10『カラスの親指』
2011年2月14日
先日発表された直木賞には、道尾秀介さんの『月と蟹』が選ばれました。
この『月と蟹』については、既に「ユキコレ」のコーナーで、番組でもご紹介しました。
「キノコレ」でおなじみの紀伊国屋書店富山店の朝加さんから、
「道尾さんの作品なら、是非、これも読んでみてください!」
とすすめられたのが、2008年に発表された小説『カラスの親指』です。
主人公は、40代の詐欺師の2人。
タケさんとテツさんです。
2人が銀行で詐欺をはたらくところから物語がスタート。
緊迫感のある詐欺の様子から一変、
「仕事」のあとの、2人の人情味あふれる会話から、
2人が、普通の人間であることがわかります。
決して明るくない過去を抱えた2人は、詐欺をしながら共に暮らしています。
そんなある日、一人の少女も一緒に暮らすことに。
さらに、その後、同居人はどんどん増え、
まるで家族のようなにぎやかな共同生活が始まります。
しかし、そんな穏やかな生活も長くは続きません。
なんとタケさんと過去のつながりのある人物から家に火を放たれてしまうのです。
そのことがきっかけで、タケさんをはじめ、一緒に暮らす彼らは、
それぞれが自らの過去と決別すべく、ある大きな計画を実行することに…。
と、ここまでのストーリーでも、十分面白いのですが、
その先が、その何倍、いや、何十倍も面白いのです。
でも、言えない…。
というか、私が何を感じたのか、ということも言いたくない。(笑)
ここから先は、本を読んだ皆さんに、無の状態で楽しんでいただきたいから。
でも、これだと、全く何のことやらわからないと思うので、
中身がわからない程度に感想を書きますね。
その先は、心がずっとドクンドクンと鳴っていました。
さらっと流して読んでしまったあの部分に、そんな意味があっただなんて〜!
と、ページをめくる度に様々な伏線に気づかされ、
悔しいと感じつつも、それ以上に、気持ちよさを感じている自分がいました。
私は、やや素直すぎるところがあって、
人の意見や作品をまっすぐ受け止めてしまうことが多いのですが、
本を読む上では、その性格は悪くないのかも。(笑)
その分、だまされる度合いが高くなって、より、作品を楽しめますからね!
この本の一番の詐欺師は、そう、道尾秀介さんです。
実際、人からだまされるのは嫌ですが、
読書でだまされるのは、気持ちいいものですね。
だって、最後にちゃんとすっきりできるから。(笑)
なんだかもんもんとした日々を送っている方、是非、この本を読んでみてください。