43・44 芥川賞&直木賞受賞作!
2010年8月2日
今日の「キノコレ(『grace』内コーナー13:45〜)」では、
紀伊國屋書店富山店 朝加さんから、
先日発表された、直木賞・芥川賞の受賞作品をご紹介頂きます。
詳しくは、こちらをご覧ください↓
http://www.fmtoyama.co.jp/program/program_info_1029.html
朝加さんがかなり丁寧に紹介されていますので、
私からは、感想を軽くご紹介します。
◎芥川賞受賞作!
「乙女の密告」赤染晶子(あかぞめ あきこ) (新潮6月号)
京都の大学で、『アンネの日記』を教材にドイツ語を学ぶ女学生たちは、
スピーチコンテストに向け、暗記に励む日々。
そんなある日、教授と女学生の間に黒い噂が流れ・・・
というお話です。
読んでいて感じるのは、1センテンスがとても短いということ。
まるで、舞台を見ているような、もしくは、朗読劇を聴いているような、
静寂の中のテンポの良さを感じました。
だから、物語が小気味よく、ポン、ポン、ポンと進んでいき、
最後に、気持ちよくパン!と音を立ててカットアウトでキレイに終わる感じで、
まるで舞台を見ている感覚の私は、拍手をしたくなりました。
それくらいの緊迫感、スピード感、テンポの良さがあります。
実際、小説も短いので、あっという間に読める、というのもあるのですが。
きっと近いうち、
この本を朗読、もしくは劇で使われる方たちが登場するんじゃないかな、なんて、思いました。
実際、私も朗読してみたい。(笑)
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◎直木賞受賞作!
「小さいおうち」中島京子 (なかじま きょうこ) (文藝春秋)
こちらは、戦争が始まる前、昭和の最初の頃、東京の赤い三角屋根のおうちで、
女中として過ごした日々をつづる、タキ(おばあさん)さんのお話です。
10代〜20代の間、過ごした平井家での日々が、丁寧に描かれていきます。
タキさんは、女中としてのお仕事も、平井家の皆さんのことも大好きで、
その「愛情」が、全編にわたって感じられます。
また、女中ということで、料理をはじめとした家事が大得意なのです。
タキの作る料理はどれも美味しそうで、
それを食べる平井家の人々も幸せそうで、
読んでいる私までもが、穏やかな気持ちになっていきます。
とにかくあたたかいのです。
そんなタキさんの手記を盗み読みしているのが、
彼女の甥の次男の、健史(たけし)です。
時々、一人暮らしのおばあちゃんの家に遊びに来ている、大学生です。
彼は、おばあちゃんの文章に対し、色々、口を出します。
おばあちゃんは、勝手に読んで…とあきれた態度を示しつつも、
読んでくれる人がいることが嬉しいんですね。
さらに、読まれることを意識し、自分のことを、ちょっと「よく」書いているのです。
そのあたりが、とってもかわいいおばあちゃんです。
基本的には、のほほんとした雰囲気のお話なのですが、
戦時中ということで、戦争が進むにつれ、
あたたかくのんびりとした空気は影を潜めていきます…。
そして、この本の最後は、おばあちゃんの手記ではなく、
健史の手記で終わります。
それが意味することは・・・?
気になるあなたは、是非、おばあちゃんの手記を盗み読みしてみてください。