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71『鎮火報』

2010年12月13日

今日も寒いですね。
毎日、ヒーターやこたつにお世話になりっぱなし、という方も多いのでは?

そういう私も、家に帰ったら真っ先に暖房のスイッチを入れてしまいます。

暖房器具を使う機会が多いからこそ、
冬は、火事に気をつけなければいけませんよね。

「火の用心」の注意喚起も含め、
今日は、日明恩(たちもりめぐみ)さんの長編小説『鎮火報(ちんかほう)』をご紹介します。
chinkaho.jpg

鎮火報とは、消防車が消火活動の後、帰るときに鳴らす音のことで、
この作品は、消防士が主人公の小説です。
紀伊國屋書店富山店の朝加さんから、是非、読んでみて、とすすめていたたいた本です。

主人公は、二十歳の新米消防士、大山雄大(たけひろ)。
身長190センチ、骨格はガッチリの元不良少年です。

父親も消防士だった、と書くと、
お父さんにあこがれて、更生して消防士になったのね、
と思ってしまいそうですが、そうではなりません。

実は、父親は、雄大が子供の頃、殉職してしまい、
雄大は、そのことをあまりよく思っていなかったのです。
そして、父と同じ消防士の男性に向かって
「消防士になんて誰だってなれる」と言ってしまい、
逆に「じゃあ、なってみろよ」と言われ、
カッとなった雄大は、「なってみるよ!」と返し、
本当に消防士になってしまった、というわけです。

しかし、立派すぎて亡くなってしまった父のようにはなりたくない、と思い、
いかに楽して得するか、ばかりを考えながら生きています。

仕事も、ちゃんとしないと自分の命があぶないからやっているだけで、使命感もありません。

そんな彼の成長を描いた小説、
なのですが、それだけではありません。

文庫の解説にも書かれていますが、内容「たっぷり」なのです。

ページ数が、551ページあるので、量もたっぷりですが、
質もたっぷり、読み応えがあります。

たくさん出てくる登場人物に、それぞれの物語があり、
14章にわかれた章ごとに、深く彼らを知ることができます。

色々めんどくせー、楽して生きたい!と思っている雄大ですが、
実は、義理人情に厚く、たくさんの登場人物との関わりがとてもいいのです。
そんな彼の魅力が、随所に感じられ、気づいた時には、彼のファンになっていました。

しかも、文章も、雄大の話言葉そのままの表現なので、とても読みやすかったです。

また、消防士の仕事についても、色々細かく書かれていて、勉強になりました。

特に火事に気をつけなければいけない、今の季節にこそ、
若き消防士の物語をじっくり読んでみては?

本を読んだ後は、消防士を見る目がきっと変わるはず!
私は、今まで以上に尊敬の気持ちが大きくなりました。

yukikotajima 11:33 am