみてください。
『桜ほうさら』、また1冊。素敵な本に出合えました。
あ、今いいことを思いついた!
桜の木の下で『桜ほうさら』を読むのもいいかも。