噂の女
2013年1月23日
今日のユキコレ(13:45頃〜オンエアー)でご紹介する本は、
私の大好きな作家さん、奥田英朗さんの新作
です。
奥田英朗さんというと、
『空中ブランコ』や『イン・ザ・プール』といった精神科医、伊良部シリーズや
映画化や漫画化もされた『ガール』でおなじみの作家さんです。
奥田さんの作品にはダメな人がよく出てきます。
そのダメな人に対して、何やってんだこの人!と思いながらも
共感したり、応援したりしたくなってしまう。
つまり、憎めないのです。
どんなダメな人にもいい部分もある。
そこに、人間味を感じられます。
人をニュートラルに見ている。
いい部分だけでも、ダメな部分だけでもない。
ちゃんとその人を見ている。
そこを描いているから、読んでいてとても気持ちいいのだと思います。
本を読んでいるというより、まるで人と話をしているようです。
***
今作もそんな「人」が感じられる作品でした。
新作の『噂の女』は、タイトルに「うわさ」とあるとおり、
様々な人たちの噂話、おしゃべりが軸になっています。
噂をされているのは、謎の女、美幸。
彼女は、高校まではそれほど目立つ存在ではなかったものの、
短大に進んでから印象ががらりと変わります。
大人になってからの彼女の印象は、
美人というわけではないものの、
どこか色気があり、男たちを惹きつけるイイ女。
この、美人過ぎないところがいいんでしょうね。
初めてみた人は、皆彼女のことが気になってしまいます。
そして、彼女のことをさぐっていきます。
さぐる中で、様々な噂を耳にします。
社長の愛人らしい。
弟がかなりのワルらしい。
付きあった男性が次々に亡くなっているらしい。
といった黒い噂を…。
彼女の目線ではなく、
彼女に関わる人たちの噂話で物語は進んでいきます。
事実と噂が交錯しながら、
まるで自らも噂話を聞いたり話したりするうちのひとりのような感覚になっていきます。
そのおしゃべりが、すべて方言なのもとてもリアル。
これが共通語だったら、もっとクールな作品になっているのでしょうが、
奥田さんの生まれた岐阜の方言がふんだんにつかわれていることで、
より人間味が増しています。
小さな地方都市に暮らす、普通の人々のお話に、
あなたも聞き耳を立ててみませんか?