64
2012年11月14日
今日のユキコレで紹介するのは、
横山秀夫さんの新作『64(ロクヨン)』です。
映画化された『半落ち』や『クライマーズ・ハイ』
は読んだことがある、という方も多いのでは?
『64』は10月26日に文藝春秋から出たばかりの7年ぶりの新刊。
全648ページの長編ミステリーです。
横山さんファンの皆さんにはもうおなじみかもしれませんが、
今回は、人気のD県警シリーズの新作です。
私は、過去のシリーズは未読なのですが、
『64』を読んだら、他の作品も読みたくなりました。
さて。
タイトルの「64(ロクヨン)」とは、
たった7日間しかなかった昭和64年に起きた未解決の少女誘拐事件のことです。
その事件から14年後。
D県警の広報が、記者クラブに対し、
ある事故の加害者の名前を伏せたことで、
記者クラブと対立してしまいます。
そんな中、警察庁長官による、時効の迫った「64」の視察が1週間後に決定します。
刑事出身の広報官、三上は、それらの対応に追われる羽目に。
また、元いた刑事部と今いる警務部、
それぞれからまったく逆の指示をされてしまいます。
この刑事部と警務部はもともと関係があまりよくなかったのですが、
「64」をめぐり、ますます悪化していきます。
警察内部の対立に加えて記者との対立。
様々な対立の中で、三上はどんな選択をし行動を取るのか?
そんな中、三上は64のある謎のキーワードに辿り着きます。
14年前の『64』において、
当時の関係者たちが隠していることとは一体何なのか?
さらに、仕事以外のところにも悩みが。
なんと三上のひとり娘が家出をしてしまうのです。
三上は全ての問題を解決することができるのか?
700ページ近い本の重みそのものが、内容の重みと重なりました。
なんといっても、登場人物たちの会話が非常に不快です。(笑)
あ、いや笑えないな。
何でこんな言い方しかできないのよ?(怒)と、
不機嫌な態度を通りこし、
カッとなってしまいそうなほどの嫌みな会話を読む度、
わざわざ嫌だなと思う世界をのぞいてしまう私は、
一体何をやっているんだ、と思うのだけれど、
本を閉じることができませんでした。
主人公の三上が何を思い、どのような選択をするのかも気になるし、
何より真実が気になって仕方なかったから。
そして、終盤、どどどっと物語が動きます。猛スピードで。
全てを読み終えた後、もう一度表紙を一枚、二枚めくってみてくだい。
最初は目にもとめずめくってしまったその写真が、
きっとこの物語の余韻を感じさせてくれるはずです。
・・・
そういえば、この本を読みながら印象に残った言葉があります。
「たまたまが一生になることもある」
という一節です。
たしかに、そういうことってあるように思うんですよね。
今後の人生でも、ふとした瞬間に思い出してしまいそうです。
「たまたま」紀伊國屋書店富山店で書店員の橋本さんから
オススメいただいた小説『64』。
でも、そのおかげで様々な感情が動き、
またひとつ知らない世界を知ることができました。
そして「たまたまが一生になることもある」という言葉に出会えました。
それこそ、あなたも、たまたま「ゆきれぽ」を読んだら、
『64』が紹介されていただけ、と思うかもしれません。
でも、それがあなたの何かを変えることもあるかもしれない。
もし少しでも読んでみたいなと思ったなら、『64』を読んでみてくださいな。